訳書情報 「人類を熱狂させた鳥たち」

 
先日私が書評したティム・バークヘッドによる「Birds and Us」が「人類を熱狂させた鳥たち」という邦題で邦訳出版された.バークヘッドは著名な鳥類学者で行動生態学者だが,最近はいかにも大御所らしい一般向けの啓蒙書(重厚な鳥類学史,鳥類の行動生態についての総説本など)を次々と執筆しており,本書もそれに連なるもので,鳥類と人類の関わりの歴史が扱われている.
冒頭から新石器時代の洞窟壁画=フィールドガイド説を提示したり,エジプトではトト神とされるトキのミイラを大量に作るために飼育施設があった話を披露したりして楽しい.そこからアリストテレス,プリニウスの考察,ヨーロッパ中世の鷹狩りとフリードリッヒ2世の炯眼,レオナルド・ダ・ヴィンチの解剖学,英国チューダー朝の狩猟と害獣としての駆除の歴史が扱われる.さらに鳥類学の曙(17世紀のウィグルビーとレイの業績を紹介している),海鳥を利用するファロー島文化,ダーウィンの与えた鳥類学へのインパクト,近代における鳥類の標本蒐集という名の大量殺戮,バードウォッチングの勃興,エソロジーと行動生態学,そして第3の大量絶滅と保全というトピックが描かれる.
いかにも大家の手になる悠然とした本で,鳥好き,歴史好きにはとてもうれしい一冊だと思う.
 
私の原書書評
shorebird.hatenablog.com

 
バークヘッドの総説本
 
鳥の卵についての本.

 
同原書 私の書評はhttp://d.hatena.ne.jp/shorebird/20160824
 
鳥類学説史.ダーウィン以降を扱う.私の書評はhttp://d.hatena.ne.jp/shorebird/20140418
 
その前著になるアリストテレスまでさかのぼる鳥類学の歴史. 
鳥の感覚を扱った本,私の書評はhttp://d.hatena.ne.jp/shorebird/20130409
 
同原書