読書中 「Narrow Roads of Geneland Vol.3」第15章

Narrow Roads of Gene Land: The Collected Papers of W.D. Hamilton: Last Words (Narrow Roads of Geneland: The Collected Papers of W.D. Hamil)

Narrow Roads of Gene Land: The Collected Papers of W.D. Hamilton: Last Words (Narrow Roads of Geneland: The Collected Papers of W.D. Hamil)


Hamilton and Gaia (Apreface to ‘Spora and Gaia: How Microbes Fly with their Clouds’)

第15章はハミルトンによる海洋性の微生物の適応としての雲の生成とそれによる分散説について
エッセーは本説の共著者Tim Lentonによるもの
この説へ至る経緯としてラブロックのガイア説とそれに対するハミルトンの見解「ある生物の自然選択による適応はシステム全体に正のフィードバックも負のフィードバックもかけうる.そして自然選択だからといって負のフィードバックが卓越するとは考えにくい」,そしてラブロックとの議論が平行線に終わったことがまず説明される.
ガイア説と関連して全地球的に硫黄循環の問題があり,海洋性微生物がなぜ硫化メチルを生産しているのかについてその時点では適応的な観点からは説明できていない状況があった.この硫化メチルは不凍への適応の可能性があるというレントンとのメールのやりとりをきっかけにハミルトンはこの問題を考え始める.
この海洋性微生物はそもそもそんな寒いところにはすんでいない,では波のしぶき等に乗って空に舞い上がったときに凍らないように,あるいは塩分が濃くなりすぎないよう浸透圧を調整しているのかもしれない,そして議論はそもそも空に舞い上がり雲を作りやすくしているのではないか,そしてそれにより分散するという利益を得ているのではないかとつながっていく.

レントンによるとハミルトンはモデルで検証を続けた結果,ある生態系に新しい生物種が加わるとより負のフィードバックがかかる可能性が高いと認識し始めていたという.そしてラブロックはガイアのコペルニクスであり,もしハミルトンがあのような死を迎えていなかったらガイア説のニュートンになったのではと締めくくっている.

最初にどこかでこの雲は微生物による適応現象だという説を読んだときにはその発想の飛び方に感銘を受けたものですが,こうやってその経緯を知ると納得してしまいます.