書評

書評 「ストーリーが世界を滅ぼす」

ストーリーが世界を滅ぼす―物語があなたの脳を操作する作者:ジョナサン・ゴットシャル東洋経済新報社Amazon 本書は進化的視点から文学を論じる著書を持つ英文学者であるジョナサン・ゴットシャルによる,物語*1がヒトの認知にとってどのような意味を持ち,そ…

書評 「Dancing Cockatoos and the Dead Man Test」

Dancing Cockatoos and the Dead Man Test: How Behavior Evolves and Why It Matters (English Edition)作者:Zuk, MarleneW. W. Norton & CompanyAmazon 本書は性淘汰のパラサイト仮説(ハミルトン=ズック仮説)で有名な行動生態学者マーリーン・ズックに…

書評 「食虫植物」

食虫植物 進化の迷宮をゆく (岩波科学ライブラリー)作者:福島 健児岩波書店Amazon 本書は食虫植物を扱った岩波科学ライブラリーの一冊.食虫植物といえばハエトリソウやモウセンゴケやウツボカズラが頭に浮かぶ.彼等は窒素を(根からの吸収ではなく)虫を捕…

書評 「Speech!」

SPEECH! How Language Made Us Human (English Edition)作者:Prentis, SimonhogsaloftAmazon 本書は通訳兼翻訳家(何カ国語も扱うが特に日本語通訳としてのキャリアが長い)であるサイモン・プレンティスによる言語が使えることによりヒトは何を成し遂げてき…

書評 「カニの歌を聴け」

カニの歌を聴け: ハクセンシオマネキの恋の駆け引き (新・動物記 5)作者:竹下 文雄京都大学学術出版会Amazon 本書は京都大学学術出版会の新・動物記シリーズの一冊.著者は行動生態学者の竹下文雄で,ハクセンシオマネキの性淘汰の研究物語が語られている.…

書評 「人類とイノベーション」

人類とイノベーション:世界は「自由」と「失敗」で進化する (NewsPicksパブリッシング)作者:マット・リドレーニューズピックスAmazon 本書はサイエンスライターマット・リドレーによるイノベーションを扱った一冊.リドレーは「赤の女王」,「徳の起源」,…

書評 「なぜヒトだけが言語を話せるのか」

なぜヒトだけが言葉を話せるのか: コミュニケーションから探る言語の起源と進化作者:トム・スコット=フィリップス東京大学出版会Amazon 本書は認知と文化が専門の認知科学者,心理学者であるトム・スコット=フィリップス*1によるヒトの言語の進化と起源に関…

書評 「博士の愛したジミな昆虫」

博士の愛したジミな昆虫 (岩波ジュニア新書)岩波書店Amazon 本書は岩波ジュニア新書の一冊で,10人の昆虫博士たちがジミな昆虫についての自分の研究を中高校生向けに語るアンソロジー.内容もかなり高度なものまでわかりやすく語られていて,なかなか面白い…

書評 「The Parasitic Mind」

The Parasitic Mind: How Infectious Ideas Are Killing Common Sense作者:Saad, GadRegnery PublishingAmazon 本書は進化心理学者ガッド・サードによる一冊.ガッド・サードは消費者心理やマーケティングを進化心理学的に分析考察する業績で知られている.…

書評 「進化政治学と平和」

進化政治学と平和 科学と理性に基づいた繁栄作者:伊藤 隆太芙蓉書房出版Amazon 本書は進化政治学者伊藤隆太による3冊目の進化政治学本になる.伊藤は1冊目の「進化政治学と国際政治理論」では国政政治理論の古典的リアリズムを進化心理学的知見を基礎に進化…

書評 「証拠法の心理学的基礎」

証拠法の心理学的基礎作者:マイケル・J・サックス,バーバラ・A・スペルマン日本評論社Amazon 本書は英米法の中の証拠法について,心理学的な視点から考察を行う本だ.心理学と法学のコンシリエンス的な内容で面白そうだし,海外ドラマの法廷ものを観るときに…

書評 「進化と人間行動 第2版」

進化と人間行動 第2版作者:長谷川 寿一,長谷川 眞理子,大槻 久東京大学出版会Amazon 本書は進化心理学,人間行動進化学の(日本語で書かれた)最も優れた入門書として読まれ続けてきた本*1の22年ぶりの改訂版である.著者には初版の長谷川夫妻に大槻久が加わ…

書評 「Birds and Us」

Birds and Us: A 12,000 Year History, from Cave Art to Conservation (English Edition)作者:Birkhead, TimPenguinAmazon 本書はティム・バークヘッドによる鳥類と人類のかかわりについての本になる.バークヘッドは鳥類の性淘汰をめぐる研究で有名な鳥類…

書評 「寄生虫進化生態学」

寄生虫進化生態学作者:Robert Poulin共立出版Amazon 本書は寄生虫(本書の定義は「寄生性の原生動物と後生動物」で細菌やウイルスを含まない)についての進化生態学の教科書である.著者は寄生虫学者のロバート・ポーリン.原題は「Evolutionary Ecology of …

書評 「社会科学の哲学入門」

社会科学の哲学入門作者:吉田敬勁草書房Amazon 本書は科学哲学の中で特に社会科学の哲学についての入門書だ.私は社会科学についても哲学についてもあまり詳しくはない.そして最近読んだ進化政治学の本においては著者が実在論にずいぶんコミットしているも…

