読書中 「Breaking the Spell」 第4章 

Breaking the Spell: Religion as a Natural Phenomenon

Breaking the Spell: Religion as a Natural Phenomenon




ここから第2部 宗教の進化について 最初の第4章は宗教の起源だ.
まずパプアニューギニアで何度も独立に生じたというカーゴカルトドーキンスもこのたとえをどこかで使っていたが,何度も独立に生じているとは知らなかった.宗教の起源を神からの唯一の真理が伝えられたことを理由にできないという論拠と言うことらしい.
現代では毎日(!)2つから3つの宗教が生まれ,10年程度で消えていくらしい.

そしてこの多様性を説明するには機能を考えなければならないと進む.


ここからパスカル・ボイヤー,スコット・アトランの説の紹介にはいる.

ボイヤーもアトランも宗教が人々をつかむ力を解明するためには,ヒトの心の進化を理解しなければならないという立場である.ヒトの心は脳にあるシステムの集合体であり,進化適応により様々なバイアスを持っている.この心は時にオーバーシュートし,時に興味深い副産物を残す.ボイヤーはこれを「コンセプト」と呼んでいる.
「いくつかのコンセプトは記憶や推論システムとつながり,思い出したりコミュニケーションを容易にする.いくつかは感情を呼び起こし,いくつかは社会的な行動にかかる.宗教はこれらを行うもののひとつである.」
ボイヤーリストは多岐にわたり,エージェント探知,記憶管理,チーター探知,倫理直感創造,物語への好み,警戒システムなどがふくまれる.アトランもほぼ同じ考えだ.
要するに進化した心理がもたらすバイアスにうまく適合した現象という説明になるように思われる.


そしてデネットのひねりが加わる.他者の心をどう理解するか,心の理論についてのデネットの用語「志向姿勢」intentional stanceの登場だ.まず危険なものから逃げるために生まれる「よいトリック」としてのエージェントとそうでないもの区別,そしてよりエージェントを認めようとするバイアスがかかって私たちの心に「ハイパーアクティブエージェント探知機器」HADDが生まれることになる.そしてアームレースと高次の「志向姿勢」の解説がつづく.

この「志向姿勢」は強力なので,都合よくオフにすることは困難だとする.すると愛していた人への「志向姿勢」の継続と,死体への忌避によるコンフリクトが生じるだろう.これが儀式を産み宗教の起源となったのではと推測している.「よいトリック」として様々な場所で生じたのは儀式だということだ.

ありそうなストーリーである.でもこれって検証できるのだろうか?まあ読み進めることにしよう.





第2部 宗教の進化


第4章 宗教の起源


1. 宗教の誕生


2. 宗教の原料


3. 自然は他者の心の問題をどう扱ったか?


生物学的な考え方を用いて人の先史時代を探ってみると,フォルク宗教がいかにして意識的なデザインなしに始まったのかを推測することができる.神の信仰の底には複雑な動きをするものにエージェント性を認めやすいという人の心理があるのだ.