「野蛮な進化心理学」

野蛮な進化心理学―殺人とセックスが解き明かす人間行動の謎

野蛮な進化心理学―殺人とセックスが解き明かす人間行動の謎


本書は進化心理学者ダグラス・ケンリックによる進化心理学にかかる一般向けの科学啓蒙書だ.原題は「Sex, Murder, and the Meaning of Life」.ケンリックは,「パートナー探し,配偶(つまりセックスに関する)動機を印象づけることでアンケート調査の内容に変化があらわれるか」「どのようなヒトがどのような殺人ファンタジーを持つ傾向があるか」等を調査することによりヒトの心理,行動傾向が明らかになることを指して,「どん底」からの見方と呼んでいて,それが邦題の元になっている.本書の内容はそれだけではなく,どん底からの見方で何がわかるかをまず提示し,それを統合して解説し,最後に人生の意味についても考察するという構成になっている.なお.(副題を読めばわかるとはいうものの)この邦題は「進化心理学は野蛮な学問だ」という意味に受け取られかねず,ややミスリーディングなタイトルのつけ方であるように思う*1

ケンリックはなかなか面白いバックグラウンドの学者だ.ニューヨークのクイーンズのかなりやばい地域の出身,父親や弟は刑務所暮らし経験者で,本人も高校をいくつもドロップアウトし,そのあげくに潜り込んだコミュニティカレッジ*2でも放校寸前になるが,そこで学問のおもしろさに目覚めて社会心理学*3になる.そのあたりも含めてかなりざっくばらんな調子で社会心理学者目線で進化心理学を語ってくれている.


導入章では「アンチョコ的なまとめ」と称して,一般にはあまり浸透していないだろう進化心理学の知見が5つにまとめられている.「ヒトの行動傾向は単純な利己的なルールでかなり説明できること」「単純なルールにより生まれるからといって,ヒトの行動傾向は単純ではなくドメイン特異的な複数のモジュールからなり複雑であること」「またそれは不合理という事にはならず『深い合理性』を持つこと」「そしてそれは利己的とも限らないこと」「社会の複雑性にもつながること」ということになる.1,2,4点目は進化心理学的には常識的な主張で「ヒトの行動傾向は,進化による適応産物として包括適応度最大化という単純なルールにより形成されたが,複雑で,適応課題ごとのモジュール的な性質を持ち,時に利他性も持つ」とまとめられる.そして3,5点目の深い合理性,社会の複雑性へのつながりがケンリックの独自の強調点という事になるだろう.


第1章では進化心理学勃興前夜の思い出が語られている.1970年代,ケンリックは社会心理学を学ぶ大学院生で,修了試験のプレッシャーからの逃避にジェーン・ランカスターの「霊長類の行動と人間文化の出現」を読み始める.そしてそれまで学んできた社会心理学は観察されるアドホックな現象を記述しているだけで基礎たる統一理論がないことを実感し,さらにE. O. ウィルソンの「社会生物学」にも手を伸ばし,進化理論こそその統一理論であるはずだと悟る.ケンリックは(当時の社会生物学論争の経緯を考えれば)ナイーブにもすぐさま「女性が男性に対して示す関心は男性の社会的優位性に影響されるか」というリサーチを社会心理学のジャーナルに投稿するが,文化大革命紅衛兵オーウェルの「1984年」の反セックス連盟をあわせたような学界の「政治的正しさ」警備隊に「思想犯罪」として排除されるという憂き目にあう.ケンリックはそこからの30年以上の進化心理学探究の道のりは実り多い個人的な戦いでもあったと書いている.現在でも誤解に基づいた進化心理学への反発や批判は絶えないが,当時はさらにガチンコな対決だったという事なのだろう.当事者としてはこのような本が書けるようになった事への感慨が窺える.


