「生き物の進化ゲーム」

生き物の進化ゲーム ―進化生態学最前線:生物の不思議を解く― 大改訂版

生き物の進化ゲーム ―進化生態学最前線:生物の不思議を解く― 大改訂版



本書は進化生態学の解説書で,1999年の「生き物の進化ゲーム」の改訂版である.「大改訂版」と名打っているように,3人の執筆者が一人交代し,全15章のうち7章が完全に新しい書き下ろし,3章が大幅な書き換えとなっている.旧版は(表紙カバーデザイン*1や書名の印象と異なり)かなり数理的に解説したところの多いちょっととんがったクールな本という印象だったが,新しく加わった章は言葉による概説や具体的なリサーチの紹介にかかる叙述が多くなっていて,やや丸くなった印象だ.


全体の構成は第1章が進化と自然淘汰のイントロダクション,第2章から第9章までが進化理論の解説.第10章以降がそれを応用した各論という形になっている.

第1章から第3章までは基本的に旧版のまま*2

まず第1章で進化と自然淘汰の概説をすませる.第2章では最適戦略になる.行動生態学の本ではここは最適採餌理論が登場するところだが,執筆者が植物生態学者の酒井なので,「開放花と閉鎖花の資源投資」という渋いトピックが登場する.ゴリゴリと微分方程式を解くのではなくできるだけ直感的にわかるようにグラフ上で解を示す工夫がある.その後最適卵数と植物の生活史戦略が扱われている.後者は動的最適化法を用いるものだが,その数学的な解法はさすがに省略されている.

第3章はESS.ESSを簡単に解説した後,タカハトゲームが取り上げられている.なおここでは旧版にはないレプリケーターダイナミクスについての差分方程式による求め方が付加されている.



第4章は加筆章.ESSの応用として「性比」が取り上げられる.まずフィッシャー性比 1:1 を説明して,応用編として局所配偶競争を取り上げる.旧版ではここから局所資源競争,トリヴァース=ウィラード仮説に基づく性比のずれを扱っていたのだが,本改訂版では省略され,代わりに2011年のナミハダニで54世代にわたって淘汰圧をかけて局所配偶競争に基づく性比のずれを実験的に進化させるというリサーチを紹介している.なかなかエレガントなリサーチで楽しいが,上の二つのトピックの省略はやや惜しまれるところだ.



第5章も加筆章.利他行動の進化を扱う,本書では昆虫における真社会性の問題がまず取り上げられ,ハチやアリの自然史的な説明があった後に半倍数性,血縁度を解説し,それから包括適応度理論とハミルトンの3/4仮説を説明するという順序になっている.

旧版ではここからこの3/4仮説に準じて不妊のワーカーの進化の道筋を考えるということでハチの母娘の家族起源,巣の共有起源を血縁淘汰的に解説し,そのほか無性生殖動物の真社会性,倍数体生物の真社会性を見るという記述になっていた.これはこれで議論の筋道としてはわかりやすい.

しかしこの改訂版では「実は3/4仮説は単純な条件下でしか成り立たず,多数回交尾の場合は説明できない」とした上で,代替仮説として包括適応度理論から説明できるポリシングの説明を行っている.

この記述ぶりには賛成できない.初学者は包括適応度理論をどう考えるべきなのか混乱するだろう.そもそもポリシングは「ワーカーがいかにも包括適応度上有利に見えるオス産卵をあまり試みない」という真社会性のごく一部の事象の説明が可能になる*3に過ぎない.そしてワーカーとオスの繁殖虫との血縁度は逆に低いという問題,多数回交尾,性比操作やポリシングの進化まで視野に入れた上で,「なぜ膜翅目昆虫で真社会性が独立に何度も進化したのか」「そしてなぜ膜翅目昆虫の真社会性の場合ワーカーはメスなのか」を説明することについてはなお3/4仮説は有力だろう.このトピックは複雑で多くの要因を議論しなければならないので学説史としてふれるのはいいが,包括適応度理論の説明として最初に説明するにはなじまないと思われる.旧版の説明が単純に過ぎるとして改訂を考えたのはいいとして,であれば,包括適応度理論を別のわかりやすい例で解説する形で全面的に書き換えるべきだっただろう.


