読書中 「Genes in Conflict」 第2章 その3

Genes in Conflict: The Biology of Selfish Genetic Elements

Genes in Conflict: The Biology of Selfish Genetic Elements

第2章 Autosomal Killers その3


マウスのtハプロタイプをなんとか読み終える.
要約の続き


エンハンサーとサプレッサー
殺戮の強さ(intensity)についてゲノム内コンフリクトがある.殺戮者の乗っている染色体にある対立遺伝子は殺戮を強化しようとする.相同染色体の上の対立遺伝子は殺戮を押さえようとする.このような理由で強く連鎖した殺戮コンプレックスが生まれる.
殺戮抑制遺伝子は相同染色体のみでなく非相同染色体にも(相同染色体上に比べ弱い淘汰圧だが)生じうる.
実験室ではこのような抑制遺伝子が見られ,ドラッグを90-95%から60-70%まで低下させる.しかし野生ではこのような抑制遺伝子は見つかっていない.
もちろんt複合体とその他遺伝子で協力することもある.劣化した精子を助けること(野生系の精子を押さえたり,精子数を増やした利など)はその一例.


tとMHC (Major Histocompatability Complex)
tと強く連鎖している領域にMHC領域がある.tといっしょのMHCは多様性が大幅に減少し,t特有のMHCとなっている.これはこの連鎖を生じさせた逆位が一度しか起こっていないことを意味する.これはtにとっても不幸な出来事.(免疫に悪影響があると思われる.)


ヘテロ(+/t)の適応度効果
tハプロタイプは片方の性(オス)にのみドライブ効果を現す.するとオスに10%のプラス効果があり,メスに15%のロスがあるような遺伝子もドライブ効果により広まることになる.
つまり,性特異的なドライブ遺伝子はSex Antagonisticな効果(ネットの生物に与える効果はネガティブだがドライブにより広がる効果)を持つことになる.ただ証拠は少ない.
t/+のマウスは体がより非対称だが,その効果はオスよりメスの方が顕著 ((私見)これは面白い)
強いオスオス競争の中ではt/+マウスはより不利となる.
t/tメスの適応度が低ければ,t/+のメスは無性への引き金になりやすい.


tの頻度
tと野生型の2遺伝子で数理モデルが作られている.
結果
パラメーター:ドライブの程度 抵抗遺伝子がなければ90%以上
      :t/tの適応度 よく致死的になるし,そうならない場合でもオスは不妊になる
      :t/+の適応度 社会構造によりさまざま
      :インブリーディングの程度
そしてtの頻度はt/+の適応度やインブリーディングの程度により大きく影響を受ける
実際の集団のtの頻度に変異があるのはパラメーターが様々である証拠だと思われる.特にインブリーディングの程度は集団やデームにより異なっていると思われる.