「決断科学のすすめ」


本書は植物学者であり,進化生物学者でもある矢原徹一による,「どのようにすれば良い決断ができるか」をテーマにした一般向けの本である.本書執筆の経緯としては,文部科学省により2011年に開始された「博士過程教育リーディングプログラム」に,九州大学として「持続可能な社会を開く決断科学大学院プログラム」を応募し,2013年に採択されたということがあり,そのプログラムの教科書作りに先立って入門書を出版したという説明がある.良い決断をするためのノウハウを書いたビジネス書は多いし,歴史や小説にもヒントはあるが,科学の面から考察した軸を持つことも有用だろうという趣旨だ.


本書は入門書としての取っつきの良さ(いい意味の緩さ)を優先した構成になっていて,2部6章の本だが,各章が細かな節に分かれてそれぞれ完結する短い話題を扱い,厳密な論理構成を採っていない(それは今後完成する教科書の方で追求するという趣旨なのだろう).それぞれの節では,進化についての入門的解説,最新の興味深い研究の紹介,最近の面白い本の読書ガイド,著者独自の仮説や考察,著者による経験談などが順不同で扱われている.叙述も原書や原研究の中身をそのまま紹介するのではなく,一旦かみ砕き,著者自身の理解として整理した上で,できるだけわかりやすく伝えようとするスタイルで行われている.
 

第1章 進化的思考

進化についての概説.ピンカーの「暴力の人類史」の読書ガイド,ヒト進化についての著者の独自の解釈,遊びの重要性についての著者の見解,学力試験の意味と東大と京大のカラーの違いが取り上げられている.進化を概説してから,読者にとって興味深いと思われるものをまず提示している導入章というところだろう.
なおヒトの進化については,ボームの「モラルの起源」を紹介しつつ,アルファオスを押さえ込めたことの重要性を取り上げ,出アフリカと「人類の躍進」を語っている.「人類の躍進」の著者見解については第4章で詳しく取り上げられる.遊びの重要性についてはミラーの「恋人選びの心」を紹介しつつ,ヒトの認知能力の進化における性淘汰の重要性について触れている.

第2章 リーダーシップ

なぜ優れたリーダーが少ないかについてのヒトの性格の多様性(ビッグファイブ)からの解説がまずあり,その後はどのようなリーダーが望ましいかについての著者の見解が開陳される.ここではチームワーク型のリーダーが望ましく,そのためにはビジョン,実行力,共感力が重要であるとする.また決断のプロセスについては「発見→決断→実行→学習→発見」という決断サイクルが提示され,動機を高めるための感情的メカニズムとしての「情熱」の重要性が説かれる.
続いて「ファストアンドスロー」の読書ガイドとともに,カーネマンとトヴェルスキーの二重過程が紹介され,複雑な問題についての決断には,システム2の思考(熟考過程)を用いることが重要だとして,そのためのトレーニングを提唱する.また発想力も重要だとして,それを鍛える3つの方法を挙げ,最後に「正解のない問題を考える力」がリーダーに必要な本当の力であると主張して,推論の展開,一般原則へ戻る力,優先順位をつけることの重要性を指摘し,学力を軽視すべきでないこと教育の重要性を強調している.

この章の記述のうちビッグファイブや二重過程論の知見は科学的知見といえるものだが,そこからの「決断にとって何が重要か」についての主張は,その主張の中身自体はそれぞれ納得できるものだが,そのエビデンスは示されておらず,なぜなのかについてあまり深く解説されていない.著者の目論見に反して科学書というよりも根拠なく断言するビジネス書のようになってしまっているという印象だ.

第3章 決断を科学する

最初に決断科学への障壁として「世界が確率的であること」「世界が複雑であること」「人間の主観性」が挙げられる.そして結果が運に左右される問題に対してはトライ数を増やして最終的な成功確率を上げる(著者のいう「決断科学の第1定理」)という方法を採ることを勧める.
3障壁としているが「ヒトの認知が確率的世界や複雑な現象の理解について苦手であること」の1つにまとめられるようにも思う.そして「決断科学の第1定理」は,ヒトは偶然の結果を必然と誤解しやすいから「失敗は偶然の結果かも知れないのであきらめずに何度でもトライしましょう」という話だということになるのだろう.「第1定理」と振りかぶっているが,問題のごく一部のような印象がないわけでもない.またピンカーを取り上げたところで触れた「イデオロギーの難しさ」,この後取り上げられる「集団浅慮」という問題の大きさとの関連も定かではない.どこかできちんと総括した方がわかりやすかっただろう.