書評 「野ネズミとドングリ」

野ネズミとドングリ: タンニンという毒とうまくつきあう方法作者:島田 卓哉東京大学出版会Amazon 本書は島田卓哉による日本の野ネズミとドングリのかかわりについての研究物語.丁寧に研究の道筋が語られている.なお本書において「ドングリ」はブナ科コナラ…

書評 「「誤差」「大間違い」「ウソ」を見分ける統計学」

「誤差」「大間違い」「ウソ」を見分ける統計学作者:デイヴィッド・サルツブルグ共立出版Amazon 本書は「統計学を拓いた異才たち」の著者デイヴィッド・サルツブルグによる一冊.「統計学を拓いた異才たち」は統計学史を中心に一般向けに逸話をたくさん交え…

書評 「魚にも自分がわかる」

魚にも自分がわかる ──動物認知研究の最先端 (ちくま新書)作者:幸田正典筑摩書房Amazon 本書は最近毎年のように動物行動学会でホンソメワケベラの認知能力(特に鏡像自己認知能力)について驚きの発表を行っている幸田正典の手になる一冊.まさにそれら一連…

書評 「進化政治学と戦争」

進化政治学と戦争 自然科学と社会科学の統合に向けて作者:伊藤 隆太芙蓉書房出版Amazon 本書は社会科学と自然科学のコンシリエンスを追求する進化政治学者伊藤隆太の2冊目の著書になり,進化政治学とはどのような営みなのか,そしてそれは戦争についてどう説…

書評 「NOISE」

NOISE 上 組織はなぜ判断を誤るのか?作者:ダニエル カーネマン,オリヴィエ シボニー,キャス R サンスティーン早川書房AmazonNOISE 下 組織はなぜ判断を誤るのか?作者:ダニエル カーネマン,オリヴィエ シボニー,キャス R サンスティーン早川書…

書評 「恐竜研究の最前線」

恐竜研究の最前線: 謎はいかにして解き明かされたのか作者:マイケル・J・ベントン創元社Amazon 本書はマイケル・ベントンによる一般向けの恐竜本である.ベントンは様々な業績のある恐竜学者であり,最近では恐竜化石にメラノソームの痕跡を見いだし,それま…

書評 「進化の技法」

進化の技法――転用と盗用と争いの40億年作者:ニール・シュービンみすず書房Amazon 本書はティクターリクの発見で有名な古生物学者ニール・シュービンによる生物の革新的形質がどのように進化していくのかを,用途の転用,発生メカニズムと進化拘束,DNA配列,…

書評 「不平等の進化的起源」

不平等の進化的起源: 性差と差別の進化ゲーム作者:ケイリン・オコナー大月書店Amazon 本書は,科学哲学者でありかつ進化ゲーム理論家であるケイリン・オコナーによる進化ゲームの均衡解として(差別的偏見がなかったとしても)社会的カテゴリー間の不平等を…

書評 「武器を持たないチョウの戦い方」

武器を持たないチョウの戦い方: ライバルの見えない世界で (新・動物記 2)作者:竹内 剛京都大学学術出版会Amazon 本書は京都大学学術出版会の「新・動物記」シリーズの一冊.著者によるチョウの行動の研究物語だが,その中心になるのはこれまでナワバリをめ…

書評 「Flights of Fancy」

Flights of Fancy: Defying Gravity by Design and Evolution (English Edition)作者:Dawkins, RichardApolloAmazon 本書はリチャード・ドーキンスによる飛翔についての本.進化適応としての飛翔,ヒトのデザインによる飛翔をともに扱っている.ここしばらく…

書評 「花と動物の共進化をさぐる」

花と動物の共進化をさぐる: 身近な野生植物に隠れていた新しい花の姿文一総合出版Amazon 本書は種生物学会シリーズの最新刊.テーマは送粉をめぐる植物と動物の共進化になっており,特定の共生関係の研究事例が数多く収録されている. 第1章はこの分野の大御…

書評 「仲直りの理」

仲直りの理作者:大坪庸介ちとせプレスAmazon 本書は進化心理学者大坪庸介による仲直りについての本である.仲直りの進化的な意味,究極因と至近因が非常に丁寧に解説されている. 「はじめに」において著者は夏目漱石の「坊ちゃん」における主人公と山嵐の間…

書評 「Rationality」

Rationality: What It Is, Why It Seems Scarce, Why It Matters作者:Pinker, StevenAllen LaneAmazon 本書はピンカーによる「合理性」についての一冊.ピンカーは「The Better Angels of Our Nature(邦題:暴力の人類史)」,「Enlightenment Now(邦題:2…

書評 「読む・打つ・書く」

読む・打つ・書く: 読書・書評・執筆をめぐる理系研究者の日々作者:三中 信宏東京大学出版会Amazon 本書は三中信宏による理系研究者のための読書論,書評論,そして執筆論の本だ.一気呵成に迸るように書かれた文章は迫力十分で,そしてすべては自分の(研究…

書評 「Life Changing」

Life Changing:ヒトが生命進化を加速する作者:ヘレン・ピルチャー化学同人Amazon 本書はヒトが生物世界にどのような影響を与えているのか(本書では「ポスト自然史」と呼ばれている)についての本だ.著者は細胞生物学の博士号を持つサイエンスライターであ…