書評

書評 「ダーウィンの進化論はどこまで正しいのか?」

ダーウィンの進化論はどこまで正しいのか?~進化の仕組みを基礎から学ぶ~ (光文社新書)作者:河田 雅圭光文社Amazon 本書は進化生物学者河田雅圭による進化の一般向けの解説書になる.河田は新進気鋭の学者であった1990年に「はじめての進化論」を書いてい…

書評 「善と悪の生物学」

善と悪の生物学(上) 何がヒトを動かしているのか作者:ロバート・M・サポルスキーNHK出版Amazon善と悪の生物学(下) 何がヒトを動かしているのか作者:ロバート・M・サポルスキーNHK出版Amazon 本書は,ストレスについての神経生理と行動の研究者で,アフリ…

書評 「進化精神病理学」

進化精神病理学 心理学と精神医学の統合的アプローチ作者:マルコ・デル・ジュディーチェ福村出版Amazon 本書は進化的視点から精神病理学の包括的な枠組みを構築する試みを解説する一冊.著者のマルコ・デル・ジュディーチェは進化心理学者で,パーソナリティ…

書評 「技術革新と不平等の1000年史」

技術革新と不平等の1000年史 上作者:ダロン アセモグル,サイモン ジョンソン早川書房Amazon技術革新と不平等の1000年史 下作者:ダロン アセモグル,サイモン ジョンソン早川書房Amazon 本書はダロン・アセモグルとサイモン・ジョンソンという2人の経済学者に…

書評 「心理学を遊撃する」

心理学を遊撃する作者:山田祐樹ちとせプレスAmazon 本書は認知心理学者山田佑樹による,「心理学の再現性問題」についてそれをリサーチ対象として捉えて突っ込んでいった結果を報告してくれる書物である. 「心理学の再現性問題」は,心理学者にとって自分の…

書評 「生き物の「居場所」はどう決まるか」

生き物の「居場所」はどう決まるか 攻める、逃げる、生き残るためのすごい知恵 (中公新書)作者:大崎直太中央公論新社Amazon 本書は生態学者大崎直太による,生物の「ニッチ」がどのように決まるのかの学説史についての一冊.生物にはそれぞれの生息場所あるい…

書評 「ゴキブリ・マイウェイ」

ゴキブリ・マイウェイ この生物に秘められし謎を追う作者:大崎 遥花山と溪谷社Amazon 本書はクチキゴキブリの翅の食い合いをリサーチしている若手研究者の自伝的研究物語.リサーチのテーマはゴキブリの配偶ペアの翅の食い合いという極めて興味深いものだ.4…

書評 「宗教の起源」

宗教の起源作者:ロビン・ダンバー,小田哲白揚社Amazon 本書はダンバー数で有名な進化心理学者ロビン・ダンバーが宗教を語る一冊.これまでに宗教を進化的に説明するものとしては,(宗教が信者に誤信念を抱かせ,儀式等にコストをかけさせることから個体にと…

書評 「なぜオスとメスは違うのか」

なぜオスとメスは違うのか―性淘汰の科学作者:マーリーン・ズック,リー・W・シモンズ大修館書店Amazon 本書はハミルトンとともに性淘汰のハミルトン=ズック仮説を提唱したことで有名なマーリーン・ズックとリー・シモンズによる性淘汰の解説書だ.ズックは…

書評 「ダーウィンの呪い」

ダーウィンの呪い (講談社現代新書)作者:千葉聡講談社Amazon 本書は千葉聡による「ダーウィンの自然淘汰理論」(特にそれが社会にどのような含意を持つかについての誤解や誤用)が人間社会に与えた負の側面(本書では「呪い」と呼ばれている)を描く一冊.当…

書評 「なぜ私たちは友だちをつくるのか」

なぜ私たちは友だちをつくるのか--進化心理学から考える人類にとって一番重要な関係作者:ロビン ダンバー青土社Amazon 本書はダンバー数と言語のゴシップ起源説で有名なロビン・ダンバーによるヒトの社会的ネットワーク(特に親しい友人関係)についての本…

書評 「「協力」の生命全史」

「協力」の生命全史―進化と淘汰がもたらした集団の力学作者:ニコラ・ライハニ東洋経済新報社Amazon 本書は行動生態学者でヒトの協力のリサーチも行っているニコラ・ライハニによる協力の進化を扱った一般向けの科学啓蒙書だ.オーソドックスに協力にかかる進…

書評 「人を動かすルールをつくる」

人を動かすルールをつくる――行動法学の冒険作者:ベンヤミン・ファン・ロイ,アダム・ファインみすず書房Amazon 本書はヒトがルールに対してどのように反応して行動するかという行動科学的視点にたって法(特に立法政策)を考える試み*1についての一般向けの解…

書評 「植物の超階層生物学」

植物の超階層生物学: ゲノミクス×フェノミクス×生態学でひもとく多様性 (種生物学研究 43号)文一総合出版Amazon 本書は種生物学会による種生物シリーズの最新刊.最近の同シリーズのテーマは共進化と行動生態学ということで進化生態学が軸になっていたが,今…

書評 「葉を見て枝を見て」

葉を見て枝を見て: 枝葉末節の生態学 (共立スマートセレクション)作者:喜八郎, 菊沢共立出版Amazon 本書は菊沢喜八郎による「植物が枝と葉をどのように展開するか」についての進化生態学的な探索を扱った一冊.私にとって菊沢喜八郎という名は今は亡き蒼樹書…

