Breaking the Spell: Religion as a Natural Phenomenon
- 作者: Daniel C. Dennett
- 出版社/メーカー: Viking Adult
- 発売日: 2006/02/02
- メディア: ハードカバー
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第6章は組織化された宗教への道
死者の弔いと占いとヒーリング儀式のフォルク宗教はどのように組織化された宗教になったのか.
人は同じことを繰り返すうちにだんだん技巧的になる.そしてそれで誰が利益を得ているのだろうと基本に戻って問いかける.時々きちんと問いかけてもらえるのは頭の整理としてとてもよい.
本書では農業発明以後はヒトの人生が厳しくなったので,不十分な知識を求めるより神話(別の人が信じていること)を信じた方がましになったのではないかと推測している.要するに深く考えないという態度が生まれる.ここで我々現代人が遺伝子や原子の実在を信じていることが例として出される.
さらに推測は続いて,フォルク宗教は大体うまくいくが,疑問が生じることもあるだろう.そしてその疑問への解答は説明の体系として成立し,だんだん説明力が強く防御的な話に変わっていく.はっきり断っていないが,説明体系自体がミームとしての適応を見せ始めるということのようだ.検証不能で魅力的な話ができあがる.ふれられない実在,不思議なものを理解しようとしてはならない,問うてはならないという防御線を持つようになる.シャーマン自体は熟練した催眠術師兼手品師になっていくだろう.
ここで農業以後の社会の特徴として,市場と分業を通じて見知らぬ人を信じなければならない社会ができあがったのが重要かもしれないとする.分業は同業者組合を産み,シャーマンも同業者組合を作る.ここから人の意識による人為淘汰の過程が始まるとデネットは言う.人が家畜を品種改良したことは家畜から見ると人を管理者として利用したことになる.宗教のミームも人も管理者としてデザインによる改良を受けるようになるという.ここで明確に利益を得るのはミームであるとしている.人が利益を得るのかどうかについてはどちらもあり得る.管理者が社会の支配者層であるなら,これは支配抑圧の道具にもなったので,管理者の利益にもなったであろうという.この中で「見えない神への服従をうけ入れさせる」というのは狡猾な戦略で,命令者により権威が与えられる.階層も安定するだろうという.ミームの管理者として品種改良するという概念は新鮮だ.なかなか読ませる.
第6章 管理責任者の進化
1. 音楽と宗教
2. 実践的なノウハウとしてのフォルク宗教
3. 宗教の秘密性の誕生
4. 宗教の飼い慣らし
宗教はよく考える執事を持つことで変容していった.秘密,欺き,否定を不可能にすることなどの特徴が生まれた.