読書中 「Genes in Conflict」 第8章 その5

Genes in Conflict: The Biology of Selfish Genetic Elements

Genes in Conflict: The Biology of Selfish Genetic Elements



今日はフィーメイルドライブが核型に与える影響について.きわめてテクニカルな話がつづくのだが,本書では珍しく図で説明したものがない.このため非常にわかりにくく,一部理解しがたい.解釈には自身がありません.



第8章 フィーメイルドライブ  その4


2. フィーメイルドライブと核型の進化


メスの減数分裂幾何学は,この非対称を利用した利己的な遺伝要素に搾取の道を開く.そしてこれは(少なくともトウモロコシにおいて)核形の進化に大きな影響を及ぼした.また減数分裂のメカニズムは同様に染色体の構造に影響を与える.


本節ではショウジョウバエにおける影響を見てみよう.ショウジョウバエもトウモロコシと同じくメスの減数分裂は一列になって生じ,端にあるものが卵となる.
ドライブが核型に与えた影響のもっともよい例は動原体の両側に逆位が生じた場合(paracentric inversions)に示されている.((私見)ここはわかりにくい.以下の記述からみると動原体を含む部分が大きく逆位した状況がフィットするのだが,原文では動原体は含まない両側の逆位(複数)と書かれており,そうするとなぜ交叉すると動原体が2個になったり0個になったりするのか理解が困難である)
ショジョウバエでメスがそのような逆位によりヘテロになり,逆位部分で交叉が起こると,2つの動原体があり,それぞれ別の紡錘極体に引かれる交叉した染色分体と,動原体がない染色分体が生じる.これらは中間生成物として消えてゆく.するとメカニズムから交叉しなかった染色分体が卵に入り込むことになる.このような非交叉染色分体への選好は,ショウジョウバエ遺伝学において,逆位が野生タイプと交叉しない機能を持つことの基礎になる.つまり逆位が(他の生物のように)単純に有害として淘汰されるわけではないことになる.その結果ショウジョウバエの集団は,動原体両側の逆位による交叉現象の結果,集団として分離されることになる.


それ以外にも染色体の違いがドライブを生み出す.相同染色体に長短があれば短い方がドライブされる.もし欠損部分と動原体の間で交叉が生じると長いほうがより引っ張られる速度が遅くなりドラッグするのだ.(これはAb-10と同じ仕組みだ.)これは欠損がアドバンテージを,挿入がディスアドバンテージを持つことになる.


同様に動原体をより中心に持って行く逆位がバイアスを産む.もしメスが,動原体をまたがる逆位によりヘテロになり,交叉が生じると,卵に入れば致死になる相互複製不全(reciprocal duplication-deficiency; Dp-Df)となる.((私見)ちょっと謎)
もし染色体の動原体の位置が異なっていると,第一減数分裂期においてより中心に動原体のある染色体が,より長いDp-Dfの腕を持つ染色分体に分離されやすくなり,これはドラッグする.そしてより端に動原体のある染色体がより短いDp-Dfの腕を持ってドライブする.すると(Dp-Dfを持つ卵は致死なので)残った卵においては,より中心に動原体のある染色体が有利になる.((私見)ちょっとわかりにくい,要するにDp-Dfを持たないものが残るのだが,それはより動原体が中心にあるものが多いということのようだ)クロバエのデータはこれを裏付けている.


このようなドライブが核型の進化にどの程度影響を与えたかはまだよくわかっていない.染色体が短い方が有利なら,ジャンクDNAの動原体との相対位置での分布の調査は妙味深い.また中心にある動原体が有利なら染色体の核型の進化は遅いだろう.
核型がどのように進化したかの理論は最近研究され始めたばかりだ.フィーメイルドライブとの関連があると期待してよいと考える.