「エコノミストの昼ごはん」

エコノミストの昼ごはん――コーエン教授のグルメ経済学

エコノミストの昼ごはん――コーエン教授のグルメ経済学


本書は著名な経済学者タイラー・コーエンの手による「とにかく美味しいものをできるだけお値打ちな値段で食べるにはどうすればいいか」をメインテーマに書かれたエッセイ集だ.コーエンはそのコントラリアン的なユニークな経済学的な主張で有名で,その文章は啓発的で読んでいて楽しい.原題は「An Economist Gets Lunch」

第1章 導入

冒頭でニカラグアでいかに安くて美味しいものに出会ったかの探訪記が書かれており,ドキュメント風で面白い.この探訪記にはどうやれば安くて美味しいものに巡り会えるかのエッセンスが詰まっているのだ.このメインテーマについての探求は「食は需要と供給の産物である.従って,供給される食品が新鮮で,供給者が創造的で,需要者に知識があるところに安くて美味しいものがある」という経済学的な洞察に基づくものになる.
続いてニカラグアで美味しいものに巡り会うには何の役にも立たない「食にまつわるスノビズム」への痛烈な批判がある.ここでいうスノビズムというのは「地産地消スローフードは正しい」「アグリビジネスは悪だ」「大衆に迎合すれば食文化はだめになる」あたりの主張のことを指していて,いかにも考えの浅い似非リベラル左翼文化人が飛びつきそうな言説だ.これは実は本書の隠れた第2のテーマになっている.コーエンに言わせればこれらの組み合わせは経済学的にはパターナリズムであり規制推進的な政策に結びつき,イノベーションを阻害してコストを上げ,結局豊かな食を破壊しかねないのだ.


ここからコーエンの具体的な食への冒険が始まる.

第2章 アメリカの食文化

アメリカの食文化は質より量でお子ちゃま好み味のものが席巻しているという問題を抱えている.通説はこれは過剰な商業化のために輸入食品と冷凍食品と缶詰と巨大農場の国になってしまったという説明を行う.コーエンは歴史をひもといてこれに反論する.
アメリカの食文化がこうなってしまった*1のは政治と規制のためだというのだ.まず禁酒法は飲み物で採算をとるような高級レストランを廃店に追いやった.第二次世界大戦時の食糧供給のための配給制度は大量生産と長距離輸送にドライブをかけた*2.そしてアメリカの料理に恵みをもたらす移民を1920年代から60年代まで厳しく制限した.最後に第二次大戦後の家族構成の変化は,子供の味の好みに迎合し,テレビのながら視聴に向いた食ビジネスへの追い風になった.要するに経済学的にはこれは規制と需要側の問題であって,アグリビジネスはそれに追随したにすぎないというわけだ.いかにもコントラリアンの面目躍如でなかなか面白い解説だ.

第3章 買い物

家庭での料理を向上させる取り組み実験として買い物先を中国系のスーパーマーケットに限定する実験のレポートがある.コーエンがやってみたところ,それは日々の習慣を見直すきっかけになり,野菜への興味を倍加させたそうだ.ここは詳細レポートが大変楽しい.