続いて,ヒトの決断が直感に大きく基づいていることについて「デートやセックスの申し込みに対する反応の性差」「異性の選好における第一印象の大きさ」「広告のイメージ戦略の有効性」「プロパガンダの有効性」を挙げ,これは理性と直感を鍛えることにより対処することを進める.ここは性差の指摘を除き*1,第2章の二重過程論の繰り返しのような内容になっている.
次に感情のユニバーサル性を指摘し,ダーウィンの「ヒトおよび動物の感情表現」の読書ガイドとともに感情の進化的な説明が試みられる.ただし究極因よりも神経伝達物質の至近因に重きを置いた説明になっていてやや物足りないところがある.著者は感情は行動のきっかけを作るもので,反応は一過性になりがちで,それを克服するために「自制心」「理性」「チームの力」を使うことを勧めている.このように議論をつなげるなら,感情の適応的機能は「動機付け」であり,永続しない方が機能的には望ましいことを説明した方が良かったのではないだろうか.


次は失敗事例のケーススタディ.まず日本陸軍,アメリカの政権の「集団浅慮」による失敗が取り上げられ,「外部からの批判に耳を傾けること」の重要性が指摘される.続けて「行動に一貫性があること」「組織的な準備をしておくこと」「好感度を保つこと」が政治的決断において重要だと指摘している.
さらに著者は現在の日本政治に踏み込み,民主党政権や第二次安倍政権のいくつかの政治的決断について論評している.著者はできるだけ党派的な価値観を論じずに,決断の良し悪しだけを科学的中立的に評価しようとしているが,どうしても前提の整理などにおいて著者自身の政治的な価値観がにじみ出ている部分がある.身近な題材を採ってわかりやすくしようという意図はわかるが,逆に著者と異なる政治的価値観を持つ読者には受け入れにくい部分になってしまっている*2ことが懸念される.
またここで著者は失敗の理由について,特に「集団浅慮」を重要なものとして抜き出しているが,これが最も重要な失敗の要因なのだろうか.私的には,イデオロギーや宗教のようなエビデンスなしの信念体系,自己欺瞞,エージェンシー問題と適切なインセンティブを与える制度構築の方がはるかに重要に思えるところだ.


本章で示唆されている対策(「自制心」「理性」「チームの力」を使うこと,「外部からの批判に耳を傾けること」「行動に一貫性があること」「組織的な準備をしておくこと」「好感度を保つこと」が政治的決断において重要であること)は,いずれもなぜそれが有効なのかについての深い説明やエビデンスがなく,この「集団浅慮」を特に取り上げるスタンスとあわせ,記述振りがここでもビジネス書風な印象だ.

第4章 私たちはどこから来て,どこへ行くのか?

第4章のテーマはヒトの歴史だ.まず第1章で少し触れられていた人類の大躍進についての著者の考察が詳しく説明される.ネアンデルタール,デニソワとサピエンスの交雑という新知見をまず紹介し,交雑によって環境適応力が向上した可能性にも触れるが,むしろ交雑後の淘汰痕跡から見て,ネアンデルタールとサピエンスには言語や社会性に重要な遺伝的違いがあったのではないかと示唆する.そしてサピエンスの10万年前のレバノン進出が失敗し,6万年前のユーラシア進出が成功したことから,この間に言語能力が高度化して大躍進が可能になったのだろうと主張する.(なお出アフリカ年代自体には8万年前頃まで含めていろいろな異論があるところのようだ.著者は分子的証拠をより重視し,プラスマイナスの幅を持ってこの年代を示している.)

これは1つの見方だが,いくつか疑問もある.最終的にヨーロッパで生じた結果を見れば,ネアンデルタールとサピエンスの認知能力や言語能力には違いがあったのだろう.しかしそれがサピエンスにおいて進化した年代についていえば,現在のサブサハラの人達と出アフリカを行った人達の遺伝的多様性の差(サブサハラの人達の方が多様),そして両者に認知能力や言語能力にほとんど差が無いことから考えると,出アフリカ年代の6万年に近いということはほとんど考えられないのではないかと思う.レバノン進出が失敗したのは標本数1の事例に過ぎず,失敗原因は他にいくらでもありうるわけで,10万年前よりもさらに前という考え方も十分成り立つだろう.また言語能力がどこまで重要だったかについてもいろいろな考え方があるところだろう.


