2024-01-01から1年間の記事一覧

NIBB動物行動学研究会 講演会 基調講演

sites.google.com 動物行動学研究会の講演会で長谷川眞理子さんが基調講演されるというので聴講してきた. 人間行動生態学へ 長谷川眞理子 今日は昔話もふくめて,人間についてどう考えるかについて話したい. 動物の行動の研究は1930年代以降にエソロジー(…

第17回日本人間行動進化学会(HBESJ Hiroshima 2024)参加日誌 その2

sites.google.com 大会二日目 12月8日 口頭セッション3 狩猟採集⺠の食餌幅選択及び農耕⺠との関係性を考慮した数理モデル 河⻄幸子 狩猟採集民と農耕民と生物資源2種がある社会で,個体群動態がどうなるかについての数理モデル発表 教示を行うライフスケジ…

第17回日本人間行動進化学会(HBESJ Hiroshima 2024)参加日誌 その1

sites.google.com 本年のHBESJは広島修道大学での開催.今年は完全なハイブリッド開催とはならなかったが,口頭発表や招待講演はオンラインで配信があり(ポスター発表が対象外),今年もオンラインで参加することとした.会場の配信だけでもいろいろと準備…

書評 「The Genetic Book of the Dead」

The Genetic Book of the Dead: A Darwinian Reverie (English Edition)作者:Dawkins, RichardApolloAmazon 本書はリチャード・ドーキンスの最新刊.ドーキンスはすでに83歳だが,なお執筆意欲高く本を出してくれるのには感謝しかない.ドーキンスといえば「…

War and Peace and War:The Rise and Fall of Empires その95

War and Peace and War: The Rise and Fall of Empires (English Edition)作者:Turchin, PeterPlumeAmazon ターチンによるローマ帝国衰亡論.ターチンはローマ帝国のメタエスニックフロンティアが遠ざかったことに始まるセキュラーサイクルの分解フェーズ,…

War and Peace and War:The Rise and Fall of Empires その94

War and Peace and War: The Rise and Fall of Empires (English Edition)作者:Turchin, PeterPlumeAmazon ターチンによるローマ帝国衰亡論.ターチンはローマ帝国の最初の分解フェーズの始まりをメタエスニックフロンティアがイタリアから離れ,人口増と均…

War and Peace and War:The Rise and Fall of Empires その93

War and Peace and War: The Rise and Fall of Empires (English Edition)作者:Turchin, PeterPlumeAmazon ターチンによるローマ帝国衰亡論.ターチンはローマ帝国の最初の分解フェーズの始まりをメタエスニックフロンティアがイタリアから離れ,人口増と均…

書評 「なぜ人はアートを楽しむように進化したのか」

なぜ人はアートを楽しむように進化したのか作者:アンジャン・チャタジー草思社Amazon 本書はアートを進化的に考察した本になる*1.著者のアンジャン・チャタジーは神経科学者で,神経美学(neuroaethetics)の研究者でもある.私はあまりよく知らなかったが…

War and Peace and War:The Rise and Fall of Empires その92

War and Peace and War: The Rise and Fall of Empires (English Edition)作者:Turchin, PeterPlumeAmazon ターチンによるローマ帝国衰亡論.まず第6章で見たローマの興隆(メタエスニックフロンティアにおける帝国の興隆)の復習から始まる.第6章ではロー…

War and Peace and War:The Rise and Fall of Empires その91

War and Peace and War: The Rise and Fall of Empires (English Edition)作者:Turchin, PeterPlumeAmazon ターチンによるローマ帝国衰亡論.まずはギボンによるローマ帝国衰亡論が,議論を混乱に導いたのだとし,そもそも凋落が始まった時点をどう定義する…

War and Peace and War:The Rise and Fall of Empires その90

War and Peace and War: The Rise and Fall of Empires (English Edition)作者:Turchin, PeterPlumeAmazon 一旦不平等の拡大と収縮と人口要因という理論編を挟んで,ターチンはケーススタディに戻る.最後に取っておいたのは西洋歴史学最大のトピックともい…

書評 現代思想 総特集 「ダニエル・C・デネット 1942-2024 意識と進化の哲学」 2024年10月臨時増刊号

現代思想2024年10月臨時増刊号 総特集=ダニエル・C・デネット――1942-2024 意識と進化の哲学作者:木島泰三,戸田山和久,飯盛元章,吉川浩満,山口尚,高崎将平青土社Amazon ダニエル・デネットは意識,自由意思*1,ダーウィニズムを扱った哲学者であり,新無神論…

War and Peace and War:The Rise and Fall of Empires その89

War and Peace and War: The Rise and Fall of Empires (English Edition)作者:Turchin, PeterPlumeAmazon ターチンは不平等の拡大縮小のサイクルを人口動態から説明してきた.最後にこの周期をクリオダイナミクスのセキュラーサイクル(2〜300年周期)の中…

War and Peace and War:The Rise and Fall of Empires その88

War and Peace and War: The Rise and Fall of Empires (English Edition)作者:Turchin, PeterPlumeAmazon ターチンは不平等の拡大縮小のサイクルを.人口動態から説明する.そしてそのような人口動態の効果は国全体にも,特定社会階層内でも生じることを説…

書評 「わたしは哺乳類です」

わたしは哺乳類です: 母乳から知能まで、進化の鍵はなにか作者:リアム・ドリューインターシフトAmazon 本書は,哺乳類についてその特徴と進化を語った一冊.著者のリアム・ドリューは神経生物学の研究者であった経歴を持つサイエンスライター.この本はかな…