第4章 レストラン選び

お待ちかねの美味しいレストランを見つける秘訣.コーエンにいわせるとアメリカのレストランの特徴は「人間はきわめて創造的だがトマトは新鮮ではない」というところにある.食材は全国レベルの大量生産と長期保存・長距離輸送がデフォルトなのだ.だから素材中心ではなく構成中心のメニューを重視すべきことになる.
そして重要なのはサブシダイズ概念の理解だ.平たくいうとそのレストランが何をマーケティングに使い,何を収益源と位置づけているかを見抜くことだ.そしてマーケティングに使われているメニューは収益率を押さえて魅力的になっているのでそれが狙い目ということになる.具体例では高級レストランは食事のメニューの価格を抑えてドリンクで儲けようとしている*3.そして眺望の良いレストランは警戒すべきなのだ.
このほかのTipsもいろいろ面白い.例えばコーエンは高級レストランではメニューの中で人気メニューを避けて食指の動かなそうなメニューを選ぶことを勧めている.高級レストランではすべてのメニューがちゃんと吟味されているが,人気メニューはそこそこのレベル以上にしようというインセンティブがないからだそうだ.
コストの面からいうと高給を取る店員が大勢いるところ,店の位置が目抜き通りにあるところは不利になる.コーエンは高給取りの客がいる賃料の安い地区が狙い目だとコメントしている.
情報源を見つけるのも重要だ.コーエンは美味しいものが好きで食にプライドを持つ人を見つけることを勧めている.グーグル検索の場合には検索単語を具体的にするなどの注意が必要だ.レストランに入っていく人をよく観察することもいい情報源になる.コーエンは「出て来る人々の笑顔が絶えず,和やかな様子のレストラン」は警戒せよとコメントしている.そういうレストランは内装や接客に注意を払い,味は「不味くないものを出す」ことに特化している場合があるからだ*4.コーエンに言わせると「客が怒鳴りあっているのは吉兆」なのだそうだ.要するにレストランの質はその店が引き寄せる客に大きく影響されているのだ.コーエンはあるレストランに入ろうとするときには「ここにいるのは食べ物に対する姿勢が自分と似ている人達だろうか」を問いかけることを勧めている.
またレストラン側のマーケティングから考えると新規開店時には味に力を入れていることが期待できるが,集客に成功するとそれを維持するインセンティブは薄れる.だからコーエンは新規開店のレストランについては,半年以内に行くことをを勧めている.
ここで紹介されているのはいずれも実践的に有益なアドバイスで,その多くは日本のレストラン選びにも有効だろう.早速実践してみたいところだ.

第5章 アメリカのソウルフード「バーベキュー」

ここは本格的なバーベキューについての蘊蓄がぎっしり詰まっている.バーベキューに興味のある人にとっては素晴らしい情報源だろう.私はよく知らなかったが,バーベキューはアメリカの地方ごとで多様な発展を遂げており,その基本は肉(豚肉がメインであることが多い)を低温でじっくり長時間かけて燻製にするものだ.肉の部位*5によっては8時間から12時間かけることが重要で,火の管理に大変な手間がかかり,基本は非経済的な食べ物になる.だから郊外の家族経営のバーベキュー店に朝早く行くのが美味しいバーベキューにありつけるコツになる.ここではそのほかいろいろなピットの種類とそれぞれの経済的な問題,ソースの重要性などが熱く語られている.

第6章 (アメリカにおける)アジア料理レストラン

ここはコーエンのそれぞれの料理とアメリカにおけるレストランの実態についての素直な印象記と経済学的な考察がセットになっていて楽しい.

  • ベトナム料理はアメリカでは成功していない.これは複雑で多様なスパイスの知識が客にないと料理を楽しみにくいという構造のためではないか思われる.
  • アメリカのタイ料理店は年々甘ったるくなり質が落ちる傾向にある.これはタイ人の接客サービスの質がよすぎて,客が味にあまりこだわらなくなるためだ.コーエンが発見したのは「モーテル併設のタイ料理店は狙い目だ」ということだ.併設店は賃料が安く,家族経営で人件費も抑えられる.そして主ビジネスではないので顧客を多く集める必要がなく,じっくり料理できるからだ.
  • 日本料理:日本は経済的に成功した先進国なので貧しい移民がいない.このためほかのアジア料理のように郊外に狙い目の店がない.ほとんどの店はニューヨークのような大都会にあり,値段と質がきれいに相関している.安くて美味しい店を探すグルメにとっては難しいジャンルだ.
  • インド料理:人気があるので大衆向けのつまらない店が多い.狙い目は「パキスタン」料理だ.これはテロ,ビン・ラディンの連想,そしてイスラムイメージがあり,それにもかかわらずあえて入店する客は本当に美味しいものを求めていることが多いからだ.また「南インド」「カシミール」「バングラデシュ」などより絞り込んだ看板があるところの方が質が高い傾向にある.
  • 韓国料理は,ニンニク,発酵野菜,赤トウガラシなどアメリカ人には苦手な味が主体になっている.だからいったん野菜に慣れて楽しめるようになれば得がたいジャンルになる.ほとんどの店の客層は韓国料理がわかっている人たちなので外れの店は少ない.
  • 中華料理:アメリカに中華料理店は多く,全体として最も「安全度」の低いジャンル*6だ.以前は中華街がよいレストランに出会う理想的な場所だったが,どんどん観光客向けにアレンジされてつまらない店が増えた.今なら郊外や都市のはずれの方がよい.湖南料理は美味しいが,アメリカの「湖南料理」を看板にしているレストランの99%は(そのブランドイメージのみに乗っかろうとする)偽物だ.狙い目は四川料理だ.四川花椒をはじめとする食材が長距離輸送に向いていて本格的な食材が入手可能なこと.そしてこの辛さが味のわかる客層のみを残すようなふるいとして機能しているからだ.逆に広東料理は食材が傷みやすく大都市の高級店以外は避けた方が無難だ.