さらに本改訂版では,ヒトの利他性の説明があり,報酬と罰を伴う「強い互恵性」が見られること,それは最後通牒ゲームで観察できること,その進化要因は本書の枠を越えるので取り上げないことが書かれている.

この記述ぶりも違和感がある.まず互恵的利他行為の理論的基礎を説明すべきではないだろうか.それなしにいきなり「強い互恵性」に飛んで,かつなぜそのような行動が進化できるのか説明せずに現象だけ提示しても初学者は混乱するだろう,またヒトの互恵的利他性を扱うなら間接互恵性もはずせないところだろう.そもそもヒトの利他行為を取り上げるのであれば,それは新設の第15章に回すべきではなかったか,この記述は中途半端でわかりにくいと評価せざるを得ないだろう.



第6章は旧版では11章だった親子コンフリクト

トリヴァースのコンフリクトの理論を簡単に説明し,例として親が子にエネルギー投資(給餌,授乳など)する際のコンフリクトをグラフを使って解説している*4.次に被子植物の場合に種皮と胚の間に同様のコンフリクトがあることを説明している.なおさらに興味深い胚乳の進化的起源の問題はここではなく第9章の性的コンフリクトの章に持ち越される.



第7章は今回書き下ろしの共進化.


まず補食のように2種間で利益が相反するような場合に共進化がアームレースを起こすことを指摘し,サメハダイモリとガーターヘビの毒と解毒能力の共進化とその結果のモザイク的状況を提示し,続いて有名なダーウィンによる距の長いランに対する口吻の長い送粉者の予言のエピソードを紹介する.

次に相利共生の例(農業をするスズメダイ,菌根菌,昆虫の共生細菌)が説明されている.ここでは菌根菌が普遍的な現象であること,なぜマツタケは簡単に栽培できないのか*5,菌側の騙しに対する植物側の検閲,さらに植物側の騙し*6カメムシ種間での共生細菌カプセルの入れ替え実験*7などが扱われていて読んでいて面白い.

最後に共進化にかかる理論的に面白い問題を扱っている.それはアームレース的共進化の力学.結末は「平衡」「サイクル」「どちらかの負け(絶滅)」の3種類があり得ることを述べ,実証例としてツバキゾウムシとヤブツバキの例が紹介される.しかしここではその3つの結末がどのような条件に依存するかについて説明がなく物足りない*8



第8章は旧版で15章にあった時間的に変動する環境への適応.

かなり丁寧に両賭け戦略が進化することを説明し,休眠種子の問題に応用している.



第9章は書き下ろし.性的コンフリクト.

理論的説明の後,メスが複数のオスと交尾することが多いことを説明する趣旨で,ヒトにおいても,同居するカップルの子供の父親が実は別の男性であったというケースが0.4〜11.8%あるというリサーチが引かれている.穏当に鳥類のデータを使ったりしないのは授業で使う際の受けを狙ったのだろうか.

次になぜそうなのかについて,複数オスとの交尾に関するメスの利益を解説する.ここではユキヒメドリの長期リサーチ*9,アンテキヌスの精子間競争のリサーチ*10,フタホシコオロギのリサーチ*11などの興味深いリサーチが数多く紹介されている.本改訂版の読みどころの一つだ.

ここからがコンフリクト.オスによる操作,メスにかかるコストの解説の後,同じ遺伝子がオスにはいったときとメスにはいったときに異なる淘汰圧がかかるという問題が取り上げられている.理論的にはさもありそうな話だが,きちんとショウジョウバエやコオロギにおける実証的なリサーチが紹介されていて面白い.

最後に植物におけるコンフリクトの話題になり,種子親と種子のコンフリクトと重複受精の起源が取り上げられている.

ここでこの性的コンフリクトは親子コンフリクトと絡むともっと複雑だと解説されていて,あたかも二つのコンフリクトがあるかのような記述だが,実際にはメスのゲノムとオスのゲノムの対立があるだけであり*12,説明としてまぎらわしいように思われる.

