「The Greatest Show on Earth」 第4章 沈黙とゆっくりした時間 

The Greatest Show on Earth: The Evidence for Evolution

The Greatest Show on Earth: The Evidence for Evolution


創造論者のコアの人たちは,聖書の記述から地球の年代は1万年以内だと主張する.(1000年単位で物事を考えて,キリスト生誕の4千年期前に世界が始まった(つまり世界の年齢はおおむね6000年)というのが多い解釈のようだ)
本章では地球がそれより古いというのはどのようにしてわかるかが書かれている.


まず年輪.これは縞々のパターンをつなぎ合わせていけばかなりさかのぼれる.現在の最古の年輪年代は11500年前だそうだ.これだけでも創造論者のフレームよりは長くなる.縞々には氷河期の湖底堆積物による縞「バーブ」,サンゴの縞などによる時計もあるそうだ.


次に放射性年代測定の話が丁寧に説明されている.放射性同位体とは何であるかから始まって時計のリセット(火成岩の形成,炭素の大気成分の一定性)まで解説されている.


ここで地層の話が出てくるが,創造論者の地層解釈についてほとんど喜劇だといいつつ紹介している.
あるウェブサイトによると,地層はノアの方舟に出てくる洪水から逃れた順序によるもので,賢いものほど上に逃れたのだということらしい.ドーキンスはこの説明では統計的に上下で何が見つかりやすいかしか説明できず,ある地層を境にしてまったく見つからないものがあることは説明できないだろうとジャブを放っている.


放射性年代については炭素を始め様々な方法(ルビジウム87(崩壊後ストロンチウム半減期490億年)レニウム187(オスミウム,416億年)トリウム232(鉛,140億年)ウラニウム238(鉛,45億年)カリウム40(アルゴン,12.6億年)ウラニウム235(鉛,7.04億年)サマリウム147(ネオジム,1.08億年)ヨー素129(キセノン,17百万年)アルミニウム26(マグネシウム,74万年)炭素14(窒素,5730年))がうまくオーバーラップしていることを強調している.そして複数の時計が同じ年代を示していることも証拠を補強すると強調している.


創造論者はこのような放射性年代測定には,物理法則が一定ではなかった可能性があると言い張ってがんばるそうだ.
ドーキンスは物理法則が変化している証拠は何もないが,仮に変化しているにしても,複数の時計が複数の年代で一致しているということは,それぞれの元素のそれぞれの半減期がちょうどそうなるように複雑に変更されることが必要になると冷静に指摘している.またさらに別の時計(例えばフィッショントラック年代測定(ウラニウムなどの自発核分裂による飛跡の密度から年代を測定する方法))などがあるという指摘も行っている.このあたりは創造論者との議論の歴史の長さを感じさせるものだ.


なお分子時計についてはここでは扱わずに第10章で扱うと予告がある.本章は生物学というより,地学と物理の記述なので割と淡々としている.証拠という点では強固なものだが,議論としてあまり興味深いトピックがたくさんあるわけではないからだろう.