読書中 「Genes in Conflict」 第12章 その2

Genes in Conflict: The Biology of Selfish Genetic Elements

Genes in Conflict: The Biology of Selfish Genetic Elements



要約の2番目は分子生物学からのもの.
利己的遺伝子にはタンパク質をコードするものが基本だが,コードしていないものもある.コードしていないものは何らかのメカニズムに好まれるという受け身的なパターンをとる.

タンパク質のコードの他に,機能的なノンコード領域(さらにcis-acting領域,trans-acting領域)がある.また染色体上に分散して存在しているものもある.分散する要素にとっては組み替えの頻度が重要になる.これが常染色体殺戮者が動原体のそばにある理由だとするが,普通の遺伝子と比べてより分散して染色体にあるということなのだろうか?それとも利己的伝要素は普通の遺伝子に比べてより組み替えを嫌うべき理由があるのだろうか?興味が持たれるところだ.
また常染色体の遺伝子との競争においては逆位を生じさせれば,すべての遺伝子にとって組み換えが不利にすることができるので,そうすることにより優位に立てると説明される.

分子的には単純なものから複雑なものに進化する傾向と複雑なものから単純化する方向とどちらに傾向が強いだろうか.著者はより複雑化するだろうとしている.ドライブ効率の上昇とホストへの負担軽減の効果があれば複雑化のコストを上回って広がるという意味らしい.サイズの上限は2倍体ゲノムの半分という理論的指摘も面白い指摘だ.
もちろん単純化したものもある.これはホストの修復システムに寄生するからだと説明している.


ゲノムのどこに乗っていることの説明についてはわかっていないことが多いようだ.関わるメカニズムに連動して有利な場所が決まるものがある.(HEGは認識サイトの中央にいなければならない.Ab10のこぶは動原体と連鎖していれば広がらない.)


分子レベルでメカニズムがわかってきたものもあるが,まだまだ不明なものも多い.またメカニズムは知れば知るほど新たな謎も深まる.また新しい利己的遺伝要素もさらに次々と見つかるだろうと予測している.

ここで今後まったく新しいものが見つかるかどうかについて,著者は見つかるだろうとしている.
さらに候補として以下のものをあげている.5年後ぐらいにどうなったか知るのがたのしみだ.

  • 任意の性比調節を利用した性染色体のドライブ
  • 自分自身のいない2倍体の兄弟殺しを行う利己的遺伝子
  • 卵胎生で,メスが異形配偶子である種(ZW型,たとえばヘビなど)における性に関連したマターナルエフェクトキラー
  • 解毒システムを持つ殺戮B染色体
  • RNAやタンパク質レベルでセルフスプライスするトランスポーザブルエレメント
  • 利己的なX染色体


第12章 サマリー その2


2. 分子遺伝学


(1) 構造とサイズ

ほとんどの利己的遺伝要素はタンパク質を1個以上コードしている.いくつかの利己的要素はまったく何もコードしていない.タンパク質をコードしているものも.二つ以上コードしていたり,機能に必要なノンコード領域を持っているものが多い.


分散しているものにとっては組替えが多すぎないことが重要になる.複雑な要素は単純な要素から進化しただろう.B染色体はまったく連鎖の問題がない.このためサイズにはあまり限界がないだろう.


(2) 位置

利己的遺伝要素によってはその位置がドライブ上重要な場合がある.


(3) メカニズム

ここ20年でどのようにして利己的な遺伝要素が広がっていくかについての知識は深まった.またここ20年間で発見された利己的遺伝要素の種類は非常に増えた.おそらくこの傾向は続くだろう.