2024-01-01から1年間の記事一覧

War and Peace and War:The Rise and Fall of Empires その92

War and Peace and War: The Rise and Fall of Empires (English Edition)作者:Turchin, PeterPlumeAmazon ターチンによるローマ帝国衰亡論.まず第6章で見たローマの興隆(メタエスニックフロンティアにおける帝国の興隆)の復習から始まる.第6章ではロー…

War and Peace and War:The Rise and Fall of Empires その91

War and Peace and War: The Rise and Fall of Empires (English Edition)作者:Turchin, PeterPlumeAmazon ターチンによるローマ帝国衰亡論.まずはギボンによるローマ帝国衰亡論が,議論を混乱に導いたのだとし,そもそも凋落が始まった時点をどう定義する…

War and Peace and War:The Rise and Fall of Empires その90

War and Peace and War: The Rise and Fall of Empires (English Edition)作者:Turchin, PeterPlumeAmazon 一旦不平等の拡大と収縮と人口要因という理論編を挟んで,ターチンはケーススタディに戻る.最後に取っておいたのは西洋歴史学最大のトピックともい…

書評 現代思想 総特集 「ダニエル・C・デネット 1942-2024 意識と進化の哲学」 2024年10月臨時増刊号

現代思想2024年10月臨時増刊号 総特集=ダニエル・C・デネット――1942-2024 意識と進化の哲学作者:木島泰三,戸田山和久,飯盛元章,吉川浩満,山口尚,高崎将平青土社Amazon ダニエル・デネットは意識,自由意思*1,ダーウィニズムを扱った哲学者であり,新無神論…

War and Peace and War:The Rise and Fall of Empires その89

War and Peace and War: The Rise and Fall of Empires (English Edition)作者:Turchin, PeterPlumeAmazon ターチンは不平等の拡大縮小のサイクルを人口動態から説明してきた.最後にこの周期をクリオダイナミクスのセキュラーサイクル(2〜300年周期)の中…

War and Peace and War:The Rise and Fall of Empires その88

War and Peace and War: The Rise and Fall of Empires (English Edition)作者:Turchin, PeterPlumeAmazon ターチンは不平等の拡大縮小のサイクルを.人口動態から説明する.そしてそのような人口動態の効果は国全体にも,特定社会階層内でも生じることを説…

書評 「わたしは哺乳類です」

わたしは哺乳類です: 母乳から知能まで、進化の鍵はなにか作者:リアム・ドリューインターシフトAmazon 本書は,哺乳類についてその特徴と進化を語った一冊.著者のリアム・ドリューは神経生物学の研究者であった経歴を持つサイエンスライター.この本はかな…

War and Peace and War:The Rise and Fall of Empires その87

War and Peace and War: The Rise and Fall of Empires (English Edition)作者:Turchin, PeterPlumeAmazon ターチンは不平等の拡大縮小のサイクルの説明に進む.(農業経済の中では)人口が(疫病や戦争により)縮小すると経済的なメカニズムにより不平等は…

War and Peace and War:The Rise and Fall of Empires その86

War and Peace and War: The Rise and Fall of Empires (English Edition)作者:Turchin, PeterPlumeAmazon ターチンは格差拡大,マタイ原理の原因について単純化したモデルを提示した.そして最低消費水準が閾値になってポジティブフィードバックが働くとい…

War and Peace and War:The Rise and Fall of Empires その85

War and Peace and War: The Rise and Fall of Empires (English Edition)作者:Turchin, PeterPlumeAmazon ターチンは格差拡大,マタイ原理の原因について単純化したモデルを提示した.一旦単純化モデルの知見をまとめたのち,続いて富者と貧者の間に広大な…

書評 「哺乳類の興隆史」

哺乳類の興隆史――恐竜の陰を出て、新たな覇者になるまで作者:スティーブ・ブルサッテみすず書房Amazon 本書は古生物学者スティーブ・ブルサッテによる哺乳類を語る一冊.ブルサッテは当初恐竜学者としてキャリアをスタートさせており,2019年に恐竜の進化史…

War and Peace and War:The Rise and Fall of Empires その84

War and Peace and War: The Rise and Fall of Empires (English Edition)作者:Turchin, PeterPlumeAmazon ターチンは格差拡大,マタイ原理の原因について単純化したモデルを提示した.ここでは一旦単純化モデルの知見をまとめている.そして続いて富者と貧…

War and Peace and War:The Rise and Fall of Empires その83

War and Peace and War: The Rise and Fall of Empires (English Edition)作者:Turchin, PeterPlumeAmazon ターチンは格差拡大,マタイ原理の原因について,それは交易がポジティブフィードバックを作り出すために生じるというアイデアを取り上げる.そして…

War and Peace and War:The Rise and Fall of Empires その82

War and Peace and War: The Rise and Fall of Empires (English Edition)作者:Turchin, PeterPlumeAmazon 第10章はこれまでの歴史ケーススタディから一旦離れて理論編に.ターチンのように社会の団結を重視する立場に立つと,社会で不平等や格差が拡大する…

書評 「ウォード博士の驚異の『動物行動学入門』 動物のひみつ」

ウォード博士の驚異の「動物行動学入門」 動物のひみつ――争い・裏切り・協力・繁栄の謎を追う作者:アシュリー・ウォードダイヤモンド社Amazon 本書は動物行動学者アシュリー・ウォードによる動物の社会生活に焦点をおいた一般向けの科学書である.ウォードは…