さらに重複受精はオスのゲノム的利益のためにオスのゲノムが2倍含まれる胚乳が形成されるようになったと解説されているが,メスの観点も取り入れてなぜそこが平衡になったのかという点,第6章にあるように種皮でブロックできるなら意味ないのではないかという点の解説がなく,はっきり言って理解しがたいものに止まっている.

私としては親子コンフリクトと性的コンフリクトは一括で解説したほうがよかったように思う.また重複受精の問題は大変興味深いトピックなので,種皮の機能と併せて詳しく解説して欲しかったところだ.



進化理論にかかる概説はここまでで,全体としてみると旧版にあった性転換,性淘汰,性の数,生活史,擬態がカットされ,性的コンフリクトと共進化が新しく書かれたという形になる*13.このあたりは紙数の制限もあり,最近の面白い具体的問題をより取り上げるために泣く泣く削ったということなのだろう.そしてこのあとの第10章から13章までは植物にかかる面白い問題を扱う各論となっている.旧版にあった花の結実率の進化をカットして送粉者の誘因にかかるトレードオフ,訪花動物の訪花戦略,葉の寿命が加わっている.結構面白そうな進化理論説明を削ってまで載せたということからわかるように改訂版ではこの各論部分に力が入っていて読み所となっている.



第10章は旧版の第5章にあった植物の性表現.これは各論で唯一淘汰されずに残った章で,著者たちも面白い問題だと考えているのだろう.内容は理論の進展に応じて書き換えられており,大変面白く充実している.動物においては雌雄異体が普通なのになぜ植物においては多様なのか,さらにどのような条件でそれぞれの性表現が進化するのかということが本章の主題だ.

まず投資時期がずれ,共有できる器官があるので植物では雌雄同株両性花が進化しやすい.しかし自家受粉の不利を避けるために異型花柱性や自家不和合性が進化する.さらに自家受粉の不利は環境依存であるために,環境によっては自家不和合性は崩壊に向けて進化する.*14

また同株か異株かということについては,雌雄同株両性花から,どのように雌雄異株に進化しうるかを考察している*15.まず核遺伝子とオルガネル遺伝子のコンフリクトを考えると雄性不稔や稔性回復などの現象が理解でき,そして雌性株が進化しやすい.またいったんそうなると性比の問題から残った両性株は雄性化しやすくなる.これが雌雄異株への進化の第一のルートだ.次に自家花粉の干渉を防ぐために同株のまま雌雄異花性が進化するルートがある.このときに片方の性に投資を集中した方が有利であれば異株性が進化できる.これが二番目のルートになる.最後の部分については進化条件をグラフと数式の両方で,かつ実際にどのような場合*16が考えられるのかまで解説しており,著者の熱意が感じられる.



第11章は「花のジレンマ」と題されていて,送粉動物の誘因効率を上げるために花を多くつけると隣花受粉による自殖が増えてしまう,あるいは花粉が他個体に運ばれずに失われてしまうという問題を扱っている.この章も詳細は大変に面白い.

花側の対策としてはまず雄性先熟がある.これはわかりやすい.次に蜜量の個体内変異をつけるという戦略がある.送粉者が最適採餌戦略を採っているとこれにより滞留時間を減らせるのだ.また複雑な花にして一つの花における蜜を得るための固定コストを増やすと同じく最適採餌者は早く立ち去る.さらに花を大きくして個数を減らしても同様の効果が期待できる.この送粉者側の最適採餌戦略から可能になる戦略というのはなかなか渋い.

もっとも本章はより深い疑問を多く持たせる章でもある.ではなぜ単純な花や,小さな花をたくさんつける植物があるのだろうか?おそらく別のトレードオフがあるのだろうが,それは何だろうか.またそもそも報酬としての蜜量と,広告としての花はどのように進化するのだろうか.なぜ花の広告は騙しによって崩壊しないのだろうか.蜜がないと訪花動物はすぐに花を離れてしまうので完全な騙しは逆に効率が悪くなって成り立たないのだろうが,詳細には結構複雑な問題が多いような気がする.