第2章〜第4章が「どん底」からの見方になる.
第2章は男女の配偶戦略の性差の実証.よくなされるのは直接的なアンケート調査だが,ケンリックはちょっとひねった方法を紹介している.それは多くの顔写真を並べて短時間見せて,どの顔が記憶に残ったかを調べるというものだ.男性は(予想通り)美人に注目し,美人の顔を選択的に覚える.女性はイケメンに注目するが,それは選択的な記憶に残らない.また,男性は美人の写真を数多く見せられると現在のパートナーの評価が下がるが,女性はイケメンの写真を見てもそうならず,しかし社会的地位の高い男性の写真を見せられると評価が下がる.これらの結果は,「男性はより短期的配偶戦略を重視し,配偶相手の期待生涯繁殖成功を評価基準とするが,女性はより長期的配偶戦略を重視し,配偶相手から得られる期待リソース総量を評価基準としている」と解釈できる.知見自体は有名なものだが,アンケートの不確実性を排除しようとする実証方法が面白い.


第3章は殺人ファンタジー*4
ケンリック自身によるアンケート調査によると現代アメリカの過半数の男女(男性で76%,女性で62%)が殺人ファンタジーをもてあそんだことがあり*5,性差はあるが実際の殺人率の性差に比べると著しく小さい.ケンリックはこの理由について,一つには女性の方が非力なので反撃まで考えたときのリスクリターンが悪くてより抑制しているという事情もあるだろうが,男性はより社会的地位を巡っての殺人動機*6が大きいからだろうとコメントしている.これは性淘汰状況でのオス間競争にかかるものという解釈になる.女性の殺人はこのような淘汰圧とはあまり結びついておらず,「殺らなければ殺られる」ような自己防衛的な状況が大半になる.行動生態学的な発想からは実際の殺人データに当たることになるが(デイリーとウィルソンの研究が有名),社会心理学的な発想ではファンタジーの調査からということになるあたりの取り組みスタンスの差も面白い.
なおケンリックはここで至近因と究極因の違いを解説し,スティーヴン・グールドはこれがわかっていなかったのだと手厳しく批判している.社会生物学論争の恨みということだろうか.


第4章は偏見について.
冒頭のケンリック自身の宗教的偏見の経験例が面白い.ケンリックの最初のデート相手はユダヤ系の少女だった.そして大して敬虔でもないカトリックだった母はそのことに否定的だった.最初の結婚相手の両親はプロテスタントであり,カトリックの息子のケンリックに否定的で,「スカンジナビア系のルーテル派プロテスタントでなければ*7」とお気に召さなかったそうだ.
これらの偏見を生みやすい土壌の一つはヒトの持つ外集団への恐怖心だ.恐怖は相手に対する機能的投影を招き,相手を「怒っている」と認識する方向にバイアスがかかる(真に危険であればその方がアラームが早く働き,適応的になる).そして認知的に外集団均質化の過程が働き,あるカテゴリー全体への偏見につながる.ケンリックはここでも何人かの顔写真を見せて様々な質問に答えさせるという手法でこのような仕組みを明らかにしている.*8
またこの章では,偏見を減らすために書かれたニューバークとショーラーの進化心理学の論文が,査読者の政治的反感に満ちたコメントとともに却下されたことに触れたあとに,進化心理学への「遺伝的決定論である」という批判について反論している.このあたりにも過去の政治的正しさ攻撃の軋轢の残した跡を感じることができる.


ここからは知見の統合に進む.
第5章ではヒトの心理のユニバーサルが取り扱われる.冒頭でアメリカの大学生を対象としたリサーチによるヒトの配偶戦略の性差をプレゼンしたところ,人類学者からすべては文化的に決まると猛然と反論された経験が語られる.あるヒトの行動傾向が適応産物なら(出アフリカ以前の更新世がEEAとして)それはユニバーサルであることが期待される.
ケンリックは新聞のパートナー募集広告の分析から,アメリカの男性は年をとるほど,より(自分との年齢差が大きな)若い女性を好むようになることを発見し,これがユニバーサルかどうかをさらに調べる.そしてそれはインド,ブラジル,アフリカ遊牧民など様々な文化で同様の好みがあることが明らかになる.*9
そしてヒトの行動傾向は遺伝と環境の相互作用によって決まるという事実を強調し,その比喩的な表現としてコスミデスの「ジュークボックス」より「ぬりえ」の方がいいのではないかと提案している.輪郭は定まっているがどんな色になるかは環境によって決まるというわけだ.そして複数のページがあると考えるとモジュール性にもよくマッチすると主張している.


