From Darwin to Derrida その191

 
ヘイグは第14章において自由について語る.私たちは遺伝にも経験にも完全に拘束されず,意思決定は内的な目的(telos)を持つ「魂」が関与する.そしてこの魂の自由は個人がどのような具体的な道徳規範を実践するかにも影響を与え,だから道徳も時代ともに進歩すると説いた.
   

第14章 自由の過去と将来について その13

 

  • 私たちは単に何かをすることはできない.私たちの選択は私たちの魂の能力,抵抗力によって制限される.この魂の働きはどのようにして理解できるだろうか.標準的な科学的手法は,魂の物質的部分のより詳細を探るということになるだろう.私たちはこの手法により多くの知識を得てきた.しかし魂自体をブラックボックスとして扱い,魂への入力と出力の関係性を理解しようとするやり方の方が,物質的なメカニズムを探ろうとするよりも,私たちの行動の微調整を行うためには役立ってきたというのは偶然ではない.複雑な非線形システムがどのように動くのかを理解するのは非常に難しいのだ. 
  • 音楽は行動を変える.なぜならそれは蝶を撃ったりバスタブをリモデルするやり方より,私たちの魂に直接語りかけるからだ.リズム,メロディ,ハーモニーは(音楽の)パーツではなく,パーツ間の関係性なのだ.魂は生命の対位法の交響曲を奏でる.それらは過去のスタンダードを即興で変える.

 
ではその魂とはどのようなものか.それは脳で働くシステムに違いないが,複雑で非線形的に働くシステムなので,標準的な科学的手法(還元的にシステムの詳細を見極める)で理解することは難しい.だからこれまである程度でも解明できた部分は,魂自体のブラックボックスとして入力と出力の関係から探る方法によってきたのだということになる.説明に音楽を持ってくるのはちょっと面白い趣向だ.