Virtue Signaling その35


 

第7エッセイ 言論の自由に関する文化的多様性の擁護 その8

 
ミラーによる外国文化多様性の擁護エッセイ.ここで最後の結論提示になる.
  

なぜ我々は外国人学生や教職員へのスピーチコード差別を気にすべきなのか

 

  • まず財政問題がある.アメリカの大学は外国人学生から多くの収入(2015年で300億ドル)を得ている.彼等を混乱したコードで惨めにさせたりセクシャルミスコンダクトポリシーで恐怖に陥れたりしたら,これは危うくなる.さらに卒業後の寄付金収入にも影響が出るだろう.さらに最も優秀な学生や教職員を招くことができなくなれば我々の大学の知的文化やリサーチファンディングに悪影響を与えるだろう.
  • 次に国家広報の問題がある.アメリカは自由の国と考えられている.外国人学生や教職員にこれについてどう感じるかはアメリカの世界に対する影響力にとって重要だ.次の世代のスーパーパワーになりそうな中国やインドを含む多くの国のエリートはこのような人々だからだ.彼等は科学者やエンジニアや企業家になりその国の知的文化を牽引する.これこそがアメリカがフルブライト奨学生プログラムを維持してきた理由なのだ.彼等の学生時代の経験はその後長くアメリカの印象として固定される.自由を期待して抑圧的懲罰的なコードに出合えばどう感じるだろうか.
  • 最後に倫理的な問題がある.外国人学生や教職員も同じ人間なのだ.彼等の幸福,安心感,自由はアメリカの学生と同じように尊重されるべきだ.外国人がアメリカの社会正義戦士学生たちと同じ問題について同じように騒がないからと言って彼等の人権が軽んじられていい訳ではないのだ.アメリカの大学が外国人を受け入れるなら,彼等をフェアに扱うべきだ.それには彼等の言論の自由,良心の自由,コートシップの自由という人権を尊重することが含まれる.それこそがアメリカの大学の真の文化的多様性に至る道なのだ.

 
財政問題や国家広報の問題はここまではあまり議論されていないところで,付け足しということだろう.以上で本書収録のエッセイは終了だ.徳シグナリングの軍拡競争の果ての産物としての大学のスピーチコードが,(自分自身もそうである)アスピー達にとっていかに理不尽で抑圧的であるかを訴え,そしてアスピー達のオタク文化が一つのサブカルチャーだと考えると,それ以外のサブカルチャー,外国文化に属する人にとっても同じであるはずだという議論は確かに成り立つだろう.社会正義戦士達がこの議論に納得するとは到底思われないが,一体どのように反論するのだろうか.興味がもたれるところだ.
 
 
最後に文献紹介がある.

自著で紹介されているのは次の4冊.2冊目はアンソロジーで編者として関わっている.
 

同邦訳

 


同邦訳.

Mate: Become the Man Women Want (English Edition)

Mate: Become the Man Women Want (English Edition)

 
spentついての私の書評はhttps://shorebird.hatenablog.com/entry/20101009/1286588967,訳書情報はhttps://shorebird.hatenablog.com/entry/20171226/1514240384.Mateについての私の書評はhttps://shorebird.hatenablog.com/entry/20180101/1514810891
 
<完>