第6章は心のモジュール性について
冒頭でケンリックは息子,親友,妻(息子の母親ではない)と一緒にヨーロッパを旅行して,ぼろぼろになった経験を語り*10,それは自分の中の親子関係,友人関係,配偶関係の異なるモジュールが相互干渉してうまく事態を裁けなくなったためだろうと回想している.
ここでは一時猛威を振るったスキナー流の強化感情モデルが,食物への嫌悪感の選択性の発見を契機に否定されていった経緯が語られ,その後発見された様々なモジュールの例*11が説明されている.モジュール性の説明に何を用いるかは解説書により様々だが,ケンリックの強調するポイントは特に異なる対人適応課題を前にすると異なるモジュールが表に現れるという部分であり,それを7つの下位自己*12として整理している.このあたりは社会心理学者らしく面白い.


第7章は動機から身た心のモジュール性について.まずマーケティングなどで有名なマズローの動機のピラミッドが紹介される.これは何の根拠もなく動機に上下をつけていて最近の評判はあまり良いものではないが*13,ケンリックはマズローの考えについて,当時の行動主義が跋扈している状況においてそのパラダイム*14 *15に納得できなかった中での真摯な考察によるものであり,ヒトの心のモジュール性への洞察とも捉えることができると擁護していてちょっと面白い.
そして進化的な視点から動機のピラミッドを組み直して提案している.これは発達的に現れる順*16に並べてみたものだ.そして(ピラミッドから消えてしまった)自己実現などのマズロー流の高位の動機は進化的にみると配偶者の獲得に資するものであることを説明し,またこのような発達史的な並べ方により生活史戦略の重要性を示すことができると主張している.
とはいえこの新しいピラミッドはマズローのピラミッドの基本原則のなさを明らかにしている以上の意味はあまりないように思う.進化的に考えるならば生活史戦略におけるトレードオフも含めて,ヒトのさまざまな動機とその示現態様は包括適応度最大化のためのメカニズムにすぎない.すべてをその面から説明する方がよいのではないだろうか.


第8章は記憶について.ヒトは経験した出来事のごく一部を選択的に記憶として残す.認知科学はそのメカニズムについてリサーチしているが,進化心理学的に考えるならば,その選択は適応課題にとって役立つかどうかに依存し,さらにその時々に発現しているモジュールによって選択基準が異なると考えるべきことになる.ケンリックはこれをどんな顔が記憶に残りやすいかの性差リサーチ*17や,反実仮想内容の性差リサーチ*18などにより調べている.このあたりの社会心理学のリサーチ手法の洗練ぶりは面白い.


第9章は性淘汰がヒトの心理に与えている影響について.顕示的消費の謎を冒頭で振った後に,性淘汰理論を簡単に解説し,自分のリサーチを説明している.
ここでも性差の検出が大きな要素になる.女性は男性が社会的優位性を示しているかそうでないかでその魅力の判定に影響がでるが,男性の女性の魅力判定においては社会的優位性の誇示は影響されない.恋愛を場面想起させたのちに思いがけなく手にしたお金で何をするかと聞かれると,男性はより派手な消費に,女性はより慈善に使おうとする.そして男性のディスプレーとして解釈できるものにこのような顕示的消費だけでなく,英雄的行動,芸術*19,反抗心*20もあることを指摘している.このあたりは進化心理学ではおなじみのところだろう.


第10章は宗教について.ボイヤー,アトランたちの副産物的な解釈とD. S. ウィルソンの適応産物的解釈の論争に触れた後で,それには特にコメントせず,自分の宗教と配偶戦略の関係についてのリサーチを紹介している.それは「宗教的な人々は一夫一妻的な配偶戦略を採り,リベラル無神論者は乱婚的な交配戦略を採っているのではないか」という仮説にかかるものだ.リサーチの結果,教会に通うかどうかを最も予測する要因は性や家族に対する価値観であることを見つける.ケンリックはこれは価値観から宗教へ向かう因果かもしれないとコメントし,人々が信仰を失うのは婚前交渉の誘惑の高い学生時代であることが多いことを傍証として挙げている.また場面想起法による実験では,男女とも魅力的な異性を意識させても宗教心に変化はなかったが,魅力的な同性を意識させると宗教心が強化されるという結果が得られた.これは少なくともアメリカのキリスト教のような宗教が「互いに浮気しない協約」のような役割を果たしていることを示しているようで興味深い.この章も社会心理学的なリサーチ手法が駆使されていて面白い.