War and Peace and War:The Rise and Fall of Empires その87

War and Peace and War: The Rise and Fall of Empires (English Edition)作者:Turchin, PeterPlumeAmazon ターチンは不平等の拡大縮小のサイクルの説明に進む.(農業経済の中では)人口が(疫病や戦争により)縮小すると経済的なメカニズムにより不平等は…

War and Peace and War:The Rise and Fall of Empires その86

War and Peace and War: The Rise and Fall of Empires (English Edition)作者:Turchin, PeterPlumeAmazon ターチンは格差拡大,マタイ原理の原因について単純化したモデルを提示した.そして最低消費水準が閾値になってポジティブフィードバックが働くとい…

War and Peace and War:The Rise and Fall of Empires その85

War and Peace and War: The Rise and Fall of Empires (English Edition)作者:Turchin, PeterPlumeAmazon ターチンは格差拡大,マタイ原理の原因について単純化したモデルを提示した.一旦単純化モデルの知見をまとめたのち,続いて富者と貧者の間に広大な…

書評 「哺乳類の興隆史」

哺乳類の興隆史――恐竜の陰を出て、新たな覇者になるまで作者:スティーブ・ブルサッテみすず書房Amazon 本書は古生物学者スティーブ・ブルサッテによる哺乳類を語る一冊.ブルサッテは当初恐竜学者としてキャリアをスタートさせており,2019年に恐竜の進化史…

War and Peace and War:The Rise and Fall of Empires その84

War and Peace and War: The Rise and Fall of Empires (English Edition)作者:Turchin, PeterPlumeAmazon ターチンは格差拡大,マタイ原理の原因について単純化したモデルを提示した.ここでは一旦単純化モデルの知見をまとめている.そして続いて富者と貧…

War and Peace and War:The Rise and Fall of Empires その83

War and Peace and War: The Rise and Fall of Empires (English Edition)作者:Turchin, PeterPlumeAmazon ターチンは格差拡大,マタイ原理の原因について,それは交易がポジティブフィードバックを作り出すために生じるというアイデアを取り上げる.そして…

War and Peace and War:The Rise and Fall of Empires その82

War and Peace and War: The Rise and Fall of Empires (English Edition)作者:Turchin, PeterPlumeAmazon 第10章はこれまでの歴史ケーススタディから一旦離れて理論編に.ターチンのように社会の団結を重視する立場に立つと,社会で不平等や格差が拡大する…

書評 「ウォード博士の驚異の『動物行動学入門』 動物のひみつ」

ウォード博士の驚異の「動物行動学入門」 動物のひみつ――争い・裏切り・協力・繁栄の謎を追う作者:アシュリー・ウォードダイヤモンド社Amazon 本書は動物行動学者アシュリー・ウォードによる動物の社会生活に焦点をおいた一般向けの科学書である.ウォードは…

War and Peace and War:The Rise and Fall of Empires その81

War and Peace and War: The Rise and Fall of Empires (English Edition)作者:Turchin, PeterPlumeAmazon ターチンは14世紀末から15世紀前半のフランスの第二の崩壊過とそこからの回復過程を眺め,回復過程が英仏両国で異なったことを解説してきた.そして…

書評 「ダーウィン:『進化論の父』の大いなる遺産」

ダーウィン-「進化論の父」の大いなる遺産 (中公新書 2813)作者:鈴木 紀之中央公論新社Amazon 本書は進化生物学者鈴木紀之によるダーウィンについての一冊.ダーウィンを語る本は,ダーウィンイヤー(生誕200年,種の起源出版150年)であった2009年辺りにず…

War and Peace and War:The Rise and Fall of Empires その80

War and Peace and War: The Rise and Fall of Empires (English Edition)作者:Turchin, PeterPlumeAmazon ターチンは14世紀末から15世紀前半のフランスの第二の崩壊過程,そしてそこからの回復過程を眺め,回復過程が英仏両国で異なったことを解説してきた…

War and Peace and War:The Rise and Fall of Empires その79

War and Peace and War: The Rise and Fall of Empires (English Edition)作者:Turchin, PeterPlumeAmazon ターチンは14世紀末から15世紀前半のフランスの第二の崩壊過程,そしてそこからの回復過程が長引いた原因を人口動態面,その中でも平民の動向と貴族…

書評「まじめにエイリアンの姿を想像してみた」

まじめにエイリアンの姿を想像してみた作者:アリク・カーシェンバウム,穴水由紀子柏書房Amazon 本書は進化生物学者であり,動物のコミュニケーションの専門家であるアリク・カーシェンバウムによる,星間航行を可能にするような地球外生命がどのようなもので…

War and Peace and War:The Rise and Fall of Empires その78

War and Peace and War: The Rise and Fall of Empires (English Edition)作者:Turchin, PeterPlumeAmazon ターチンは14世紀末から15世紀前半のフランスの第二の崩壊過程,そしてそこからの回復過程を人口動態面から整理する. 飢饉や疫病により総人口は大き…

War and Peace and War:The Rise and Fall of Empires その77

War and Peace and War: The Rise and Fall of Empires (English Edition)作者:Turchin, PeterPlumeAmazon ターチンはここで14世紀末から15世紀前半のフランスの第二の崩壊過程を人口動態面から整理する.人口は1300年から1450年までに半減した.人口回復過…