レビュー 「Decision Science for Future Earth」第1章

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「Decision Science for Future Earth: Theory and Practice」は持続可能な社会を築くための「決断科学」を提唱する書物であり,九州大学の「持続可能な社会を開く決断科学大学院プログラム」への取り組みの成果物の1つとなるものである.本書はオープンアクセスになっており,誰でもフリーでダウンロードできる*1.編者はこのプログラムの推進者である矢原徹一.矢原は2017年に決断科学の入門編として「決断科学のすすめ」という本も書いている.本書では第1章で全体の概念フレームが説明され,第2章以降は実際に取り組んだ事例をもとにした解説になっている.ここでは矢原が執筆している序言と第1章のみレビューしたい.
 

序言

 
序言では現在の世界が大きなターニングポイントにあること,それは気候変動問題に見られるようなグローバルな連結の強化,世界人口が2050年ごろには減少に転じる見通しとなってきたこと,情報量が非常に増えて玉石混交になっているという背景があるからだということが指摘されている.そして社会問題の解決にはよい意思決定が重要であり,そのためには社会科学と自然科学を統合した決断科学が重要だとしている.
 

第1章 将来の地球のための決断科学:概念的枠組み

 

1. 導入

 
導入では持続可能な社会の構築,SDG’sの達成のための科学を提供したいことがまず示され,これまでのさまざまな取り組みから「利益の衝突の中でどのようにプロジェクトをデザインするか」「自然科学と社会科学とを統合するようなフレームをどう作るか」「どのように社会を持続可能に転換させるか」という3つの課題が浮かび上がってきたとする.これを解決するにはヒトの行動と意思決定を合わせて取り扱う「決断科学」が必要だと宣言している.
 

2. 持続可能な社会のための決断科学の概念的枠組み

 

2.1 IDEAサイクル科学.意思決定と適応的学習のための反復プロセス.

 
著者たちはよい決断のためのフレームワークとしてIDEAサイクルを提唱し,こう説明する.

  • ステークホルダーは決断しなければならない.その中で選択肢には多かれ少なかれ仮説に依拠している部分や不確実性がある.さらにヒトの認知にはさまざまなバイアスがあることが知られており,その影響も無視できない.
  • ここで私たちはIDEAサイクルを提唱する.これはアイデアの創出,デザインと意思決定,実行,結果の評価を1サイクルとして,それをどんどん回していくというものだ.

 

  1. アイデアの創出:多くの社会問題は伝統的な思考では解決できず,新しいアイデアの創出が必要になる.そこではデザイン指向,感情的なコンテンツの考慮が重要になる.科学的な仮説発見手続きとしてはアブダクションが重要になる.
  2. デザインと意思決定:次にコストベネフィット分析により特定の選択肢を選ぶ.認知バイアスを考慮に入れたリスクコミュニケーションが重要になる.また多くのステークホルダーに参加してもらうのもコンフリクトを下げる上で重要になる.
  3. 実行:次に選んだ選択肢を多くのステークホルダーと協力しながら実行していく.この段階では協力の保持が重要で,しばしば共有地の悲劇が問題になる.
  4. 結果の評価:実行の結果を評価する.そしてそれを次のサイクルで生かし,選択肢を改善していく.

 

2.2 IDEAサイクルといくつかの先行コンセプトの関係性

 
ここでよく似た先行手法との比較,そしてなぜIDEAという形で提案するかの理由説明がなされている.先行手法として取り上げられているのはPDCA,適応的マネジメント,ラングによるトランスディシプリンの概念的モデル,構造的意思決定になる.
 

2.3 持続可能な社会のための決断科学の基礎としての進化理論

 
著者はIDEAサイクルをうまく回すためには,科学的思考とデザイン思考をどう統合するか,特定の選択肢を選ぶコンセンサスをどう作るか,社会的ジレンマの中でどう協力を維持するか,適応的学習でどう問題解決能力を向上させるかが問題になると指摘し,それらはヒトの認知,意思決定,行動に関連することから「決断科学の基礎にはヒトを理解するための進化理論が必要である」とする.そしてかつて社会科学は進化を受け入れようとしなかったが,現在状況は変わりつつあると指摘している.そしてそれは自然科学的なヒトの理解が大きく進んだことが影響しているとし,3点指摘している.
 