第12章は訪花動物の訪花戦略.

これは送粉者側の最適採餌戦略について,その詳細が最近詳しくわかってきたようで,その紹介という章になっている.進化理論の各論としては特に興味深い問題ということではないが,植物の進化生態のリサーチャーにとっては大変興味深い知見が眼前に広がりつつあるのだろう.



第13章は葉っぱの寿命.

ここではなぜ寒い地域にある針葉樹は常緑のものが多く,亜寒帯から温帯にかけては落葉樹,さらに温帯から亜熱帯,熱帯にかけては常緑樹になるのかという問題,さらに常緑樹においては葉の寿命はどう決まっているのかという問題を扱っている.

本章ではこれを数理モデルを使って解いていく.葉の建設に初期コストがかかり,葉は時間とともに光合成効率が下がり,さらに時間とともに維持コストも下がるとする.そして光合成不適期間を導入してやると,見事に常緑樹と落葉樹の分岐,さらに常緑樹の二峰分布が導き出されるというものだ.非常に美しい.



第14章は「生物の多様性と絶滅」と題されて,進化史的な話題をいくつか扱っている.

まず多様性の源泉として適応放散を取り上げて,その要因として空きニッチへの進出,競争相手の絶滅,鍵革新形質を紹介している.次に分子系統樹が容易に得られるようになったことから進化史の状況の推定ができるようになったことを取り上げている.さらに進化は生物集団や生態系にとって最善に進むわけでないことを説明し,その実例としての進化の袋小路(無性生殖種,ホストを性転換させる寄生者)を挙げている*17.最後に大量絶滅を扱っている.



最終第15章はヒトの進化について.

ヒトを含めた類人猿間の特徴比較,化石からみるヒトの進化史,進化心理,農業以降の歴史,ヒトの未来と進化学を扱っている.途中までは無難なまとめなのだが,進化心理あたりからはかなり怪しい記述が多い.

まず進化心理の説明では男女の心理の差のみを説明してすませている.それでは余りに狭い紹介の仕方だろう.

さらに進化心理を学ぶ際に注意すべきこととして,「代替仮説へも注意をはらうべきこと」,「暴力,嫉妬などが過去に生じた適応だとしても,それらは現在,未来で尊重されるべきものではないこと」をあげ,これが誤解されたからナチの悲劇が生じたかのように書かれている.

しかし代替仮説への注意も自然主義的誤謬への注意も,別に進化心理学特有の問題ではない,進化生態学全体にかかる問題だ.ことさら進化心理学だけこのような誤謬に注意すべきだと書くのはおかしいのではないだろうか.またナチズムの問題は単なる自然主義的誤謬の問題ではないだろう.そもそも彼等はイデオロギー的な確信犯であり,仮にホロコーストに何らかの生物学的で自然主義的誤謬な理由付けがあったとしても,それは優生主義とその実践方法の問題であって,ことさらに「進化心理学を不用意に学ぶこと」に関係するわけではないように思う.控えめにいってもミスリーディングな記述ぶりではないだろうか.

農業以降のヒトの歴史の記述も問題含みだ.農業で余剰生産物が生まれ,格差が生じ,大規模な侵略と戦争が生じたという認識のようだが,少なくとも戦争に関してはミスリーディングだ.狩猟採集部族同士の戦争の方がより死傷率が高く,残酷で,復讐の連鎖を止めようがなかった,そして農業文明は結果的に世界の暴力減少に大きく貢献したということが全く理解されていないようだ.このあたりのいかにも「文明や技術はすべて悪」とでもいいたいような浅い記述は残念というほかない.



本書全体の構成のなかでこの14章,15章はやや焦点がはっきりしない.おそらく一般の読者の興味にあわせて進化史的な話題とヒトの進化の話題も入れたということなのだろう.しかし特に第15章は理論的に面白い問題を扱うわけでもなく,著者にこの分野のエキスパタイズがあるわけでもなく,蛇足という感を免れない.もう一つ植物周りの各論があった方がよかったのではというのが素直な感想だ.