そして6万年前以降,特に農業革命以降サピエンスの自然淘汰の速度が上がっているという知見が紹介され,それは人口増加と農業開始による食性の変化と感染症リスクの増大で説明できるとする.
さらに著者の記述は歴史時代に入り,ダイアモンドの「銃・病原菌・鉄」の読書ガイドとともに,ヨーロッパの成功要因が解説される*3.そしてヨーロッパ人には認知能力の進化が生じたのではないかというクラーク説をそれに要する時間が短すぎるとして批判し,ヒトの地域グループ間の差は個人差のごく一部でしかないことを解説し,人口が減りゆく中でより豊かな社会を築くためには「多様性」を尊重し互いに補完するしかないと主張する.


ここでは農業革命以降自然淘汰が加速しているという説明と,ヨーロッパ集団で近年大きな認知能力進化が起こったはずがないという主張が同時になされていて,ややわかりにくいのではないかと思われる.加速している部分は消化作用や免疫作用に関連する部分が多いこと,認知能力や言語能力に地域集団間の差があるという証拠が無いことなどを丁寧に扱った方が良かったように思う.そして多様性尊重という価値観が表明されているが,この基礎を事実(これから豊かな社会を作るためにはそれしかない)に持ってきているかのような書きぶりはやや疑問だ.これではより良い方法があるなら多様性を認める必要がないということになってしまう.価値観に踏み込むなら踏み込むで,普遍的に認めるべき価値観であるとして正面から主張すべきではなかっただろうか.


そしてここ200年の世界のトレンドを俯瞰し,「サブサハラ諸国の所得を上げ,子供の生存率を上げることにより人口爆発を抑えること」「温暖化ガスなどの環境負荷を減らすこと」「先進国では所得やカロリー摂取量や医療支出を増やしても寿命の伸びはわずかであるので,生活の質の向上をもたらす新しいライフスタイルへの転換を促す社会制度とビジネスを構築すること」という3つがこれからの人類社会の課題であると整理している.

最初の2点については異論はあまりないだろうが,最後の課題整理については背景に著者の政治的な価値観がにじみ出ているように思う.寿命が延びずとも,所得増加により(個々人の好むライフスタイルのまま)人生が充実するならそれを目指すことになお意味はあるだろう.先進国においても(環境負荷を増やさない形で)所得増加を図るべきだ(そしてそれは低所得者層にとっては特に意味がある)という政治的主張は十分成り立ちうるものだ*4.もちろん著書において政治的主張を行うことは著者の自由であるが,科学の入門書としてはやや踏み込みすぎた印象だ.


本章の最後には,なぜ政治的党派的対立が生じるのかについて,政治的態度とビッグファイブの相関性,内集団ひいきについての知見,ハイトの道徳6次元軸説の紹介などを交えながら解説し,解決策としては「集団間より上位の課題について協力する体制を構築」「対立を助長する制度の改善」「スローポリティクス(時間をかけ情報を集め理性によって判断する政治)」を挙げ,さらにリーダーの資質として「党派間の対立を乗り越えて理性的な判断を行う」だけではなく,「道徳観の違いを個性として尊重しながら様々な主張と柔軟に対話すること」(さらに続くコラムで「嘘をつかずルールを守ることを最低限の規範として同意する」「複数の選択肢についてコストとベネフィットを比較する」)を挙げている.

ここも提示される解決策やリーダーの資質について,なぜこれが有効だと主張するのかの説明やエビデンスの提示がなく,やはりビジネス書風だ.またそれで問題が解決できるなら美しいが,イデオロギーや宗教や道徳観の対立がそれで本当にうまく解決できるのか(柔軟に対話しても相手を説得できるとは限らないのではないか,特に道徳が絡む問題について功利主義を認めない論者にコストベネフィットの議論が受け入れられるか)について説得力があるとは言い難いように思われる.イデオロギー,宗教,自己欺瞞がからむ問題を理性的に解決するのは極めて困難だが,本書ではこれらの問題が十分に取り上げられていない.一言でいうと問題の深刻さに対して,提示される解決策が綺麗事で楽観的すぎるような印象だ.

第5章 持続可能な社会へ

第5章は地球環境や生物多様性の観点から決断を考える章になる.最初に取り上げられているのは著者がここ20年ばかり注力している環境保全問題になる.具体的な問題が2つ紹介される.

