「Sex Allocation」 第11章 一般的な問題 その13

Sex Allocation (Monographs in Population Biology)

Sex Allocation (Monographs in Population Biology)


11.4 残る問題

冒頭でウエストは面白い逸話を紹介している.

かつてGCウィリアムズは「私は性比の問題は解決したと思う」と1966年にコメントした.これはハミルトンの革新的な論文が出版され,性比リサーチの黄金時代が始まる1年前のことだった.

すべて解決したと考えるのは常に尚早だという戒めだろう.ここでは将来的なリサーチにかかる一般的な問題を取り上げるとしている.



11.4.1 性比調節の適応度への影響

性比の多様性については多くの研究がなされている.しかし性比調節が適応度に与える結果についてのリサーチは全く欠けている.

  • これはトリヴァース=ウィラード効果を調べる際には大きな問題になる(第6章でもこの指摘をしている).
  • そしてそれだけではなくLRCやLREにおいても重要な問題だ.
  • 鳥類と哺乳類についての性比調節リサーチは多いが,その結果の適応度まで調べたものはごくわずかしかない.
  • 母の地位の継承のような複雑性が加わる場合には,繁殖成功(子の数)ではなく,繁殖価(≈孫の数)を調べなければならない.しかしこれを調べたリサーチはない.
  • もうひとつ重要なのは爬虫類のESDについても適応度へ与える結果が示されていないことだ.
  • これらはLMCにおいては重要ではない.というのは異なる性比調節戦略による適応度影響は配偶システムから生じるものであるからだ.同じように社会性膜翅目昆虫の性比も配偶システム由来なのでこの問題はない.


こはちょっとわかりにくい.TWやESDについては環境条件がどちらの性になる方が有利かに効いてくるということが前提になっているので,それが本当かどうかを調べる必要があるが,LMCにおいてはそれは配偶システムの結果当然生じるので,実証的に改めて調べる必要はないということだろう.