The Gene’s-Eye View of Evolution その42

 
 

第2章 「利己的な遺伝子」の定義と洗練化 その16

  
概念整理を行う第2章.「遺伝子」「レプリケータとヴィークル」に続く3番目のテーマは「ミーム」になる.
 

2-4 ミーム その1

 
ミームはドーキンスの造語だが,類似の概念の提唱の歴史は古い.オーグレンはまず歴史から始める.
 

  • ダーウィンの理論を文化に当てはめようという試みは「種の起源」の出版の直後から始まった.1880年にアメリカの哲学者であり,心理学教育の先駆者であるウィリアム・ジェームズはこう書いている.

 
ウィリアムズ・ジェームズは19世紀から20世紀初頭に活躍したアメリカの哲学者,心理学者.プラグマティズムの立場に立ち,意識の理論を提唱したことで知られる.心理学に関する主要著書には「The Principles of Psychology」がある.
 

 

  • これまで私の心に思い浮かんだことはなかった注目すべき類似がある.それは社会進化と人種の心的成長という事実と,ダーウィン氏が説明した動物学的進化の間にある類似だ.

 

  • このジェームズのコメントには,ハーバート・スペンサーにより引き起こされた「偉人」についての論争という文脈が背景にある.

 
ここで引用されているのはアトランティック誌に寄稿した「Great men, great thoughts, and the environment」(1890)というエッセイの冒頭部分の文章だ.つまり,文化を進化的に捉えようという歴史は19世紀からあるということになる.ここでいうgreat menとは社会の変革や進歩を可能にしてきた偉人という意味になり,ジェームズ的には時折現れる偉人は精神的な突然変異であり,それが社会の中で文化的な淘汰を受けて影響が広がっていくと捉えていたことになる..
 
www.theatlantic.com

 

  • それ以来,多くの者が文化進化についてより一般的な記述を試みてきた.
  • 初期の現代的取り組みには集団遺伝学者カヴァリ=スフォルツァとフェルドマンによるもの,人類学者ボイドと生物学者リチャーソンによるものがある.それが初めてでもなければ最も影響力があったともいえないが,ミーム学は文化的変化の探求に進化理論の洞察を使う試みとして最も有名なものだ.

 
カヴァリ=スフォルツァとフェルドマンについては「文化伝達と進化(1981)」,ボイドとリチャーソンについては「文化と進化過程(1985)」が参照されている.これらは「利己的な遺伝子」よりあとの出版ということになる.
 

 
ボイドとリチャーソンの一般向けの文化進化本としては2005年のこちらがある. 
ミーム類似概念ということになると,EOウィルソンとラムズデンのカルチャゲンも有名だが,オーグレンは特に取り上げてはいない.
  
オーグレンはここから「ミーム」に進む.