「女性の曲線美はなぜ生まれたか」

女性の曲線美はなぜ生まれたか―進化論で読む女性の体

女性の曲線美はなぜ生まれたか―進化論で読む女性の体


以前私が書評したデイヴィッド・バラシュと,ジュディス・イヴ・リプトン夫妻による「How Women Got Their Curves and Other Just-So Stories: Evolutionary Enigmas」が邦訳され,白揚社から「女性の曲線美はなぜ生まれたか」のタイトルで出版された.奥付では7月10日発行になっているが,既に書店店頭に並び,アマゾンでも購入可能になっているようだ.訳者は越智典子.生物学の素養のある訳者ということなので安心だ.

本書はヒトの女性のセクシャリティに関するいくつかの謎(なぜ出血をともなう生理があるのか,なぜ排卵が隠蔽されているのか,なぜ女性の胸は大きくて男性はそれに惹かれるのか,なぜオーガズムがあるのか,なぜ閉経するのか)について様々な仮説を検討していくものだ.最終的には結論は難しいということになっているものが多い*1が,その真摯な検討過程が読みどころということになる.そしてこれは原書書名にJust-So Storiesとあることからもわかるようにグールドのスパンドレル論文に対する痛烈な反論という性格も持つものだ.訳者解説にはグールドとの関わりは書かれていないが,書名に「なぜなぜ物語」を入れないのならそこも解説しておいた方がよかったように思う.


原書はこれ.なお私の書評はhttp://d.hatena.ne.jp/shorebird/20091001


How Women Got Their Curves and Other Just-So Stories: Evolutionary Enigmas

How Women Got Their Curves and Other Just-So Stories: Evolutionary Enigmas

*1:有力説があるとしていいのも排卵隠蔽と閉経ぐらいだろう.ヒトの女性のセクシャリティについては実際に未解決の謎だらけだ