第7章と第8章は本書の第2のテーマを扱う.

第7章 農業革命

トウモロコシの品種改良,輸送と保存技術の進展,1960年代の緑の革命がいかに世界の食糧供給量を増やし,飢餓から人々を救ったかの歴史を振り返り,アグリビジネスの進展が安いコストで食糧供給を可能にすることに大きく貢献していることを解説する.特に土地を効率的に使うことは環境保全にも役立っていることを強調している.
アメリカが抱える肥満の問題は需要側の問題であることにコメントしたあと)コーエンは世界が今も抱える飢餓問題に対して近時の食糧生産効率の伸び率が下がっているのは誤った政策と規制にあると主張する.まずアメリカのバイオエタノールへの補助,サウジの(あまりに非効率な)小麦の自国生産政策,インドの大規模アグリビジネスへの規制を批判する.
そしてヨーロッパの遺伝子組み換え食品に対する過剰な規制を特に強く批判している.3億人のアメリカ人が日常的に摂取して問題が生じていないものを悪と決めつけ,その環境への好影響(殺虫剤の使用低減ほか)を無視するのは,特に飢餓問題を抱える貧しい国にとって加害的(アフリカの農民は輸出の際の問題を恐れ,より食糧を生産できる遺伝子組み換え作物の導入に躊躇してしまう.さらに政府は「汚染」を恐れて組み換え食品による食糧援助すら拒否してしまう)だというのだ.コーエンはさらにむやみに厳しい食品基準全般に対しても「まるでアフリカの人達全員に対して,安全性の低い小型車の購入を認めずに.SUVを買わせるようなものだ」と憤っている.

第8章 環境に優しい食とは

「環境に優しい」ことの偽善を扱う.まず「環境に優しい製品を買うと個人のモラルは低下しがちだ」という心理学リサーチの結果を紹介し,私たちが「善意に満ちた振る舞い」とその「動機」や「最終的な効果」についていかに無知であるかを強調する.
そして地産地消運動の矛盾を糾弾する.大規模輸送は驚くほどコストが低く,地産地消のために,地元食品を近距離小規模輸送したり,エネルギーコストをかけて地元産の果物を長期保存するよりはるかに環境にも優しいのだ.
モンサント製品の不買運動家の行動をトレースしているところは傑作だ.彼女はどこにでも混入している可能性のあるモンサント製品を排除しようとして延々と苦労し,そして完全に排除することは不可能であることを思い知り,「遺伝子組み換え食品は飢餓の問題解決に役立ち,除草剤や殺虫剤の使用を減らし,気候変動にもいい影響を与える可能性が高い」ことを認めながらそれを「マジでヤバい話」と受け止める.コーエンはモンサント製品があふれているのは彼等が世界中の消費者に利益を与えている証拠であるし,遺伝子組み換え製品の利点を認めるならそもそも何故不買運動なんかしているのかと皮肉っている.
「あることが環境に優しいかどうか」を知ることは非常に難しい.コーエンは最もよい方法は単純な価格メカニズムでは反映されない外部効果を炭素税のような形で内包して価格メカニズムを使うことだと経済学者らしく指摘する.確かにそれは世界中に同じ税を導入しないと完璧ではない.それでも一国だけで制度を導入することは導入しないよりはるかにいいだろうとコメントしている.
コーエンは最後に環境に優しい行動をするための指針を提案している.

