読書中 「Genes in Conflict」 第9章 その14

Genes in Conflict: The Biology of Selfish Genetic Elements

Genes in Conflict: The Biology of Selfish Genetic Elements



PSRを離れて,今日はいよいよ自分が有利になるために策略を働くB染色体だ.
ある種のバッタはメスはXX,オスはXOで,B染色体のドライブはメスで生じる.するとB染色体はオスの体内の減数分裂の際にXに結合して.よりXを持つ精子に入り込み,メスの体内に入り込もうとするだろう.これが生じるとB染色体にとってドライブ効率があがることは理解できる.著者は続けてオスでドラッグが生じるのであればBにとっての潜在的な利益はさらに大きいと解説している.ここは理解が難しい.オスでドラッグが生じる可能性があるとそもそも考えるべき理由が私にとっては不明だ.
このようなXB結合があれば,B染色体の有害効果がメスのみに現れるので,性比は少しオスに傾くことが予想される.やはりこれも性比を自分の有利にいじるということではないようだ.XBの結合傾向は観察されているが,野外データではこれを裏付ける性比データはとれないらしい.これは常染色体のコントロールがあるためだろうとしている.

オスでドライブがあると逆にBはXと逆方向に入ろうとするだろう.するとこれはY染色体とまったく同じ挙動に見える.実はY染色体はB染色体から進化したという議論を期待して読み進めると,著者は控えめにY染色体の起源との関係は知られていないとふれるに止まっている.


ちょっと肩すかしかと思っていたら次のショウジョウバエでは正面からY染色体の起源とB染色体について議論されている.理論的にはXX/XOシステムにおいてB染色体がどんな理由でもいいからオスを好む状況があればそれはY染色体のように振る舞うことが予測される.ショウジョウバエでは祖先型はXOであり,XとYは相同ではなく,さらに哺乳類と異なりYは性決定する遺伝子を持つわけではない.結構な状況証拠だと思うが,著者のいいぶりは「Y染色体をB染色体起源と考えるのはX染色体起源と考えるのと同じぐらいの蓋然性があるだろう」というやはり抑えめなもの.トリヴァースにはふさわしくないような弱腰にも感じられる.なんか心に引っかかっているのか,補強証拠が全くないということなのだろうか.




第9章 B染色体  その14


7. B染色体と性比


(2) 直翅目(バッタ)におけるX-B結合


直翅目昆虫では,メスはXX,オスはXO,B染色体がメスで生じる場合には,Bはオスの減数分裂時にXと結合することによりよりメスに入り込みやすくなる.これはドライブ効率を上げる.また,Bの有害効果はメスのみに現れ,性比は少しオスに傾く.
ドライブがオスで起こる場合には逆の議論になる.


(3) ショウジョウバエY染色体はB染色体がから進化したのか?


XO/XXシステムはB染色体の侵入に弱い.そしてそれがオスを好めばそれはY染色体になるだろう.
ショウジョウバエD. malanogaster,キジラミ類のPsylla foersteri,半倍数体のジガバチモドキTrypoxylon albitarseではY染色体がB染色体起源ではないかと考えられる例が見つかっている.