  • ヒトが,政治姿勢,道徳的基礎,パーソナリティ,認知能力などについて遺伝的に多様であることの証拠が積み上がっている.これらは私たちがさまざまな社会的問題についてとる態度が個人によって異なっていることを意味している.私たちは異なる道徳的信念を持つ人の間で協力できるような社会的環境の構築を必要としている.
  • ヒトは基本的に非常に協力的な種である.それをもたらした淘汰圧については論争が続いているが,直接,間接の互恵性,報復(罰)や名声の考慮などの協力推進メカニズムがあることがわかっている.そしてこれらのメカニズムにより内集団びいきと外集団への敵意も生み出される.私たちはグループ間のコンフリクトを避けるための何らかの協定やメタ道徳を必要としている.
  • ヒトのモラル的意思決定は(システム2による熟慮的思考が割り込まない限り)システム1と呼ばれる直感的な認知システムによっている.そしてこの直感的なシステムには多くの認知バイアスがある.私たちはこれらのバイアスを避ける努力をしなければならない.

 

3 失敗から学ぶ コデザインのガイドライン

 

3.1 グループ意思決定の脆弱性

 
著者はさまざまなステークホルダーと科学者のコデザインは重要であるが,それは常にうまくいくわけではないと指摘する(例として福島第一原発で地震と津波によるリスクが予見可能であったのに対策がなされていなかったことをあげている).そしてグループ意思決定の失敗について解説している.

  • ジャニスは「グループ思考」という現象を指摘した.これはグループの中で事態の正確な評価をせずに論争を避けようとする同調圧力により決定が歪むことをさす.
  • これには数理モデルリサーチもなされており,またさまざまな研究者が「暗黙プロファイルパラダイム」「グループ分極化」「集合的無知」などの概念を用いて同様のことを主張している.

 

3.2 予見可能なサプライズ

 
著者はワトキンスとバザーマンが予見可能な危機を防ぐことの失敗を「予見可能なサプライズ」と呼んだことを紹介し,これにはさまざまなシステム1のヒューリスティックスとエラーマネジメント理論から予測されるバイアスがからんでいるとしてその解説をしている.
ヒューリスティックスとしては代表性ヒューリスティック,利用可能性ヒューリスティック,アンカリング,確証バイアスを説明し,エラーマネジメント理論については警報器原則からリスクの大小に応じて予測がバイアスを受けること,現状維持バイアスや正常性バイアスと関連することを説明している.またグループ意思決定においてこれらのバイアスが「環境評価の失敗」「統合の失敗」「インセンティブ付けの失敗」「学習しない失敗」に結びつくことを説明している.
そしてこれらのバイアスには気をつけなければならないが,IDEAサイクルなどの仕組みにはグループ思考の問題や認知バイアスへのフォーカスがなく,これらの問題には別途ガイドラインが必要だとする.
 

3.3 ステークホルダー間のコデザインのためのガイドライン

 
バイアスを排除するのはデバイアシングと呼ばれる.著者たちはこれには心理学的なアプローチが有用だとし,ルーウィンの3ステップモデルを紹介する.これは解凍,変化,再凍結と呼ばれるステップを踏む.またここでは外側から望ましいとされる方向に誘導するナッジについても解説している.
しかしこれらは特にグループ意思決定にフォーカスしているわけではない.グループ意思決定にフォーカスしているフレームとしてはハーバートとエステスの「悪魔の代弁者」フレーム,メイソンの「弁証法的質問法」を紹介している.またこれらのフレームは論理的なものだが,感情面の注意も払うべきだと指摘する.感情面の問題にとっては関係者間の信頼が重要になる.そして最終的には著者は次のガイドラインを推奨している.

  1. ステークホルダーを(意見が異なるからといって)排除せず,彼らの意見を聞く.
  2. 情報は公開する
  3. 外部レビューを利用する
  4. 同意できる共通のゴールをおき,対面の議論や共同作業を通じて信頼の醸成を図る.

 

4 ローカルコミュニティの成功から学ぶ

 
ここではいくつかの成功例からの教訓が並べられている.指摘されているのはファンディング,リーダーシップ,知識の統合,コマネジメントシステムの構築,適応的プランニングとマネジメント,市民と専門家と外部機関の協力,科学者の役割(市民科学への貢献,伝統的知識へのリスペクト,社会的倫理的経済的観点を無視しないこと,ゲームチェンジャーの役割,メディエーターの役割),社会科学と自然科学を統合して問題解決型の科学をつくることの重要性,法律,社会的絆,社会的記憶などだ.
また著者自身のがかかわった例として,屋久島,対馬,朝倉市,カンボジア,インドのケースが詳述され,科学者の役割についても改めて詳しく解説されている.
 

