From Darwin to Derrida その158

 

第X章 Vive la différance その1

 
第12章の次は短い不思議な第X章になる.
章題の「Vive la différance」はもちろん「Vive la France(フランス万歳)」からきていると思われる.最初は「違いよ,万歳」ということかと思ったが,ここでヘイグはdifférenceではなくdifféranceと綴っていることに気づいた.これは手元のフランス語辞書には載っていない語になる(フランス語の「違い」は「différence」と綴る).調べてみるとこれはジャック・デリダの造語で日本語では「差延」という訳語が定着しているようだ.だから章題は「差延よ,万歳」ということになろうか.本書の題は「ダーウィンからデリダへ」だが,これまでデリダについてはほとんど登場していなかった(一ヶ所微妙な言及があったのみ).ここでついにデリダ登場ということになる.
なおWikipediaによると「差延」とは「語でも概念でもない」もので,「およそ何者かとして同定されうるものや,自己同一性が成り立つためには,必ずそれ自身との完全な一致からのズレや違い・逸脱などの,常に既にそれに先立っている他者との関係が必要である.このことを示すために、差延という方法が導入された.」ということらしい.さらにこの記事の続きを読んでもなんのことかさっぱりわからないが,とりあえず一旦おいて先に進もう.
 

第X章 差延よ,万歳 その1

 
冒頭はジャック・デリダの「Of Grammatology(原題:De la grammatologie 邦訳:グラマトロジーについて)」から引用されている.グラマトロジーとは文字や表記体系の科学的な研究をさす言葉らしい.

  • 今日の生物学者が細胞内の情報プロセッシングとの関連において文書やプログラムについて言及するのは,この意味においてである.

ジャック・デリダ