読書中 「Moral Minds」 第4章 その4

Moral Minds: How Nature Designed Our Universal Sense of Right and Wrong

Moral Minds: How Nature Designed Our Universal Sense of Right and Wrong



第7節は予知能力による犯罪抑止システムを描いたマイノリティレポートが枕に振られる.この説の議論は私たちが他人の意図を読もうとしているという心の理論のようだ.
このマイノリティレポートが提示する犯罪予知に基づく犯罪防止システムはどうして薄気味が悪いのか.ハウザーはそれはこのシステムは「私たちは自由意思がある.考えただけでは犯罪ではなく,それを止めることができる.」という信念に反し,倫理的な問題があるからだという.そしてこの信念は幼児や,他人に信念システムがあることを理解できない障害者にはないのだという.
確かに未来予知SFは,通常は実は未来は人の意思によって変えることができるのだみたいな結末が多いような気がする.そしてそういわれると落ち着いてしまうのはこの辺に原因があるのかもしれない.


他人の心を読もうとすることは他人に信念や欲望があるということが前提になる.そしてそれは善悪の判断をする道徳能力と深く関係しているとハウザーは続け,幼児におけるこの他人に信念や欲望があると推論する能力の発達を説明する.

幼児は1歳前に,目的やエージェンシーのような手がかりから生物と非生物を区別し始める.14ヶ月で他人ときちんと目を合わせるようになる.これは感情,知識の共有につながる.何か新しいものが現れたときにはそれと母親を交互に見て母親がどう考えているかを知ることができる.
数ヶ月後にはごっこ遊びが始まる.これはもうひとつの世界を想像することだ.そして道徳能力にはそうしなかったらどうなっていたかを想像する能力が重要だ.
注意の共有とごっこ遊びは次の段階:他人の意図を読むことに向けてのステップになる.2歳から5歳に向けてこの能力は発達する.そして信念が感情を引き起こすこと,見かけと実体が異なっていることがあること,行為は意図的だったり偶然だったりすること,欺瞞で人をだませることがわかるようになる.
4歳を過ぎることから2次より深い意図スタンス(志向姿勢)がわかるようになる.そしてある人の正しい信念と別の人の誤った信念が共存することがあることを理解できるようになる.

この中で有名なサリーとアンのテストについて3歳児は間違って答えてしまうのだが,目は正しいところを示していたり,シールを貼らせるとできるという結果が紹介されている.ハウザーはこれは何かがあるところを答えてしまうという強い習慣を抑制する能力の発達問題だとしている.そういうことなのだろうか.なんかもっと深そうな気もするしちょっと興味深い.


そして他人の意図と動機により善悪を判断するのは4-5歳ころからだ.ハウザーはこれが心の理論の発達時期と一致しているとコメントしている.この説の結論はこれだけなのだろうか.ようするに心の理論の発達の復習ということのようだ.



第4章 道徳器官


(7)意識の外側