第11章は「深い合理性」について.認知科学行動経済学によるヒトの非合理性の議論を簡単に紹介した後で,これは「不合理」ではなく「深い合理性」と解釈すべきだと議論する.ある意味言葉の定義のような話だし,ヒトの心理メカニズムはEEAにおける包括適応度最大化のために進化したものだから,それを「深い合理性」というなら当然ということだろう.だから読むべきところは詳細の議論になる.
まず「非一貫性」は直面する適応課題に応じてモジュールが入れ替わって発現していると考えると「深い合理性」を持つことになる.また「損失回避」はEEAにおいて実際に効用が非対称だったことから説明できる.そしてモジュールの入れ替わりを考えると,リスクをとる傾向のあるモジュールでは損失回避傾向が下がることが予測できる.そしてケンリックは交配動機が強く現れた男性において実際に損失回避傾向が消失することを見つける.
なお将来のリサーチ余地の大きい分野だが,モジュール性と組み合わせるといろいろな検証可能な予測が立てられそうでなかなか面白いリサーチエリアのように思える.


第12章は社会全体の振る舞いの説明について.ヒトは明らかに周りの影響を受ける.ケンリックは個々のヒトの行動ルールと周りとの相互作用ルールを記述し,それを元に社会全体の振る舞いを記述する「力学系理論」をかなり熱心に取り上げる.この最初のルールに進化心理学の知見を(直面する適応課題ごと,つまりモジュールごとの条件付き行動ルールとして)取り入れるならかなりうまく社会の振る舞いを説明できるのではないかという期待があるということだろう.ここも道のりは遙かに遠いが将来的には面白いエリアなのかもしれない.


そして最後に「人生の意味について」といういわばエッセイのような章が追加されている.これを「あらゆることはどう関連しているか」と捉えるなら,認知科学進化心理学の知見とそれを応用した力学系理論でかなり解明されるだろう,そして「もっと充実した人生を送るにはどうすればいいか」と捉えるなら,そして進化や行動におけるこれまでの知見から考えるなら,家族や友人たちの世話を焼き,絆を深めるという自然な喜びを楽しむのがいいのではないかとコメントしている.やや月並みな人生アドバイスにも見えるが,これは長年ヒトについて考えてきたケンリックの実感ということなのだろう.


というわけで本書は進化生物学,行動生態学の解説を最小限にとどめ,社会心理学的な手法から明らかになったことを中心に解説した進化心理学の啓蒙書ということになる.社会心理学の主流のリサーチ手法についてはWEIRDという限られたサンプルによる(どこまで正確かわからない)アンケート主体という批判はよく聞くところだが,実際に詳細を読むと手法は洗練され,興味深い結果が数多く得られていることがわかる.私的にはそのあたりが大変面白い本だった.


関連書籍


原書


調べるとケンリックは多くの社会心理学の教科書を書いているようだ.この本は一般向けの『深い合理性』についての一冊らしい.

The Rational Animal: How Evolution Made Us Smarter Than We Think

The Rational Animal: How Evolution Made Us Smarter Than We Think


師匠に当たるチャルディーニの名著,最近第3版が邦訳出版された.

影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか

影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか

*1:実際店頭で初めて本書を見かけたときは,進化心理学攻撃本かと思ってしまった.「どん底からの進化心理学」ぐらいの題ではパンチ不足で売れないという判断なのだろうか.

*2:アメリカの大学の中では,名門私立校,州立大学のさらに下ランクにある公立の2年制の大学.日本でいえばたとえは悪いがFランク校と専門学校をあわせたようなニュアンスだろうか

*3:「影響力の武器」で有名なチャルディーニの弟子に当たる

*4:本書では「殺人妄想」と訳している.日本語の「妄想」という語義とは少し異なり,空想の世界で憎い相手を殺すことを夢見る事を指している.これをアンケート調査することは,進化心理学ではかなり初期から行われている調査方法の一つだ.本書評では私の好みに従って殺人ファンタジーの訳語を用いる

*5:日本で調べるとどういう比率になるのだろうか,調査例はあるのかもしれないが,あまり聞いたことがない.仮にアメリカよりやや低いとしても,それが本当にファンタジー比率の差なのか,アンケートに正直に答える比率の差なのかを確かめるのは難しそうだ.