  • スマトラ島の熱帯林の消失:アブラヤシやゴムノキのプランテーションの方が経済的に引き合う形になっているという背景が説明される.解決策としては農園を営む企業に熱帯林を守るインセンティブを与える制度の構築を提示している.
  • 屋久島のヤクシカによる食害:天敵である「ヒト」の捕食圧が減少したことが原因であると説明し,解決策は適切な水準の狩猟圧を維持することであるとし,鹿肉の消費利用が望ましいとする.

解決策はそれぞれその通りなのだろう.しかし本当に難しいのはそれをどのように制度として実装するかだ.例えば熱帯林の問題については最終的にインドネシアの政治決定過程まで考えなくてはならないだろう.著者は長年この問題にかかわっているので問題の難しさはわかっているはずだが,あえてそこまでは踏み込んでいない.


ここからは様々な国際会議の想い出を絡めたエッセイが2つ並ぶ.南スイスのモンテ・ヴェリダでの会議ではその場所の歴史(かつて理想主義者のコロニーがあり,カール・ユング,ヘルマン・ヘッセ,ジョーゼフ・キャンベルも引き寄せられた)に思いを馳せ,クアラルンプールでのIPBSE本会議に絡めてはテーマであったポリネータの価値を紹介し,日本の国際貢献のあり方を考える.


最後のエッセイでは,最近提唱された「人新世:Anthropocene」という概念を紹介しつつ,ヒトが環境に大きく影響を与えるようになる歴史の4つの転回点(出アフリカ,農業,大航海時代,産業革命*5)を整理し,現代の科学者はどうあるべきかを考える.科学者は問題を指摘し,解決策を提示してきたが,問題は解決しない.要するに「研究し論文を書くだけでは解決しない」のだ.そして環境や生物多様性にかかる4つの国際会議*6が「フューチャー・アース」という1つの流れに整理されてきた経緯を紹介する.そこでは,地球環境に関するあらゆる自然科学・社会科学の統合を図り,さらに科学者と様々なステークホルダー(市民,企業,行政,政治)との連携による知の統合を図り,社会に貢献することを目標とする.具体的にどうするかはまだ手探りというところだが,これに向けた著者の真摯な思いは伝わってくる.

第6章 社会をどうすれば変えられるか

冒頭でハーバート・サイモンとジョナサン・ハイトが示した対立の解決の方法を紹介している.サイモンは企業の意思決定をリサーチし,より良い組織はどうあるべきかを考察した.著者は,「サイモンは,ヒトの限定合理性に気づいてはいたが,最終的に市場原理をかなりの程度まで信頼し,その第一次近似から外れる部分はできるだけ理性を強化することに望みをつないだ」と整理する.ハイトは「象と象使い」のアナロジーで二重過程を説明し,ヒトの行動を変えるには象使いではなく象に話しかけることを勧める.著者はハイトの方法により可能性を見ているようだ.このあたりは企業の意思決定と環境問題などの意思決定の差(企業の中での対立は価値判断ではなく手法の有効性にかかるものが多いが,環境問題ではまさに価値観の対立になることがある)でもあるだろう.


続いて利他性の進化を包括適応度理論の観点から総説し,ヒト社会ではさらに協力行動の進化について「評判を通じた間接互恵性」および「処罰」*7が重要であるとまとめる.ここから著者はヒトにはこの評判と処罰に関連して報酬感受性と罰感受性が進化しており,それはビッグファイブでいう外向性と情緒安定性に対応するとしている.
ここはわかりにくい.前半の説明では報酬感受性も罰感受性もヒューマンユニバーサルであることになるが,ビッグファイブは個人差の次元の軸を表すもので,ヒトの多様性に関するものだ.ここでビッグファイブを持ち出す必要はなかったのではないだろうか.持ち出すのなら,なぜ外向性が低い人や情緒安定性が低い人がいるのかについてまで説明すべきだっただろう.


著者は続けて,このような評判と処罰に基礎を置くヒトの協力行動とミツバチの協力行動の違い,さらに交易を通じた良心性の強化,ダンバー数など関連トピックを簡単に紹介する.


ここからは著者の政治エッセイになる.著者はフランス革命の理想と,その実際のめちゃくちゃ振り,そして社会主義の失敗を振り返り,急激な社会改革は失敗のリスクがあり,生物進化のように小さな改良を積み重ねていく方法が確実なやり方だとし,その際に個人個人の創造性を行かす方向が望ましいと考察する.
そして個人の自由の制限という観点から,また緊急時の判断は現場優先にすべきだという考えから,自民党の憲法改正草案の「緊急事態」条項に疑問を呈している.ここも入門書にするにはやや政治的に入れ込みすぎの記述*8になっている印象だ.


