「ダーウィン・エコノミー」

ダーウィン・エコノミー 自由、競争、公益

ダーウィン・エコノミー 自由、競争、公益

ダーウィン・エコノミー 自由、競争、公益

ダーウィン・エコノミー 自由、競争、公益


以前私が書評したロバート・フランクによる「The Darwin Economy: Liberty, Competition, and the Common Good」が,「ダーウィン・エコノミー:自由、競争、公益」として邦訳出版された.

本書はフランクによる累進的直接消費税導入の主張にかかる1冊.フランクはこのテーマで4冊書いているが,本書は3冊目にあたる.日本ではこのシリーズが全く逆の順番で訳出出版されていて,昨年3月に4冊目の「Success and Luck」が「成功する人は偶然を味方にする」として出版されたあとにこの3冊目が今回邦訳出版され,1冊目と2冊目は訳されていないという状況になっている.まあいろいろやむを得ない事情もあるのだろうが,このシリーズは大本の主張がまずあって,それへの補足,批判への反論,さらに補足というような形で出版されているので,日本の読者にとってはわかりにくい部分もあるだろう.


この3冊目の特徴は,ヒトは贅沢品などの地位財については競争相手との相対的な価値を問題にするので,伝統的な経済学のフレームの例外となり,いわば外部経済性を生みだすために政府による(累進的直接消費税による)介入が正当化されるという経済学的な議論を丁寧に行っていること,そしてリバタリアンからの累進的直接消費税に対するめちゃくちゃな批判に対して徹底的に反論しているところになる.


ヒトがライバルと競争しており,それはディスプレイ戦略に現れ,それがまさに地位財消費であるという部分以外にはあまりダーウィンや進化理論は出てこないが,アメリカの政治状況の独特さがよくわかり,相対的価値が問題になると経済学的に何が生じるかの理論的な議論が楽しい一冊ということになるだろう.


私の原書書評はhttp://d.hatena.ne.jp/shorebird/20121111

The Darwin Economy: Liberty, Competition, and the Common Good

The Darwin Economy: Liberty, Competition, and the Common Good



関連書籍

フランクの累進消費財4部作

1冊目

Luxury Fever: Why Money Fails to Satisfy In An Era of Excess (English Edition)

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2冊目.私の書評はhttp://d.hatena.ne.jp/shorebird/20060325


3冊目再掲.本訳書の原書になる.

The Darwin Economy: Liberty, Competition, and the Common Good

The Darwin Economy: Liberty, Competition, and the Common Good


4冊目 私の書評はhttp://d.hatena.ne.jp/shorebird/20161107

Success and Luck: Good Fortune and the Myth of Meritocracy

Success and Luck: Good Fortune and the Myth of Meritocracy


同訳書.私の訳書情報はhttp://d.hatena.ne.jp/shorebird/20170511

成功する人は偶然を味方にする--運と成功の経済学

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このほか最近訳されたフランクの本.見逃していたが,昨年10月に訳出出版されているようだ.

幸せとお金の経済学

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同原書

Falling Behind: How Rising Inequality Harms the Middle Class (Wildavsky Forum Series)

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