- 作者: Richard Dawkins
- 出版社/メーカー: Houghton Mifflin Harcourt
- 発売日: 2006/10/18
- メディア: ハードカバー
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12月に取りかかった本書もついに読了だ.読み終わるとなるとなかなか名残惜しい.
さて宗教の慰めは,多くの場合魂の不滅を信じさせていることによる効果で,ほとんどの人はそれを額面通りには受け取っていないのではと前節で揶揄したドーキンスは,では科学は人生に何を与えられるかを語る.彼自身これは議論ではなく,修辞だと断っている.そして「虹の解体」で主張した科学が教えてくれる真実による啓発を語るのだ.
ドーキンスのいいたいのは,我々がここに存在し,生きているということは,DNAの宝くじのような偶然の結果であり,また長い歴史の中の一瞬であり,本当に幸運なことだ,そして二度とあり得ないような幸運は人生を貴重に感じさせてくれるということだ.最後に「神がいないとしてもそれぞれの人はそれぞれに心のギャップをみたしていく.私の場合は科学だ.誠実で組織的な真理探究の努力.人類の進化とそれに伴うボーナスとして私たちの脳があるのだ.」とまとめている.
私の人生の最大の楽しみは良質の科学書を読むことだ.真実の持つ本当の魅力は何物にも代え難い.そういう意味では私に宗教教育を施さなかった両親や,そういう社会にならなかった日本という生誕場所に感謝すべきなのだろう.
最終節は科学が人類の知識を広げてきたことを象徴的に語って終えている.ドーキンスによると今街で見られるもっとも不幸な光景は,すっぽりとブルカで覆われたイスラムの女性の姿だ.そしてその狭いスリットからしか眺められない姿を象徴として扱い,狭い電磁波長にかかる視覚の限界を科学が広げてきたこと,距離や大きさ,時間,確率に関する狭い人類の知覚領域も科学によって大きく広げられてきたことを,そして科学による人類の解放を説いて本書は終わっている.本書を読んで英米の知識人がより無神論者であることにカミングアウトしやすくなるのかどうか,私にはわからないが,そうなればよいなと願って今日は読了である.
第10章 とても必要とされたギャップ
(3)啓発
(4)すべてのブルカの母
The God Delusion 完