5 持続可能な未来に向けてどのように社会を変えていけるのか

 
著者はまずこれまであげた成功例は地域社会にものであること,グローバルな問題の解決はそれよりはるかに難しいことを指摘する.そこにはヒトの協力が大きなグループでは不安定になりやすいこと,しばしば国家間や民族間に重大なコンフリクトが存在することによる.そしてこの難しい課題への方向性を議論している.
 

5.1 参加プロセスの促進

 
著者はまず生物多様性の問題についての国際協力を考察する.多くの生物多様性問題はローカルな問題だが,生態系はグローバルにつながっている.そしてUNESCOやさまざまなNGOを解した国際協力の例が示されている.
 

5.2 異なる価値システムを持つグループ間コンフリクトの抑制

 
ヒトの協力は大規模グループ内では不安定になるが,それでも協力を可能にしている例もある.著者はそれを可能にしているのはヒトの道徳的行動,計画したり自己抑制できる能力,言語,そして開放性と良心性というパーソナリティだとする.さらに罰,名声,文化,社会規範も協力促進に働きうることも指摘される.ここでハイトによる象使い(理性)だけでなく象(直感)に働き掛けることの重要性の指摘,グリーンによる理性の役割はもっと大きいという反論,内集団と外集団だけでなく第三集団も含めた相互作用の中で働く「グループマインドの理論」を紹介する.そして著者は価値観の異なるグループ間のコンフリクト抑制には,理性への働きかけとグループマインドの理論を取り込んだ道徳感情への働きかけの両方が重要だとまとめている.
 

5.3 制度の改善

 
著者はこれまでの成功例から見えることの1つとして制度の改善が非常に重要だと指摘する.著者があげているのは1990年代以降日本において環境法制が整備されたことだ.ではどのようにすれば制度は改善されるのか.ここで著者はノースによる制度とヒトの信念の共進化モデルを紹介しつつ,その市場の競争により制度が改善されるという前提に疑問を呈している.そして異なる価値システムを持つステークホルダー間に共通のゴールを設定して協力を推進させることの重要性を説いている.
 

5.4 教育と適応的学習の強化

 
環境的な不確実性は知識の蓄積により減少させることができる.だから教育と適応的学習が重要になると著者は主張する.そしてヒトには複数の記憶システムがあること,直感的システムと熟考システムを場面に合わせてうまく使うことの重要性,適切な報酬を設定する適応的学習が有用なこと*2を指摘する.
 

5.5 持続可能な社会構築のために恐怖ベースではなく希望ベースで行動すること

 
著者はスナイダーの希望理論を紹介し,恐怖に駆られて行動するより希望に向かって行動する方がより広い視野で実践的に行動できるとする.そして恐怖をあおるより.世界は改善しているというデータをきちんと提示することの重要性を指摘し,Gapminder,One World in Dataなどの取り組み,ピンカーの本「21世紀の啓蒙」などを紹介している.そして科学者は過剰な恐怖メッセージを与えるべきではなく,教育と希望のメッセージの有用性を信じるべきだとする.
 

5.6 持続可能な将来に向けての制度と知識の進化

 
最終節にはまとめがおかれている.

  • ヒトは文明を持ち,地球環境を激変させてきた.しかし環境を破壊するだけでなく,片方でそれを持続可能なものにしようと努力もしている.(産業化以降の人口爆発で難しくなったが)農業はそうした持続可能性を追求する試みの1つと見ることもできる.そして農業に関連する知識の蓄積は最初期の科学の発展の基礎となった.
  • ヒトの作り出した知識のうち最も影響の大きなものの1つがダーウィンの進化理論だ.それは生物多様性とは何か,ヒトの身体や心がどうデザインされているかの理解を可能にし,文化進化による社会変化の理解にも応用されている.(生物進化と文化進化の概念的な比較が解説されている)
  • 適応的進化と(文化進化による)社会変化は2つの類似点を持つ.そこに最終目的がないこと,どの表現型が有利かは環境に依存することだ.
  • そして社会進化が独特なのは,それがヒトの予測能力,デザイン能力,変化能力によってドライブされているところだ.だからヒトの社会は現在の環境だけでなく,将来の予測される環境にも適応することができる.
  • そして社会進化が独特なもう1つの点は,競争だけでなく,ヒトの協力によってドライブされるということだ.だから社会は個人のメリットに向かってだけでなく,社会全体のメリットに向かっても進化できる.
  • この2つの独特性がヒトの社会の持続的改善を可能にしたのだ.