War and Peace and War:The Rise and Fall of Empires その81

War and Peace and War: The Rise and Fall of Empires (English Edition)作者:Turchin, PeterPlumeAmazon ターチンは14世紀末から15世紀前半のフランスの第二の崩壊過とそこからの回復過程を眺め,回復過程が英仏両国で異なったことを解説してきた.そして…

書評 「ダーウィン:『進化論の父』の大いなる遺産」

ダーウィン-「進化論の父」の大いなる遺産 (中公新書 2813)作者:鈴木 紀之中央公論新社Amazon 本書は進化生物学者鈴木紀之によるダーウィンについての一冊.ダーウィンを語る本は,ダーウィンイヤー(生誕200年,種の起源出版150年)であった2009年辺りにず…

War and Peace and War:The Rise and Fall of Empires その80

War and Peace and War: The Rise and Fall of Empires (English Edition)作者:Turchin, PeterPlumeAmazon ターチンは14世紀末から15世紀前半のフランスの第二の崩壊過程,そしてそこからの回復過程を眺め,回復過程が英仏両国で異なったことを解説してきた…

War and Peace and War:The Rise and Fall of Empires その79

War and Peace and War: The Rise and Fall of Empires (English Edition)作者:Turchin, PeterPlumeAmazon ターチンは14世紀末から15世紀前半のフランスの第二の崩壊過程,そしてそこからの回復過程が長引いた原因を人口動態面,その中でも平民の動向と貴族…

書評「まじめにエイリアンの姿を想像してみた」

まじめにエイリアンの姿を想像してみた作者:アリク・カーシェンバウム,穴水由紀子柏書房Amazon 本書は進化生物学者であり,動物のコミュニケーションの専門家であるアリク・カーシェンバウムによる,星間航行を可能にするような地球外生命がどのようなもので…

War and Peace and War:The Rise and Fall of Empires その78

War and Peace and War: The Rise and Fall of Empires (English Edition)作者:Turchin, PeterPlumeAmazon ターチンは14世紀末から15世紀前半のフランスの第二の崩壊過程,そしてそこからの回復過程を人口動態面から整理する. 飢饉や疫病により総人口は大き…

War and Peace and War:The Rise and Fall of Empires その77

War and Peace and War: The Rise and Fall of Empires (English Edition)作者:Turchin, PeterPlumeAmazon ターチンはここで14世紀末から15世紀前半のフランスの第二の崩壊過程を人口動態面から整理する.人口は1300年から1450年までに半減した.人口回復過…

訳書情報 「有害な男性のふるまい」

有害な男性のふるまい:進化で読み解くハラスメントの起源作者:デヴィッド・M・バス草思社Amazon 以前私が書評した進化心理学者デイヴィッド・バスの「When Men Behave Badly」が「有害な男性のふるまい」という邦題で邦訳出版された.バスは進化心理学勃興…

War and Peace and War:The Rise and Fall of Empires その76

War and Peace and War: The Rise and Fall of Empires (English Edition)作者:Turchin, PeterPlumeAmazon 14世紀末のフランスの第2の転落.貴族層の過剰人口問題は解決せず,前回の転落の悲惨さを知らない若い層が台頭し,彼らは二派に分かれて争う.そして…

War and Peace and War:The Rise and Fall of Empires その75

War and Peace and War: The Rise and Fall of Empires (English Edition)作者:Turchin, PeterPlumeAmazon 14世紀末のフランスの第2の転落.貴族層の過剰人口問題は解決せず,前回の転落の悲惨さを知らない若い層が台頭し,彼らは二派に分かれて争う.そして…

書評 「特殊害虫から日本を救え」

特殊害虫から日本を救え (集英社新書)作者:宮竹貴久集英社Amazon 本書はミカンコミバエ,ウリミバエなどの日本における特殊害虫(外来侵入種である害虫)根絶についての一冊で,その歴史(著者はこれを戦史と呼んでいる),現状,教訓が語られている.著者は…

War and Peace and War:The Rise and Fall of Empires その74

War and Peace and War: The Rise and Fall of Empires (English Edition)作者:Turchin, PeterPlumeAmazon 14世紀末のフランスの第2の転落.貴族層の過剰人口問題は解決せず,前回の転落の悲惨さを知らない若い層が台頭し,同じ過ちを繰り返したとターチンは…

War and Peace and War:The Rise and Fall of Empires その73

War and Peace and War: The Rise and Fall of Empires (English Edition)作者:Turchin, PeterPlumeAmazon 14世紀末のフランスの第2の転落.貴族層の過剰人口問題は解決せず,前回の転落の悲惨さを知らない若い層が台頭し,同じ過ちを繰り返したとターチンは…

書評 「植物たちの護身術」

植物たちの護身術: 被食防御の生態学 (種生物学シリーズ)文一総合出版Amazon 本書は種生物学会による種生物シリーズの最新刊.テーマは植物の対植食者防御(被食防御戦略)で,前々刊の「植物の行動生態学」の続編あるいは各論という性格も合わせ持つ.動物…

War and Peace and War:The Rise and Fall of Empires その72

War and Peace and War: The Rise and Fall of Empires (English Edition)作者:Turchin, PeterPlumeAmazon 1350年代にフランスは百年戦争第1フェーズでの惨敗によりどん底状態となった.ターチンはまずそこからの回復過程を描いた.それはこのままではフラン…