「昨日までの世界」


昨日までの世界(上)―文明の源流と人類の未来

昨日までの世界(上)―文明の源流と人類の未来

昨日までの世界(下)―文明の源流と人類の未来

昨日までの世界(下)―文明の源流と人類の未来


現在レビュー中のJared Diamondの最新刊「The World Until Yesterday: What Can We Learn from Traditional Societies?」の邦訳本「昨日までの世界:文明の源流と人類の未来」は明日発売予定でamazon.co.jpではまだ予約可能ステイタスだが,書店店頭には並び始めている.
タイミングとしては洋書の発売が昨年末なので,2ヶ月以内という速い邦訳出版になった.おそらく「銃・病原菌・鉄」および「文明崩壊」が文庫になって売れ行き好調なので,(これまでダイアモンド本は版権を草思社が押さえてきたのだが,)売れると見込んだ日本経済新聞社が気合いを入れて版権を確保して,さらに今売れているというこのタイミングをのがしたくなかったということなのだろう.店頭で手に取ってみたが,ダイアモンドによる日本版向けの序言(先日の講演の時のメッセージの内容とほぼ重なっている)が追加されて,上下2巻で約4000円という価格設定になっている.毎度のことながら洋書は既に電子化されて1500円程度*1で入手可能なので,この彼我の価格差というかデジタルビジネスの成熟の差は悲しい限りだ.タイトルはそのまま訳されているが,副題はかなりニュアンスが異なる.「人類の未来」は本書のテーマとはあまり関係ないのではないだろうか.ダイアモンドの本書における主題よりも「銃・病原菌・鉄」および「文明崩壊」の人気にあやかりたいという事情を優先させたさもしさがそこはかなく感じられて残念だ.
とはいえ邦訳出版は喜ばしい.大人の事情はどうあれ,日本人読者にとっては嬉しいニュースだ.


連載中の読書ノートについてはせっかく読み始めているのでゆっくりそのまま続けるつもりである.




 

*1:私が購入したとき(1月)はamazon.comで10ドル程度,amazon.co.jpで900円程度だったのに,今日確認するとそれぞれ約16ドル,1500円となっている.この価格政策は謎だしわかりにくい.