  1. 道徳的な行動をもっと楽しもう
  2. 環境に悪いものは高級品を選ぼう
  3. 精製糖はなるべく控えよう
  4. 食器をもっと手洗いしよう
  5. 残飯を減らそう
  6. 車での移動は最低限にしよう

2番目はいかにも経済学者らしく面白い.いったん高級品に慣れるともはや安い品では満足できなくなりやすい.そうすれば価格メカニズムを通じて消費が抑えられるというわけだ.

第9章 メキシコ料理

メキシコ料理はコーエンの大のお気に入りのようだ.メキシコ料理はメキシコで味わうのとアメリカで(たとえメキシコ国境沿いのテキサスでも)味わうのでは味が全く異なる(もちろんメキシコで食べる方が数段美味しい).これは何故なのか.コーエンはそれを需要と供給から読み解いていく.ここもいかにもの蘊蓄とグルメ振りが満喫できる.

  • まず肉の味が違う.これはアメリカでは大規模農場で穀物で育てる方が経済的になるのに対して,メキシコの小規模家族経営農場では牧草で育てる方が経済的だからだ.さらにメキシコ肉はドライエージングで風味を増す.これはアメリカでは衛生基準が厳しく人件費が高いために経済的に引き合わないのだ.需要側では,客にヘルシーなメニューへのこだわりがあるかどうかが大きい.メキシコ人は低脂肪にこだわらないので脂ののったうまい肉がレストランで出てくるのだ.
  • シーフード:メキシコには魚介類の長距離輸送網がない.だから供給されるのは漁港のそばだけで,そこでは新鮮なものにありつける可能性が高くなる.
  • チーズの旨さは低温殺菌についての規制の差だ.(なおメキシコのチーズは,オランダやプロイセンやロシア出身のメノナイトたちの製造法に由来していて大変重厚で美味しいそうだ)
  • 料理にラードをたっぷり使うのも,需要側の健康志向(およびイスラムなどのマイノリティへの配慮)の差と長距離輸送できないので現地の新鮮なラードのみを使わざるを得ないからということになる.
  • トルティーヤも違う.メキシコでは(大量生産長距離輸送経済ではないので)多様な品種のトウモロコシが栽培され,その村独自のトルティーヤが手作りで生産されている.トマトも同じような事情でメキシコの方が新鮮なトマトにありつける.コーエンは「貧しい社会では制度も技術も整備されていないので手早く簡単な食物を得られない.だから逆説的に質の高い新鮮で美味しい食べ物が入手可能になる」のだと書いている.

第10章 海外でのレストラン選び

様々な地域のレストラン事情がグルメ目線で描かれている.ここも実体験と経済的分析にあふれていて大変面白い.

  • 東京:非常に魅力的.人口密度が高く郊外から公共交通で通勤者や買い物客が流入するので潜在的顧客層が厚い.また供給側にプロフェッショナルを求める文化的圧力が強い.このためどの店に入ってもほとんど外れがない*7.評判とは異なり20ドル以内で本当に美味しいものを食べることができる.エスニックも中華もフレンチもイタリアンも素晴らしい.高級日本料理は難解だ.150ドル以上の「本当に本当に美味しい日本料理」と35ドルの「本当に美味しい日本料理」の差を感知するのは難しい.*8
  • シンガポール:政府がホーカーセンター用の敷地を安価に提供しているので屋台で非常に安く美味しいものを食べることができる.問題は客が集中したときに待ち時間が異常に長くなることだ.
  • インドはインフラに難がある.お勧めはホテルのインド料理屋だ.自前の水道が重要.
  • フランス:パリの高級店は繁盛しているが,安い食べ物は質を落とし続けている.これは都市のビジネスモデルがグローバルモデルへ転換しているためだ.高給取りのビジネスマン,富裕な観光客はコストにあまりこだわらずに美味しいものを求め,地元の多くの購買者は美味しさをあきらめて安さを求めている.また安いものの質の低下はパリの不動産賃貸料と規制による労働コストの高さも一因となっている.パリでランチに行くなら美味しい店は常に需要過多なので予約しておくことが重要.安くて美味しいフランス料理を求めるなら観光客の少ない地方都市を訪れるべし.
  • ロンドン:ロンドンにも美味しい店はあるが常に高い*9.どんどんカネを払うか,堪え忍ぶか,出ていくしかない.
  • ドイツ:食べ物の質については過小評価されている.フランスと自由貿易圏を共通にし,経済的にうまくいっているので,食材をめぐる競争では優位にある.ただし客の食に関する知識と関心という点ではフランスに及ばない.
  • スイス:スイスのものはすべて美味しいがすべて高い.
  • イタリア:ローマとフィレンツェヴェネチアは観光客の人気がありすぎて,イタリアの中では最も不味い地域になっている.ローマの麺類はすべて不味い.コツは街の中心地からできるだけ離れること.3都市以外ならずっと良いレストランに出会いやすくなる.ルールは簡単だ.ただ観光客のいない水域で釣り糸を垂らせばいいのだ.
  • シチリア:ヨーロッパの中で最もお気に入り.レベルが高く食材も良質,価格は安く,現地にしかない名物料理も多い.
  • スペイン:あまり知られていないがマドリードバルセロナには南米からの移民が多くラテンアメリカ料理の穴場である.
  • イスタンブール:観光名所のそば,窓から海の見える魚介料理の店を避けること.価格は味とは無関係に客の社会的ステータスに基づいて設定されているので安い店で十分美味しいものにありつける.