というわけで利他行為とヒトの章に関して一部不満はあるが,全体として本書は進化理論をきちんと解説した上で,興味深い応用問題をいくつか具体的に詳しく解説しているという点でユニークで,かつ内容が充実している本だと評価できる.特に植物周りの各論,さらに厳選されたエレガントなリサーチ例の紹介は読んでいて大変楽しい.進化理論のカバー率は若干下がったが,進化ゲーム周りの副読本としては大変価値の高い本となるだろう.



関連書籍


旧版

生き物の進化ゲーム―進化生態学最前線 生物の不思議を解く

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佐々木顕によるアームレースの動態の解説コラムのあるカール・ジンマーの進化.私の書評はhttp://d.hatena.ne.jp/shorebird/20121002

進化――生命のたどる道

進化――生命のたどる道




 

*1:なお表紙のイラストは旧版も改訂版もサッカーがテーマで,これは主著者の酒井の趣味だと思われる.なおプレーヤーは動植物なのだが,なぜ改訂版においてミーアキャットとナデシコが入れ替わっているのかは不明だ.

*2:参照文献はすべての章で新しくされている

*3:さらに女王の視点からは,多数回交尾の進化要因の一つになるという意味もある

*4:ここで旧版にあった膜翅目昆虫のワーカーによる性比の操作の記述が省略されている.

*5:共生している松から炭水化物として栄養が与えられる状況に適応しているため,シイタケのようにおがくずで栽培できない

*6:一部のランは光合成を行わないのに菌根菌を形成している.今のところ菌側の「検閲」は観察されておらず,頻度が低いため淘汰圧が小さいのだろうと推測されている

*7:カメムシ間の植物の利用範囲の違いは,昆虫自身の適応ではなく共生細菌の違いによることが明らかになった

*8:なおこの点に関してはカール・ジンマーの「進化・生命のたどる道」の第11章で佐々木顕が解説コラムを書いている.果皮厚と口吻長に関するコストを非線形(コストが加速度的にきつくなる)と仮定した数理モデルを組むと平衡点が生じ共進化が一定のところで止まること,その平衡点はツバキの生産力で決まること,それはツバキの生産力が高い南方ではよりゾウムシの密度が高くなるのでより高いコストを払った防衛が見合うからだと解釈できることなどが解説されている.

*9:18年間にわたるリサーチでペア外交尾由来の子供の方が適応度が高いことが見事に示されている

*10:精子間競争に強いオスの子孫の方が生存率が高い.つまりメスは精子間競争を起こさせることによって配偶者選択を効率的に行うことができる.これも見事な結果だ.しかし精子間競争の強さと子孫の生存率に正の強い関係があるとは(いかにもトレードオフになりそうなところなので)驚きだ.この結果は多くの生物でも普遍的にみられるのだろうか?

*11:精子間競争を起こさせることにより近親間の受精を減らすことができる.やはり見事な結果だ.

*12:結局母と子のコンフリクトは母のゲノムと子にある父由来ゲノム成分の争いであって,親子コンフリクトは性的コンフリクトの発現様式の一つと見ることができる

*13:なお共進化は旧版では各論として「植物と送粉者の共進化」が取り上げられていたので,各論から総論へ転換されたともいえるだろう.また性淘汰は第15章にコラムの形で簡単に触れられている

*14:この自家不和合性の進化と崩壊については今回新たに書き加えられている

*15:ここも大きく書き換えられている.

*16:自殖による近交弱勢がある場合,果実が集中した方が散布効率がよくなる場合があげられている.

*17:ここで有性生殖の短期的有利性のエレガントな実証リサーチが紹介されている.ニュージーランドの湖では巻き貝に寄生する吸虫が生息するが,最終宿主のカモがいて吸虫の進化が生じやすい沿岸部では有性生殖,進化が生じにくい中央部では無性生殖が優越している.そして沿岸部の有性生殖の多い吸虫のみ同所にいる巻き貝に対して高い感染率を維持することができている.さらに二つの湖で巻き貝と吸虫の組み合わせを変えて,これを確かめている.これは通常のパラサイト説とは逆にパラサイト側の進化を扱っているが,結果は実に見事だ.