*6:いわゆる名誉の文化のような環境ではメンツが実際に適応的にも重要な場合が多いことを指している

*7:ケンリックは「彼等はおそらくマルティン・ルターその人であっても,ドイツ系であるという理由でお気に召さなかっただろう」とやや恨みがましく皮肉っている.

*8:様々な例のうちとりわけ面白いのは,大学生はキリスト教原理主義者と急進的フェミニストに似たような否定的感情を抱いているという知見だ.個人の自由に対して(自分たちだけが信じている)理由で干渉してくる様が似たような脅威として認知されているというわけだ.これらはいずれも進化心理学に敵対的,批判的であることも共通で,ケンリックによるちょっと辛辣な指摘ということかもしれない

*9:ここでケンリックはティウィ族の婚姻パターンに関する文化人類学者の報告がその驚くべき例外に見えるが,よく調べるとそれは特殊な社会的慣習が前提になっていて,それをふまえるとむしろユニバーサルな好みがあるためにそうなることを説明できることがわかり胸をなで下ろしたという逸話を語っている.詳細はなかなか面白い

*10:最初はパリでマクドナルドのハンバーガーを食べたいと強硬に主張するティーンエイジャーの息子との対立から始まる.涙なしには読めない物語だ.

*11:ちょっと面白いのはゲイの配偶戦略モジュールが男性のそれをそのまま利用しているという部分だ.これは進化的には男性用のモジュールがゲイの体という環境において非適応的に発現しているということになるだろう

*12:チームプレーヤー,野心家,夜警,強迫神経症患者,独身貴族,よき配偶者,親と訳されている,原文がどうなっているかちょっと興味深い

*13:とはいえいまだマーケティング業界では圧倒的に使われているようだ.真偽より説得力があればそれでいいのだろう

*14:飢えや渇きなどの少数の一時的動因とスキナー流の学習モデルによりその一時的動因に結びつけられた二次的動因のみで説明しようとした

*15:またケンリックはマズローの当時の立場についてフロイト流の考え方に対する代替仮説的な説明という意味もあったと指摘している.フロイトの性欲にとらわれたネガティブな動機の説明よりもっとポジティブな説明を求めたということになる.

*16:生理的欲求,自己防衛,提携,地位・承認,配偶者の獲得,配偶関係の維持,子育てという順になる.

*17:女性は男性の怒り顔を,男性は女性の笑い顔を記憶に残しやすい.これは男女の直面する適応課題が異なっていることから説明できる.また怒っている顔は男性,笑っている顔は女性と認識されやすい.なおこれが文化的な現象でないことを示すために,コンピュータにより作った中性顔を男性や女性の服装に乗せたイメージを使った実験も行っている.予測通り服装による性別認識の上では感情認識の差は検出できないそうだ.

*18:親との関係や学業に関しては性差はないが,恋愛関係においては,男性はしなかったこと(あのとき彼女の誘いに乗らなかったが,乗っていれば・・・)を後悔し,女性はしてしまったこと(ママの警告を無視してあのろくでなしと関係を持ってしまった)を後悔する傾向がある.

*19:なおここでケンリックは自分のリサーチの結果として,女性の芸術について「何度かデートをし,友人にも両親にも受けがよい男性との長期的な関係を考えているときに限って自分の創造性を誇示しようとする」と解説している.そうであれば長期的な関係を持とうとしている男性は特に女性の芸術性に魅力を感じるということになるはずだ.ピアノを弾くお嬢さんへの恋は長期的配偶戦略を示しているということなのだろうか,なかなか興味深いところだ.

*20:ロマンティックな場面想起をさせると集団と異なる意見を表明したがる.ただし真偽の決着がつく事実の問題については間違えないように集団に従うそうだ