読書中 「Genes in Conflict」 第9章 その8

Genes in Conflict: The Biology of Selfish Genetic Elements

Genes in Conflict: The Biology of Selfish Genetic Elements


有益なB染色体の特徴についての解説がつづく.ホストにとって有益なB染色体とはどういうものになるのだろうか.解説によると有益性はB染色体が増えるにつれて有害効果に打ち消されていくので,ドライブされるのはまずいということがわかる.
するとちょうど中立の方がよいのだろうかと思ってしまうが,著者は少しドラッグ気味の方がいいのかもしれないといっている.なかなか難しくてよくわからないが,要するに単為B染色体数あたりの有益効果と有害効果の傾きが有害効果の方が大きい場合といっているように読める.その場合は全域に渡って線形ならばホストにとってはB染色体はない方がよいことになるだろう.著者の主張はこれが可変になっていることが前提のようで,ホストがコントロールできるならドラッグの程度もB染色体数により可変になるという予測のようだ.

インブリーディングとの相互作用の項は難解だ.インブリーディングは有害B染色体を抑制するといっているがなぜだろう.単に交配相手にもB染色体がある確率が高まるからそうなるということなのだろうが,途中がよくわからない.すると有益な場合にはドラッグを抑えるらしい.

bは交叉が少なく遺伝子は少ない.交叉が少ないことが誰にとってのディスアドバンテージになるのだろうか,修復説なら遺伝子本体だが,パラサイト説ではどうなるのだろうか.

つづいてのバッタの説明は複雑だ.非常に多くのB染色体がホストの中で競争している状況が描かれていて,競争の中のB染色体の循環的な進化の様子(B染色体はまず有害効果とドライブとともに現れ,表現型効果が抑えられるとともにドライブも中立化し,そして新しいB染色体に侵入される)が非常に興味深い.


第9章 B染色体  その8


3. 中立的,あるいは有益なB染色体


(1) 有益なB染色体


d. 進化的ロジック
B染色体上の有益遺伝子は,通常染色体上の有益遺伝子やB染色体上の有害遺伝子に比べて特別な性質を持つ.

i) コピー数の変異.
ii) インブリーディングとの相互作用
iii) 連鎖

コピー数が異なるので遺伝効果の適量調整の問題が生じることが指摘され,またBが多いと有害効果が大きくなるから,ホストにとって有益遺伝子にも適正規模があるということになる.だからホストにとってもドラッグがいいのかもしれない.
インブリードは有害B染色体を抑制する.交叉がないので遺伝子も少ない.


(2) バッタの1種Eyprepocnemis ploransにおけるB染色体:継続的な中立化?

非常に複雑なシステムで循環的に中立化へ向けて進化している複数のBがあると説明されている.