最後に著者たちの東日本大震災被災地の復興支援の取り組みの体験談,そして「社会を変える」ための決断やリーダーのあり方について総括的に考察する.著者の結論は「長期的ビジョンを持つリーダーの元で小さな改善を積み重ねる」ことだというものだ.

本書は進化生物学者が,ヒトの進化から社会のあり方まで含めた広大なトピックについて自分の言葉で語る意欲作だ.このようなテーマについて興味を持つようになった人(そして特に社会科学系のバックグラウンドの人)には得がたい入門書だろう,またそういう人向けの読書ガイドとしても充実している.単に紹介するだけでなく,例えばジョナサン・ハイトを高く評価しながらも,グループ淘汰にかかるたわごとにはきちんと否定的コメントが付されていたりして,中身的にも価値が高い.
ただし,本書は全体的に入門書としての取っつきの良さを優先して,論理的に緻密な構成を取っていない.また政治的価値判断が表に出すぎた記述や,(意気込みに反して)理由やエビデンスの説明に乏しいビジネス書的な断定が散見されるし,学界の通説的な見解か著者独自の見解かが明確に書き分けられておらず,ややわかりにくいところもある.そのあたりは今後出版される教科書に期待するということだろう.


関連書籍


矢原徹一の本.これは初期の行動生態学の和書の傑作本のひとつ.自らの研究史を通じて植物の配偶戦略の進化を生き生きと語ってくれている.


本書で紹介されている本には,私も興味深い本だと思うものが多い.いくつか紹介しよう.


ピンカーの大作.原書の私の書評はhttp://d.hatena.ne.jp/shorebird/20130109


ミラーによるヒトの心がいかに性淘汰の影響を受けているかという本.かなり前の本だが,未だにこの分野でも最も面白い本のひとつだ.


カーネマンによるヒトの心の二重過程に関する本.私の書評はhttp://d.hatena.ne.jp/shorebird/20130403


古代DNA第一人者ペーボによる研究物語.私の書評はhttp://d.hatena.ne.jp/shorebird/20151106


ダイアモンドの名著.最初に読んだときは衝撃的だった.


ハイトの「人のしあわせ」について考察した本.私の書評はhttp://d.hatena.ne.jp/shorebird/20120129


ハイトの道徳を考える本.私の書評はhttp://d.hatena.ne.jp/shorebird/20140622


ボームによる狩猟採集社会の平等性に関する本.私の書評はhttp://d.hatena.ne.jp/shorebird/20141228


ジョシュア・グリーンによる道徳本.ヒトの道徳に関してはまず最初に読むべき本だと思う.私の書評はhttp://d.hatena.ne.jp/shorebird/20151005


いわずとしれたダーウィンの名著.私の書評(というのもおこがましいが)はhttp://d.hatena.ne.jp/shorebird/20061216

*1:この性差自体は,第1印象によって物事を判断してしまうという話とは微妙にずれているようにも思う.

*2:さらに第4章章末のコラムではSEALsの行動についてかなり好意的に評価している.ここも随分意見の分かれるところだろう

*3:著者の解説はなぜかダイアモンド説の最終的な究極因「大陸の軸が東西に広がっていたか南北に伸びていたか」にふれていない.なぜこの驚くべき単純な解答を紹介していないのかは謎だ.

*4:所得増加には必ず別の面でのデメリットがあるという感覚で書かれているのかもしれない.長年環境破壊に心を痛めてきた著者にはそう感じられるのも無理はない.しかしそれは(ちょうどヒトが確率的な現象を直感的に把握しにくいのと同じように)マクロ経済のノンゼロサム性を把握し損ねた議論に陥っているような印象だ.

*5:さらに産業革命には,エネルギー革命,市場革命,教育革命の3つの側面があるとしている

*6:正確には国際科学会議参加の4つのプログラム,世界気候研究計画: WCRP,地球圏・生物圏国際共同研究計画: IGBP,生物多様性国際研究プログラム: DIVERSITAS,地球環境変化の人間的側面国際研究計画: IHDP

*7:入門書ということで処罰の利他性のところまでは踏み込んでいない

*8:そしてなぜ緊急時には現場優先が良いのかについてはアネクドータルな理由づけしかなく,ここもビジネス書的だ.