読書中 「Narrow Roads of Geneland Vol.3」第4章 第4論文

第4論文は性の進化に関するもの

Narrow Roads of Gene Land: The Collected Papers of W.D. Hamilton: Last Words (Narrow Roads of Geneland: The Collected Papers of W.D. Hamil)

Narrow Roads of Gene Land: The Collected Papers of W.D. Hamilton: Last Words (Narrow Roads of Geneland: The Collected Papers of W.D. Hamil)

Cytoplasmic Fusion and the Nature of Sexes


細胞質内にある遺伝子(ミトコンドリアとか葉緑体の遺伝子)にとっては配偶子が融合したときにどちらが生き残るかの争いとなる.そうすると当然相手を攻撃するものが有利になり広まる.このような攻撃が核遺伝子にとってコストになるのであれば,核遺伝子によるこれ(細胞質オルガネルの遺伝子)の抑制が進化するだろう.
どのように進化するかをモデリング
抑制タイプと非抑制タイプがあるとして接合の双方が抑制タイプであると抑制コストがかかり,双方が非抑制タイプであると細胞質コンフリクトコストかかるとする.すると典型的なヘテロ有利な状況になり.双方のタイプがコストをパラメーターとして併存する.
ここで融合時に自分とタイプの異なるものを選好する選好遺伝子を考える.選り好みにコストがかかるとしてこの選好遺伝子の侵入条件と固定条件を計算する.この選好遺伝子は選り好みコストが一定以下であれば侵入でき,固定する.
つづいて選好遺伝子が抑制遺伝子,非抑制遺伝子と連鎖した場合もほぼ同じ結論になることを示す.


次に抑制遺伝子の比率がどうなるかをモデルにより示す.選好遺伝子がある場合には選り好み機会が増えるとほぼこの比率が0.5になることを示す.(つまりフィッシャーのいう性比1:1に近づく)


ここから細胞質遺伝子の発現を押さえるものと押さえないものが0.5で発現する.また最も簡単な方法は抑制型は細胞質を小さくして異型接合型になることである.そしてこれは細胞質を融合させずに接合するゾウリムシ類では不要なので,彼らの性はこのよう形ではなく,単に近交弱性回避のためのmating typeであることを示す.


ここからはいろんな議論
鞭毛虫の中には葉緑体は+タイプから,ミトコンドリアは-タイプから遺伝するものがある.
イーストは配偶体が融合するが,そこから芽が出る場合にはどちらかの細胞質由来のものになる.


繊毛虫をいろいろ調べると独立に2回以上2値の有性が進化したことがわかる.また進化途中と思われる現象も観察されている.

一部の粘菌は2値以上の性でコンフリクトを押さえているがこれは近交のためにこうなっていると説明できる.


久しぶりに堅い論文を読めて満足.