From Darwin to Derrida その117

 
 

第11章 正しき理由のために戦う その11

 
ヘイグは遺伝型と表現型の間に自然淘汰を通じた再帰的な因果ああると指摘し,その説明に形相因と目的因を使うことを擁護しようとする.そして個々までに情報と意味と解釈から自然淘汰を説明して見せた.ここから目的因が論じられる.
 

目的因と機能

 

故に,同じ物事に対して複数の原因がある.・・・そして物事は互いに他の原因となりうる.たとえばよい体調と運動だ.ただし片方は目的としての原因であり,片方は動きを可能にするという意味での原因だ.

アリストテレス 形而上学

 

 

  • 生物学における目的論的な用語法は様々な説明に表れる.その共通性は物事の存在はその物事が可能にする効果により説明されるという状況にある.ビーバーは嵐から逃れるための巣を作るために樹木を倒し,樹木を倒すために鋭い門歯を持っている.歯の成長は鋭い門歯というゴールを持ち,その機能は樹木を倒すことで,樹木を倒すのは巣を作るためであり,巣は嵐を逃れるために作られる.そしてこれらのすべてはそのビーバーにとって有益だ.
  • 「ヌクレオソームの内部に埋め込まれたDNA配列にアクセスするためには,クロマチンがリモデルされたATPアーゼが必要となる.(メラー,2005)」という言い方は「睫毛は視力を守るためにある(ベーコン.1605)」という言い方と同じように目的論的だ.

 
まずヘイグは生物学的な文脈で様々な目的論的な説明があることを示す.これらはわかりやすいし,よく見かけるが,ナイーブに読むと創造論的になるために一部の学者からは忌避されるものだ.
 
pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

  • 目的因はその効果によって何かを説明するものだ.ものは目的のためにある.意識的な意図がない世界ではこのような説明は拒否される.なぜなら説明されるべきもの(結果)が説明(原因)より先にあるからだ.
  • しかしながら自然淘汰がある世界ではこのような(目的論否定の)議論は成り立たなくなる.なぜなら因果の逆転なしに目的iが手段i+1の原因となりうるからだ.今日あるものが存在するのは,過去似たようなものが生存繁殖に役立ったからだ.そしてそのものは(遺伝があるために)今日同じような効果を上げる.故にタイプとしてのものはその効果を原因として存在するのだ.

 
ここまで再帰的な因果を延々と説いてきた意味のひとつはこの部分にある.因果が再帰的であれば,ある目的のためにある構造があってもおかしくないことになるのだ.ヘイグはここからさらに深く議論していく.