読書中 「Narrow Roads of Geneland Vol.3」第4章 第5論文

Narrow Roads of Gene Land: The Collected Papers of W.D. Hamilton: Last Words (Narrow Roads of Geneland: The Collected Papers of W.D. Hamil)

Narrow Roads of Gene Land: The Collected Papers of W.D. Hamilton: Last Words (Narrow Roads of Geneland: The Collected Papers of W.D. Hamil)


第5論文は短いもの(もしかしたら論文とはいえないのかも)
Covert Sex



生物学のスキャンダルと呼ばれた無性のワムシ(rotifer)について
このほかにもグループがほとんど無性のものが多いことを説明.ササラダニ(これは有性のステージも見られるとのこと),アリに飼育されたアリマキ
そして無性が非常に多いのは原生生物.この中のアメーバで研究室では無性と思われるものについて調べたところ,野外では遺伝子組み換えを行っていると思われるものが発見された.(対立遺伝子比率がハーディワインベルク比になってるなど).トリパノソーマでも同じことが発見された.
ここからは推測
一般に無性のものがあるのは有性のコア種がしっかりと確立されているところに(細胞質オルガネルの遺伝子による核遺伝子の性の決定への歪曲などの影響で)無性種が派生する.これらはどんどん絶滅するが,一定比率で派生すれば定常状態では何種か生存することになると解釈すべきではないのだろうか.
このことからワムシも森のどこか奥の苔の上で有性のコア種が発見されるのではと締めくくっている.



第5章 第6論文
Recurrent Viruses and Theories of sex
これも短いもの

インフルエンザウイルスの性について
ハミルトン自身これまでパラサイト側は無性でも突然変異が十分速ければホストの防壁を破るのに十分と考えてきたが,よく考えるとウィルスなどのパラサイト側も組み替えが有利なはずだという論考
インフルエンザではNとHの方がそれぞれ何種類か再帰的に現れて周期は60年程度になっている.これは元々のホストの水鳥の20世代程度に当たりモデルによくフィットする.人では同じ細胞にヘテロ的な感染が起こっている可能性はきわめて低いが鳥では結構あるだろうという考え.



第6章 Further Homage to Santa Rosalia
ネジリバエについてのエッセー  次の論文の共著者のJeyaraney Kathirithambyによるもの
ネジリバエについての生態が詳しく描かれ論文執筆当時の問題意識が語られる.
しかしこの寄生バエについては全く知らなかったので大変面白かった.
何しろ雄と雌とで形態も寄生先も異なり,かつ雄は見つかっているが雌が見つかっていない種が大半というのだから面白い.