書評

書評 「アンモナイト学入門」

アンモナイト学入門:殻の形から読み解く進化と生態作者:相場 大佑誠文堂新光社Amazon 本書は古生物学者相場大佑によるアンモナイトについての解説書だ.アンモナイトといえば,中生代を代表する生物で,その化石は古生代の三葉虫と並んで教科書にも載る「示…

書評 「進化の原理と基礎」

進化の原理と基礎: 計算機シミュレーションで理解する進化の物理作者:市橋 伯一,金井 雄樹東京大学出版会Amazon 本書は(生物進化だけではない)より広い意味の進化過程を数理的に解説する教科書になる.数理過程もコンピュータシミュレーションの利用が大き…

書評 「進化生物学」

進化生物学 DNAで学ぶ哺乳類の多様性作者:佐藤淳東京大学出版会Amazon 本書は進化生物学者佐藤淳による一般向けの進化生物学の解説書.題名は「進化生物学」と大きいが,「DNAで学ぶ哺乳類の多様性」という副題にあるように基本的に哺乳類の分子系統解析や系…

書評 「美しく残酷なヒトの本性」

美しく残酷なヒトの本性 遺伝子、言語、自意識の謎に迫る (PHP新書)作者:長谷川 眞理子PHP研究所Amazon 本書は長谷川眞理子によるヒトの本性についてのエッセイにまとめたもの.もとは月刊誌「Voice」の巻頭言として2021年から2023年にかけて連載されたもの…

書評 「恐竜学」

恐竜学東京大学出版会Amazon 本書は日本人研究者により恐竜学の教科書として書かれた一冊.私が子供の頃最初に恐竜に触れた時には日本には恐竜の化石産地はなく,紹介されるほとんどの恐竜は北アメリカのものだった.現在では日本を含む世界各地で恐竜の化石…

書評 「世界は進化に満ちている」

世界は進化に満ちている (岩波科学ライブラリー)作者:深野 祐也岩波書店Amazon 本書は深野祐也による現在進行中で身近に観察できる進化現象を解説する一冊.深野は農学系の研究者だが,リサーチの対象範囲が進化生物学分野全体に広がり,目の付け所が鋭く一…

書評 「生物学を進化させた男 エドワード・O・ウィルソン」

生物学を進化させた男エドワード・O・ウィルソン作者:リチャード・ローズ草思社Amazon 本書はノンフィクションライターであるリチャード・ローズ*1の手になるEOウィルソンの伝記である.伝記への着手はウィルソンの生前からなされており,ウィルソンへのイン…

書評 「進化という迷宮」

進化という迷宮 隠れた「調律者」を追え (講談社現代新書)作者:千葉聡講談社Amazon 本書は千葉聡による進化の必然と偶然をめぐる一冊.副題は「隠れた『調律者』を追え」とされていて,この「調律者」というのは進化に置ける「必然」(つまり自然淘汰による…

書評 「Birds, Sex & Beauty」

Birds, Sex and Beauty: The Extraordinary Implications of Charles Darwin's Strangest Idea (English Edition)作者:Ridley, MattHarperAmazon 本書は科学ジャーナリスト,サイエンスライターのマット・リドレーによる性淘汰を扱う一冊.リドレーは自身オ…

書評 「ネコはどうしてニャアと鳴くの?」

ネコはどうしてニャアと鳴くの?:すべてのネコ好きに贈る魅惑のモフモフ生物学作者:Losos,Jonathan B化学同人Amazon 本書はカリブ海のアノールトカゲのリサーチで有名な進化生物学者ジョナサン・ロソスによる「ネコの進化生物学」本だ.ロソスは自身かなり…

書評 「タイムカプセルの開き方」

タイムカプセルの開き方: 博物館標本が紬ぐ生物多様性の過去・現在・未来 (種生物学シリーズ)文一総合出版Amazon 本書は種生物学会シリーズの最新刊で,テーマは博物館標本を用いたリサーチになる.ある程度古いものもふくめてDNAの解読がかなり安価に行える…

書評 「僕には鳥の言葉がわかる」

僕には鳥の言葉がわかる作者:鈴木俊貴小学館Amazon 本書はシジュウカラのさえずりや鳴き声の意味を次々に解き明かしてきた進化生物学者鈴木俊貴による自伝的研究物語的な一冊. シジュウカラは広くユーラシアに分布する森林性の鳥だが,日本でバードウォッチ…

書評 「虫・全史」

虫・全史 1000京匹の誕生、進化、繁栄、未来作者:スティーブ・ニコルズ日経ナショナル ジオグラフィックAmazon 本書はスティーブ・ニコルズによる昆虫についての一冊.邦訳のタイトルからは古生代からの昆虫の進化史が延々と語られているような印象だが,進…

書評 「戦争と交渉の経済学」

戦争と交渉の経済学:人はなぜ戦うのか作者:クリストファー・ブラットマン草思社Amazon 本書は経済学者かつ政治学者であるクリストファー・ブラットマンによるなぜ戦争が生じるのか,どうすれば防げるのかを扱った一冊.基本的に,「戦争は双方ともにコスト…

書評 「The Genetic Book of the Dead」

The Genetic Book of the Dead: A Darwinian Reverie (English Edition)作者:Dawkins, RichardApolloAmazon 本書はリチャード・ドーキンスの最新刊.ドーキンスはすでに83歳だが,なお執筆意欲高く本を出してくれるのには感謝しかない.ドーキンスといえば「…