書評 「運動の神話」

運動の神話 上作者:ダニエル E リーバーマン早川書房Amazon運動の神話 下作者:ダニエル E リーバーマン早川書房Amazon 本書は進化生物学者ダニエル・リーバーマンによる運動(本書では特に意識的に身体活動を目的にして行うエクササイズを指す)についての…

書評 「Darwin’s Most Wonderful Plants」

Darwin's Most Wonderful Plants: A Tour of His Botanical Legacy (English Edition)作者:Thompson, KenThe University of Chicago PressAmazon 本書は植物学者ケン・トンプソンによるダーウィンの植物本についての一般向けの解説書になる.ダーウィンの著…

書評 「歌うサル」

歌うサル: テナガザルにヒトのルーツをみる (共立スマートセレクション 37)作者:井上 陽一共立出版Amazon 本書は井上陽一によるテナガザルの研究物語だ.井上は高校教師をしながらボルネオに通いテナガザルを研究し続けたという経歴を持つ異色のリサーチャー…

書評 「ヒトの原点を考える」

ヒトの原点を考える: 進化生物学者の現代社会論100話作者:長谷川 眞理子東京大学出版会Amazon 本書は長谷川眞理子によるエッセイ集.雑誌「財界」2018年9月以降に連載されているコラムの100回分を再構成の上一冊にまとめたものだ.内容的にはヒトとはどうい…

書評 「進化が同性愛を用意した」

進化が同性愛を用意した: ジェンダーの生物学作者:坂口 菊恵創元社Amazon 本書は進化心理学者坂口菊恵による同性愛を扱った一冊.坂口は進化心理学的に性淘汰産物としてのヒトの行動性差,個人差について探究し,その後その至近要因にも踏み込んで内分泌行動…

書評 「How Birds Evolve」

How Birds Evolve: What Science Reveals About Their Origin, Lives, and Diversity作者:Futuyma, Douglas J.Princeton Univ PrAmazon 本書は進化生物学の大御所ダグラス・フツイマによる鳥の進化についての一般向けの解説書だ.私にとってはフツイマという…

書評 「チョウの翅は、なぜ美しいか」

チョウの翅は、なぜ美しいか:その謎を追いかけて (DOJIN選書 096)作者:今福 道夫化学同人Amazon 本書はチョウの研究者今福道夫によるチョウのメスの選り好み型性淘汰に関する探求物語だ.チョウのオス間競争型性淘汰に関しては先日「武器を持たないチョウの…

書評 「人間性の進化的起源」

人間性の進化的起源作者:ケヴィン・レイランド,豊川航勁草書房Amazon 本書はヒトの知性や認知能力や心のあり方の進化的な起源を「文化進化」を深く考察することにより探索する本だ.そしてその中では累積的文化進化,ニッチ構築,遺伝子と文化の共進化にから…

書評 「広がる! 進化心理学」

広がる! 進化心理学朝倉書店Amazon 進化心理学は基本的にヒトの行動や心理を進化的な視点から理解しようとする試みであり,極めて学際的な営みになる.本書はそのような進化心理学の周辺分野の専門家たち(その多くは同時に進化心理学者でもある)による進…

書評 「進化的人間考」

進化的人間考作者:長谷川眞理子東京大学出版会Amazon 本書は長谷川眞理子による「ヒトの特殊性」についての本になる.もともとは東京大学出版会のPR誌「UP」に2010~2012年にかけて「進化的人間考」として連載されたもので,それに少子化,犯罪,進化心理学…

書評 「進化心理学」

進化心理学 (放送大学教材)作者:大坪 庸介放送大学教育振興会Amazon 本書は進化心理学者大坪庸介の手になる進化心理学の教科書だ.今2023年度から放送大学で「進化心理学」が開講され,その教材として出版されたものだ.放送大学なら(BS視聴環境があれば)…

書評 「チョウの行動生態学」

チョウの行動生態学 (環境Eco選書)作者:井出純哉北隆館Amazon 本書は対象をチョウに絞った行動生態学のアンソロジー.もともと「昆虫と自然」2021年3月号の特集だったものを膨らませて本にしたものだ.チョウの総説から科学哲学までさまざまなテーマが取り上…

書評 「招かれた天敵」

招かれた天敵――生物多様性が生んだ夢と罠作者:千葉聡みすず書房Amazon 本書は進化生物学者千葉聡による天敵を利用した生物的防除の歴史を扱う大作.千葉は「歌うカタツムリ」でカタツムリを題材に淘汰と浮動の進化観をめぐる壮大な進化学説史を語ってくれた…

書評 「知られざる食肉目動物の多様な世界」

知られざる食肉目動物の多様な世界 東欧と日本作者:増田 隆一,金子 弥生中西出版Amazon 本書は東京農工大とトラキア大学の間の姉妹校交流の中から生まれたブルガリアの食肉目哺乳類の協同研究プロジェクト(両大学のほか,北海道大学,ブルガリア国立自然史…

書評 「不倫」

不倫―実証分析が示す全貌 (中公新書)作者:五十嵐彰,迫田さやか中央公論新社Amazon 本書はデータを元にした日本の不倫事情についての解説書だ.著者は社会学者の五十嵐彰と経済学者の迫田さやか.この2人は必ずしも不倫の専門家というわけではないが(五十嵐…