書評
戦争と交渉の経済学:人はなぜ戦うのか作者:クリストファー・ブラットマン草思社Amazon 本書は経済学者かつ政治学者であるクリストファー・ブラットマンによるなぜ戦争が生じるのか,どうすれば防げるのかを扱った一冊.基本的に,「戦争は双方ともにコスト…
The Genetic Book of the Dead: A Darwinian Reverie (English Edition)作者:Dawkins, RichardApolloAmazon 本書はリチャード・ドーキンスの最新刊.ドーキンスはすでに83歳だが,なお執筆意欲高く本を出してくれるのには感謝しかない.ドーキンスといえば「…
なぜ人はアートを楽しむように進化したのか作者:アンジャン・チャタジー草思社Amazon 本書はアートを進化的に考察した本になる*1.著者のアンジャン・チャタジーは神経科学者で,神経美学(neuroaethetics)の研究者でもある.私はあまりよく知らなかったが…
現代思想2024年10月臨時増刊号 総特集=ダニエル・C・デネット――1942-2024 意識と進化の哲学作者:木島泰三,戸田山和久,飯盛元章,吉川浩満,山口尚,高崎将平青土社Amazon ダニエル・デネットは意識,自由意思*1,ダーウィニズムを扱った哲学者であり,新無神論…
わたしは哺乳類です: 母乳から知能まで、進化の鍵はなにか作者:リアム・ドリューインターシフトAmazon 本書は,哺乳類についてその特徴と進化を語った一冊.著者のリアム・ドリューは神経生物学の研究者であった経歴を持つサイエンスライター.この本はかな…
哺乳類の興隆史――恐竜の陰を出て、新たな覇者になるまで作者:スティーブ・ブルサッテみすず書房Amazon 本書は古生物学者スティーブ・ブルサッテによる哺乳類を語る一冊.ブルサッテは当初恐竜学者としてキャリアをスタートさせており,2019年に恐竜の進化史…
ウォード博士の驚異の「動物行動学入門」 動物のひみつ――争い・裏切り・協力・繁栄の謎を追う作者:アシュリー・ウォードダイヤモンド社Amazon 本書は動物行動学者アシュリー・ウォードによる動物の社会生活に焦点をおいた一般向けの科学書である.ウォードは…
ダーウィン-「進化論の父」の大いなる遺産 (中公新書 2813)作者:鈴木 紀之中央公論新社Amazon 本書は進化生物学者鈴木紀之によるダーウィンについての一冊.ダーウィンを語る本は,ダーウィンイヤー(生誕200年,種の起源出版150年)であった2009年辺りにず…
特殊害虫から日本を救え (集英社新書)作者:宮竹貴久集英社Amazon 本書はミカンコミバエ,ウリミバエなどの日本における特殊害虫(外来侵入種である害虫)根絶についての一冊で,その歴史(著者はこれを戦史と呼んでいる),現状,教訓が語られている.著者は…
植物たちの護身術: 被食防御の生態学 (種生物学シリーズ)文一総合出版Amazon 本書は種生物学会による種生物シリーズの最新刊.テーマは植物の対植食者防御(被食防御戦略)で,前々刊の「植物の行動生態学」の続編あるいは各論という性格も合わせ持つ.動物…
WEIRD「現代人」の奇妙な心理 上 経済的繁栄、民主制、個人主義の起源作者:ジョセフ・ヘンリック,今西康子白揚社AmazonWEIRD(ウィアード)「現代人」の奇妙な心理 下:経済的繁栄、民主制、個人主義の起源作者:ジョセフ・ヘンリック白揚社Amazon 本書は文化…
ダーウィンの進化論はどこまで正しいのか?~進化の仕組みを基礎から学ぶ~ (光文社新書)作者:河田 雅圭光文社Amazon 本書は進化生物学者河田雅圭による進化の一般向けの解説書になる.河田は新進気鋭の学者であった1990年に「はじめての進化論」を書いてい…
善と悪の生物学(上) 何がヒトを動かしているのか作者:ロバート・M・サポルスキーNHK出版Amazon善と悪の生物学(下) 何がヒトを動かしているのか作者:ロバート・M・サポルスキーNHK出版Amazon 本書は,ストレスについての神経生理と行動の研究者で,アフリ…
進化精神病理学 心理学と精神医学の統合的アプローチ作者:マルコ・デル・ジュディーチェ福村出版Amazon 本書は進化的視点から精神病理学の包括的な枠組みを構築する試みを解説する一冊.著者のマルコ・デル・ジュディーチェは進化心理学者で,パーソナリティ…
技術革新と不平等の1000年史 上作者:ダロン アセモグル,サイモン ジョンソン早川書房Amazon技術革新と不平等の1000年史 下作者:ダロン アセモグル,サイモン ジョンソン早川書房Amazon 本書はダロン・アセモグルとサイモン・ジョンソンという2人の経済学者に…