書評 「なぜ人はアートを楽しむように進化したのか」

なぜ人はアートを楽しむように進化したのか作者:アンジャン・チャタジー草思社Amazon 本書はアートを進化的に考察した本になる*1.著者のアンジャン・チャタジーは神経科学者で,神経美学(neuroaethetics)の研究者でもある.私はあまりよく知らなかったが…

書評 現代思想 総特集 「ダニエル・C・デネット 1942-2024 意識と進化の哲学」 2024年10月臨時増刊号

現代思想2024年10月臨時増刊号 総特集=ダニエル・C・デネット――1942-2024 意識と進化の哲学作者:木島泰三,戸田山和久,飯盛元章,吉川浩満,山口尚,高崎将平青土社Amazon ダニエル・デネットは意識,自由意思*1,ダーウィニズムを扱った哲学者であり,新無神論…

書評 「わたしは哺乳類です」

わたしは哺乳類です: 母乳から知能まで、進化の鍵はなにか作者:リアム・ドリューインターシフトAmazon 本書は,哺乳類についてその特徴と進化を語った一冊.著者のリアム・ドリューは神経生物学の研究者であった経歴を持つサイエンスライター.この本はかな…

書評 「哺乳類の興隆史」

哺乳類の興隆史――恐竜の陰を出て、新たな覇者になるまで作者:スティーブ・ブルサッテみすず書房Amazon 本書は古生物学者スティーブ・ブルサッテによる哺乳類を語る一冊.ブルサッテは当初恐竜学者としてキャリアをスタートさせており,2019年に恐竜の進化史…

書評 「ウォード博士の驚異の『動物行動学入門』 動物のひみつ」

ウォード博士の驚異の「動物行動学入門」 動物のひみつ――争い・裏切り・協力・繁栄の謎を追う作者:アシュリー・ウォードダイヤモンド社Amazon 本書は動物行動学者アシュリー・ウォードによる動物の社会生活に焦点をおいた一般向けの科学書である.ウォードは…

書評 「ダーウィン:『進化論の父』の大いなる遺産」

ダーウィン-「進化論の父」の大いなる遺産 (中公新書 2813)作者:鈴木 紀之中央公論新社Amazon 本書は進化生物学者鈴木紀之によるダーウィンについての一冊.ダーウィンを語る本は,ダーウィンイヤー(生誕200年,種の起源出版150年)であった2009年辺りにず…

書評 「特殊害虫から日本を救え」

特殊害虫から日本を救え (集英社新書)作者:宮竹貴久集英社Amazon 本書はミカンコミバエ,ウリミバエなどの日本における特殊害虫(外来侵入種である害虫)根絶についての一冊で,その歴史(著者はこれを戦史と呼んでいる),現状,教訓が語られている.著者は…

書評 「植物たちの護身術」

植物たちの護身術: 被食防御の生態学 (種生物学シリーズ)文一総合出版Amazon 本書は種生物学会による種生物シリーズの最新刊.テーマは植物の対植食者防御(被食防御戦略)で,前々刊の「植物の行動生態学」の続編あるいは各論という性格も合わせ持つ.動物…

書評 「WEIRD 「現代人」の奇妙な心理」

WEIRD「現代人」の奇妙な心理 上 経済的繁栄、民主制、個人主義の起源作者:ジョセフ・ヘンリック,今西康子白揚社AmazonWEIRD(ウィアード)「現代人」の奇妙な心理 下:経済的繁栄、民主制、個人主義の起源作者:ジョセフ・ヘンリック白揚社Amazon 本書は文化…

書評 「ダーウィンの進化論はどこまで正しいのか?」

ダーウィンの進化論はどこまで正しいのか?~進化の仕組みを基礎から学ぶ~ (光文社新書)作者:河田 雅圭光文社Amazon 本書は進化生物学者河田雅圭による進化の一般向けの解説書になる.河田は新進気鋭の学者であった1990年に「はじめての進化論」を書いてい…

書評 「善と悪の生物学」

善と悪の生物学(上) 何がヒトを動かしているのか作者:ロバート・M・サポルスキーNHK出版Amazon善と悪の生物学(下) 何がヒトを動かしているのか作者:ロバート・M・サポルスキーNHK出版Amazon 本書は,ストレスについての神経生理と行動の研究者で,アフリ…

書評 「進化精神病理学」

進化精神病理学 心理学と精神医学の統合的アプローチ作者:マルコ・デル・ジュディーチェ福村出版Amazon 本書は進化的視点から精神病理学の包括的な枠組みを構築する試みを解説する一冊.著者のマルコ・デル・ジュディーチェは進化心理学者で,パーソナリティ…

書評 「技術革新と不平等の1000年史」

技術革新と不平等の1000年史 上作者:ダロン アセモグル,サイモン ジョンソン早川書房Amazon技術革新と不平等の1000年史 下作者:ダロン アセモグル,サイモン ジョンソン早川書房Amazon 本書はダロン・アセモグルとサイモン・ジョンソンという2人の経済学者に…

書評 「心理学を遊撃する」

心理学を遊撃する作者:山田祐樹ちとせプレスAmazon 本書は認知心理学者山田佑樹による,「心理学の再現性問題」についてそれをリサーチ対象として捉えて突っ込んでいった結果を報告してくれる書物である. 「心理学の再現性問題」は,心理学者にとって自分の…

書評 「生き物の「居場所」はどう決まるか」

生き物の「居場所」はどう決まるか 攻める、逃げる、生き残るためのすごい知恵 (中公新書)作者:大崎直太中央公論新社Amazon 本書は生態学者大崎直太による,生物の「ニッチ」がどのように決まるのかの学説史についての一冊.生物にはそれぞれの生息場所あるい…