読書中 「Genes in Conflict」 第2章 その1

Genes in Conflict: The Biology of Selfish Genetic Elements

Genes in Conflict: The Biology of Selfish Genetic Elements

第2章 Autosomal Killers その1


常染色体の殺戮者

これまでいろいろと歪比利己的遺伝要素が発見されている
通常対抗適応により歪非遺伝要素は表現型として目立つ外的な効果を持たないものが多い.このためこの検出は簡単ではなく,よく遺伝的に調べられた生物で見つかっている例が多い.
自分と同じ遺伝要素を持たない精子を殺すマウスのtハプロタイプのほか,ショジョウバエの分離歪曲要素,菌類で胞子を殺すもの,植物では種子排除や花粉殺しが知られている.


マウスのtハプロタイプについて

これは第17染色体上にあるハプロタイプ(一方の親に由来する1つの染色体で,相互に比較的に近隣に存在する遺伝子やSNPsなどの組合わせ)で染色体上の1/3を占める領域がtとなる.野生型を+とすると,t/tは致死であり,+/tのオスが作る精子の90%はtとなる.
元々1920年代に+/+に比べて+/tが短尾となることから発見された.+上にホモで致死となるT遺伝子を定着させれば,+/+もt/tも致死となることからT/t同士を交配させてtを実験室で安定させることができる.これで実験が進んだ.
構造を見ると4つの部位で逆位があり組み替えがほとんど不可能になっている.この逆位部位のうち3つにドライブを起こす要素が乗り,またこの悪影響を受けない不感レスポンダーが近くにある.
このように強い連鎖が起こってほとんど無性的に複製されるため,tには劣化効果があると思われる.またこの領域が大きいほどいろいろな突然変異が蓄積されやすくなると思われる.
DNAの分析からはこのtハプロタイプの逆位のうち古いものは3百万年前,新しいもので1.5百万年前と思われる.



利己的な遺伝要素について初めて詳しい説明を読むような気がする.外部的な表現型がなければ確かに見つけにくいというのはわかる.またこのように大きな領域のハプロタイプというのも興味深い.英語の遺伝学用語につまづきながらなので読むスピードはゆっくりだが十分楽しい.