心理学を遊撃する作者:山田祐樹ちとせプレスAmazon 本書は認知心理学者山田佑樹による,「心理学の再現性問題」についてそれをリサーチ対象として捉えて突っ込んでいった結果を報告してくれる書物である. 「心理学の再現性問題」は,心理学者にとって自分の…
生き物の「居場所」はどう決まるか 攻める、逃げる、生き残るためのすごい知恵 (中公新書)作者:大崎直太中央公論新社Amazon 本書は生態学者大崎直太による,生物の「ニッチ」がどのように決まるのかの学説史についての一冊.生物にはそれぞれの生息場所あるい…
ゴキブリ・マイウェイ この生物に秘められし謎を追う作者:大崎 遥花山と溪谷社Amazon 本書はクチキゴキブリの翅の食い合いをリサーチしている若手研究者の自伝的研究物語.リサーチのテーマはゴキブリの配偶ペアの翅の食い合いという極めて興味深いものだ.4…
宗教の起源作者:ロビン・ダンバー,小田哲白揚社Amazon 本書はダンバー数で有名な進化心理学者ロビン・ダンバーが宗教を語る一冊.これまでに宗教を進化的に説明するものとしては,(宗教が信者に誤信念を抱かせ,儀式等にコストをかけさせることから個体にと…
なぜオスとメスは違うのか―性淘汰の科学作者:マーリーン・ズック,リー・W・シモンズ大修館書店Amazon 本書はハミルトンとともに性淘汰のハミルトン=ズック仮説を提唱したことで有名なマーリーン・ズックとリー・シモンズによる性淘汰の解説書だ.ズックは…
ダーウィンの呪い (講談社現代新書)作者:千葉聡講談社Amazon 本書は千葉聡による「ダーウィンの自然淘汰理論」(特にそれが社会にどのような含意を持つかについての誤解や誤用)が人間社会に与えた負の側面(本書では「呪い」と呼ばれている)を描く一冊.当…
なぜ私たちは友だちをつくるのか--進化心理学から考える人類にとって一番重要な関係作者:ロビン ダンバー青土社Amazon 本書はダンバー数と言語のゴシップ起源説で有名なロビン・ダンバーによるヒトの社会的ネットワーク(特に親しい友人関係)についての本…
「協力」の生命全史―進化と淘汰がもたらした集団の力学作者:ニコラ・ライハニ東洋経済新報社Amazon 本書は行動生態学者でヒトの協力のリサーチも行っているニコラ・ライハニによる協力の進化を扱った一般向けの科学啓蒙書だ.オーソドックスに協力にかかる進…
人を動かすルールをつくる――行動法学の冒険作者:ベンヤミン・ファン・ロイ,アダム・ファインみすず書房Amazon 本書はヒトがルールに対してどのように反応して行動するかという行動科学的視点にたって法(特に立法政策)を考える試み*1についての一般向けの解…
植物の超階層生物学: ゲノミクス×フェノミクス×生態学でひもとく多様性 (種生物学研究 43号)文一総合出版Amazon 本書は種生物学会による種生物シリーズの最新刊.最近の同シリーズのテーマは共進化と行動生態学ということで進化生態学が軸になっていたが,今…
葉を見て枝を見て: 枝葉末節の生態学 (共立スマートセレクション)作者:喜八郎, 菊沢共立出版Amazon 本書は菊沢喜八郎による「植物が枝と葉をどのように展開するか」についての進化生態学的な探索を扱った一冊.私にとって菊沢喜八郎という名は今は亡き蒼樹書…
運動の神話 上作者:ダニエル E リーバーマン早川書房Amazon運動の神話 下作者:ダニエル E リーバーマン早川書房Amazon 本書は進化生物学者ダニエル・リーバーマンによる運動(本書では特に意識的に身体活動を目的にして行うエクササイズを指す)についての…
Darwin's Most Wonderful Plants: A Tour of His Botanical Legacy (English Edition)作者:Thompson, KenThe University of Chicago PressAmazon 本書は植物学者ケン・トンプソンによるダーウィンの植物本についての一般向けの解説書になる.ダーウィンの著…
歌うサル: テナガザルにヒトのルーツをみる (共立スマートセレクション 37)作者:井上 陽一共立出版Amazon 本書は井上陽一によるテナガザルの研究物語だ.井上は高校教師をしながらボルネオに通いテナガザルを研究し続けたという経歴を持つ異色のリサーチャー…
ヒトの原点を考える: 進化生物学者の現代社会論100話作者:長谷川 眞理子東京大学出版会Amazon 本書は長谷川眞理子によるエッセイ集.雑誌「財界」2018年9月以降に連載されているコラムの100回分を再構成の上一冊にまとめたものだ.内容的にはヒトとはどうい…