Animal Behavior 11th edition Chapter 14 その15

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第14章 ヒトの行動 その15

 
このヒトの行動を扱う第14章も,ヒトのコミュニケーション(言語),繁殖行動と進み,最後に実践的応用が取り上げられている.
 

行動理論の実践的応用

  • 本章を通じて私たちはヒトの行動も動物行動を分析するのと同じレンズで眺められることを見てきた.実際様々なヒトの行動は適応主義者にとってとりわけ興味深い進化的な謎を呈示してくれている.
  • 例えば一部の人々は非血縁者を養子をとる.また二度と行かないようなレストランでもチップをはずむ人もいるし,社会的逸脱者を(そのコストにもかかわらず)罰しようとする人もいる.これらの利他的な行動は血縁淘汰では説明できそうにないが,非常にしばしば観察される.

 
これは動物においても大きなテーマである利他滴行動だが,特にヒトにおいては道徳と絡めてさまざまな論争があるところだ.ここではあまり深入りをしていない.
 

  • また遺伝的要因に帰結できない文化的な行動の差がある.例えば結婚に際してある社会では婚資が行われ,ある社会では持参金となる.これらの婚姻慣習は,進化的な性比理論と整合的であることを思い起こそう.そして調べてみるとこれらの慣習の差が規範形成に関わる単なる偶然によるという考えは否定された.実際には,文化要素は遺伝要素と同じく,家系的に伝承され,繁殖成功とともに文化内に広がっているのだ.

 
ここは文化進化というやはり大きなテーマにかかるところだ.ここも著者たちは深入りを避けている.そして実践的応用に進む.
 

  • 進化生物学者や心理学者はこれらの謎に取り組みはじめている.多くの学生はさらに理解しようとするだけでなくヒト社会向上のためにこれらの知見やアプローチを利用できないかと感じるかもしれない.実際にそういう試みは数多くなされている.

 

  • 例えばヒトのリソース消費と競合について調べることがこの惑星の未来にいかに影響するか考えてみよう,ヒトは自分の子どもを育てるのに十分な量のものを望むだけでなく,(男性の繁殖戦略の1コンポーネントとして)それを多量に持っていることを誇示しようとしたり,(よくある女性の望みとして)多量に持つ金持ちと結婚しようとする.これらの要因が加わって平均的なアメリカ人は1年間に10ヘクタールの土地から取れる産物を消費している.これは世界全体の耕地の1/4がアメリカ人のために使われていることを意味する.
  • おそらく,リソースを家族のためにどう使うかと地位を示したり配偶相手を得るためにどう使うかを進化的なアプローチから熟考することは,将来の過剰人口とリソース利用への問題の対処に役立つだろう.ヒトの行動についての進化的思考は問題への将来的アプローチを提供する.

 
まず気候変動,温暖化について何かできないかということが問われている.これは著者たちの問題意識ということでもあるだろう.温暖化対策の政策策定においてもヒトの本性を前提とした取り組みが重要だということだ.
 

  • しかし私たちはこの進化的アプローチを今すぐヒトの生活の向上に役立てることはできないだろうか? 私たちの行動の適応価を考察したりや他の動物との比較をすることによって私たちのウエルビーイングを向上させられないだろうか? 実は科学の1分野はそういう点から注目を集めており,既に成果を上げている.それは進化医学だ.

 
そして現実に今現在で役立ち始めている応用分野として進化医学が取り上げられることになる.