Animal Behavior 11th edition Chapter 14 その12

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第14章 ヒトの行動 その12

 
ヒトの配偶行動の解説,まず配偶者選好について女性側,男性側それぞれの選好性を扱った.次のテーマは繁殖行動にかかわるコンフリクトになる.通常繁殖のコンフリクトというと明日メス間(男性女性間)のものを指すことが多いが,ここではオス間競争,メス間競争もこれに含めている.扱いとしてはちょっと面白い構成だ.
  

ヒトにおける繁殖コンフリクトと性的コンフリクト
  • 女性へのアクセスをめぐる男性間のコンフリクトは,他の動物と同じくヒトにも普通に見られる.女性をめぐって戦争が起こった事例を見つけるのは簡単だ.しかしヒトにおいては男性へのアクセスをめぐる女性間のコンフリクトも普通に見られる.第13章で見たように社会的な動物においてはメス間の繁殖をめぐるコンフリクトはよく見られるのであり,ヒトもそれに含まれる.

 
ヒトでも配偶価値の高い男性をめぐって女性が競争することがあるというのは日常的な経験からも明らかだ.これについて著者たちは結構深堀している.
 

  • 17世紀までさかのぼったフィンランドのデータを用いたリサーチがある.フィンランドでは息子たちは実家にとどまり嫁を取り,娘は他家に嫁ぐ.このため(複数の男兄弟がとどまることにより)家庭内で非血縁の女性間に繁殖をめぐる競争関係が生じることがある.リサーチャーたちは嫁たちが2年以内に共に子を産んだ場合にはその子の成人に達するまでの死亡率が25%増加することを見つけた(ペタイたち2017).

 
この例は興味深い.これは特定の男性をめぐっての争いではなく,子育てのためのリソースをめぐっての争いということになる.
 

  • 別のリサーチではパートナーのいる女性に他の女性の写真を見せてアンケートをとったものがある.パートナーが魅力的な男性であれば,女性は写真の女性をパートナーと合わせたくないと答えた,また写真の女性が排卵期の場合,パートナーとの性的欲望が増すと答えた(クレムスほか2016).これらの結果は女性が潜在的な繁殖競合を認識し,脅威に応じてパートナーを防衛しようとしていると解釈できる.

 
こちらは行動生態学的にはいわゆる配偶者防衛で日常的によく見かける形の競争ということになるだろう.続いて男女間のコンフリクトが扱われる.これらの知見は進化心理学勃興期に取り上げられて有名なものが多い.
 

  • 男性と女性の間では配偶者の好みや遺伝的利益が異なるので,他の動物と同じくヒトにも(男女間の)性的コンフリクトがあると予想され,そして実際に性的コンフリクトはよく見られる.
  • 男女で異なる繁殖行動には,性的パートナーの数とタイプがある.例えば,男性は女性より売春に金を払いポルノを見る傾向がある.学生を対象にしたアンケート調査では,男性はより多くのセックスの相手を望み,会ったばかりの相手とのセックスへの忌避感が極めて弱い(バスとシュミット1993).別のリサーチでは男女の学生に,過去1年に出合った異性が自分の性的関心を過剰に評価したか過小に評価したかをアンケートした.男性は過剰と過小がほぼ半々だったが,女性はほとんどすべての男性が自分の性的関心を過大評価したと答えた(ハセルトン2003).この手のバイアスはキャンパスで魅力的な異性からいきなり「今日セックスしましょう」と誘われたときの反応を調べたリサーチでも報告されている(女性は誰1人OKしないが,75%の男性は応諾する)(クラークとハットフィールド1989).これはフランスでも追試され同じ結果が再現されている.
  • 明らかに男性は女性より性的行動に積極的だ.セックス相手にどの程度の知性を要求するかを調べたリサーチでは,男性はカジュアルセックスの文脈ではその基準が著しく低い(ケンリックほか1990)ただしこの結果は単純な配偶者への好みとは別の問題だ.長期的な配偶者選択の文脈では男性も女性にある程度高い知性を要求する.つまり男女の違いは短期的配偶の文脈で顕著になるのだ.