From Darwin to Derrida その179

 
第13章で意味について語ったヘイグだが,第14章では自由について語るようだ.ここでも詩の引用から始まっている.

第14章 自由の過去と将来について その1

 

I was born by the river in a little tent,
And just like the river I’ve been running ever since
It’s been a long, long time coming,
But I know a change gonna come, oh yes it will.
 
私は川沿いの小さなテントで生まれた
そこから走り続けてきた,ちょうど川のように
そしてはるかな時間が流れた
しかし変化が起こることは知っている ああそれは起こるのだ

サム・クック(1931 - 1964)

 
調べて見るとサム・クックはソウルミュージックやゴスペル系のアメリカのミュージシャン.ここにあるのは「A Change Is Gonna Come」という歌の歌詞.この曲は1963年にアフリカ系であるクックがルイジアナの(当時ルイジアナ州では合法であった)白人専用ホテルでチェックインしようとして(予約済みであったのに)拒否され,激しく抗議したところ治安紊乱容疑で逮捕されたことがきっかけで作られた曲で,のちに公民権運動の象徴のような曲になったのだそうだ.だからここでの「変化」は黒人差別はいずれなくなるという意味になる.
 
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  • 生命は解釈だ.RNAワールドの始まりの時点から,遺伝可能エージェントたちの間にそれまで解釈不能だったものに意味を見いだす解釈の軍拡競争が花開いたのだ.新たな情報を得た,あるいは新しい意味を見いだしたエージェントたちは,愚鈍なエージェントには見えないリソースを利用することや,愚鈍なエージェントには避けることのできない危険を避けることができた.

 
RNAが自己複製子である以上,当然ながら自然淘汰の対象となる.それはヘイグ的には意味を見いだす解釈の軍拡競争ということになる.
 

  • このプロセスの中で,最初テキスト(情報の保存)とパフォーマンス(世界の中での活動)として説明されたRNAは,DNA(過去の自然淘汰の保存記録)とタンパク質(効果的なアクター)の間のメッセンジャーとしての役割を負うことになる.複雑性と解釈の正確性は遺伝的テキストの高忠実な解釈者の進化によって可能となった.つまり,mRNAからタンパク質への翻訳についてはリボソームが,DNAからRNAヘの転写についてはRNAポリメラーゼが,保存情報のコピーについてはDNAポリメラーゼが進化したのだ.

 
前章ではRNAが情報伝達,触媒機能をかねるRNAワールドの世界が中心だったが,ここではそこからの進化が描かれる.自然淘汰の結果,情報保存と(世代間の)伝達機能はより正確なDNAに移り,触媒機能はより機能的に高い潜在的可能性を持つタンパク質に置き換わり,RNAはその間で情報を伝達する役割のみをになうことになる.