第11章 自宅での料理

コーエンは料理にも入れ込んでいるようで,ここではその蘊蓄が書かれている.料理本の読み方(特に背景知識と参照する本のレベルをいかに整合させるか),道具のそろえ方,パーティを開くコツなどが書かれている.ここも楽しい.

本書はとにかく食べるの大好きのインテリグルメが蘊蓄たっぷりに食事を楽しむコツを伝授してくれる本だ.そしてミクロ経済分析的な分析がいいスパイスになってスノビッシュな風味を加えている.真ん中の第2テーマはいい頭の転換になるし,東京のレストランについての高評価も嬉しい*10.毎日のランチをいろいろなレストランで喰い歩いているような理屈好きの食いしん坊には堪えられないだろう.実利と娯楽を兼ね備えた面白い本だ.


関連書籍


原書

An Economist Gets Lunch: New Rules for Everyday Foodies

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タイラー・コーエンはもちろん経済書もたくさん出している.私は未読だが面白そうな本もあるようだ.

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*1:とはいえコーエンはアメリカの食のレベルは低く誤解されすぎているともコメントしている.まずその商業主義により貧困層への食糧供給は豊富だ.そして地方地方には美味しいものもあるが,それを食べるには車に乗って郊外を探すべきなのだがヨーロッパからの観光客は大都市の市街地でうろうろするだけでそれに巡り会えないということだ.

*2:それを行えないほど疲弊したヨーロッパでは地元の食材を用いる文化が残ることができた.

*3:酒を飲まない美食家にとって金持ちとドリンク価格に無頓着な人々は支援者ということになる

*4:同じような理由で美女がたむろしているレストランも要注意だとある.味にかまわず男性客が引き寄せられている可能性が高いからだ.

*5:スペアリブは例外的に90分ぐらいでも美味しくできるそうだ.だからレストランの経済学がこの章で論じられているものと異なってくる.トニー・ローマの成功はそこによるところが大きいということのようだ.

*6:もし運悪くはずれの店に入ってしまったら,その店は「本当に不味い」可能性がある(正体不明の揚げ物にどろどろの甘いオレンジソースがかかった最低の悪夢のような料理がでてくるかもしれない)とコーエンは書いている.

*7:表参道でほとんどの店が閉まっている3時頃に空腹に耐えかねて入った(女子高生で溢れかえっている)イタリア料理店で食べた10ドルのスパゲッティですらパロマボローニャで食べたものと同じぐらい満足できるものだったと書いている.

*8:なお東京の飲食店の難点としては「お目当ての店にたどりつくのが難しい」ことが挙げられている

*9:会社の経費で食べるにはいいが,払う金額に見合う料理を食べるのは難しいという言い方をしている.

*10:コーエンは冒頭の日本語版への序言でも東京のレストランを賞賛し,機会があれは是非大阪と沖縄を探訪したいと書いている.