 

  • 本章で,私たちはIDEAサイクルを用いた意思決定と適応的学習が,多様なステークホルダーの協力のもとで,新しい知識の蓄積と制度の改善に効果的だと主張した.また進化生物学,ダーウィンのアイデアが自然科学と社会科学を統合した解決指向の分野横断的科学の進展にとって有用だとも主張した.さらにヒトのコンフリクトと協力についての認知の視点から,分野横断的プロジェクトのコデザインに向けたガイドラインを提案した.また過去の成功事例をレビューした.そして最後に私たちは持続可能な社会の構築に向けて5つの原則を提唱した.
  • 私たちは確かにグローバルな環境問題,新規感染症の脅威,景気停滞などのSDG’sに埋め込まれた問題に直面している.これらは解決が難しいように見えるかもしれない.しかしながら,これらすべての問題は制度,知識,社会的絆などの社会要素を改善することによって解決可能だ.科学者のキーになる役割は問題解決に必要な諸分野の統合,潜在的解決策および具体的選択肢の提示だ.進化理論を用いた自然科学,社会科学,人文科学の統合がこの解決に貢献するだろう.私たちはこれが社会を持続可能に変容させるグローバルな努力をサポートする最もよい方法だと信じている.

 
 
 
本書の第1章で示されたフレームは「価値システムの異なるグループ間のコンフリクトが存在する中で,どのように持続可能な社会を構築するためのよい意思決定ができるか」について,さまざまな生物多様性や環境保全プロジェクトにかかわってきた経験をいかして練り上げられた内容になっている.
内容的には,まずこのような問題についての意思決定について「解決策の案を作って,やってみて,結果を評価し,次に生かす」という適応学習的なサイクルが有効だと主張し,さらに問題解決にはヒトの認知の歪みと(互いに外集団と認知される)ステークホルダー間のコンフリクトが障壁となるが,それを乗り越えるには進化生物学的な知見を生かした統合型科学が有用であると指摘し,ここまでの経験を通して見えてきたいくつかの知見を紹介するというものになっている.さまざまな経験を踏まえているだけあって内容は良く練り込まれていて説得力もあると感じる.

なお個別の論点について感じた私の感想も少し記しておこう.

  • 現在の世界が大きなターニングポイントにあるという認識の背景に「世界人口の減少が見通せるようになってきたこと」をあげているのは,危機を煽るだけでなく希望を描くべきだという著者たちの主張と整合的で好感が持てる.
  • 意思決定サイクルについて実務的によく使われているPDCAサイクルに準拠せずに,独自のコンセプトとしてIDEAサイクルを提唱している.プランのところにより重点を置きたい(アイデアの創出と選択肢のデザインを分ける)というのはわかるが,(PDCAサイクルのプランの部分をより詳しく論じるという形でなく)あえてなじみのない新規のフレームとすべき理由についてはややよくわからない.本章を読んだだけでは,実際にやることはあまり変わらないのではないかという印象だ.
  • 意思決定の障壁について,価値システムの異なる(互いに外集団と認知される)ステークホルダー間のコンフリクト,グループ思考バイアスやその他の認知バイアスが取り上げられている.これらが難しい課題であることはその通りだが,実際によく見られる愚かしい意思決定はしばしばエージェンシープロブレムの現れであることが多いように思う.これは組織の目標と,その執行者の個人的インセンティブがずれている(ある種の利益相反の)ために生じるものであり,組織のガバナンスとも関連する*3.この組織デザインの問題が正面から扱われていないのは残念に感じる.
  • 価値システムの異なる(互いに外集団と認知される)ステークホルダー間のコンフリクトの問題については,コデザインのガイドラインが提唱され,理性と感情にともに働きかけることや共通のゴール設定の有効性が説かれている.もちろんこれらのやり方に沿ったほうが良い結果につながりやすいだろう.しかしここにはより深い難しさがあるように思う.まず意見を聞き,情報を公開し,外部レビューを取り入れても全く価値観が折り合わないということはしばしば生じるだろう.理性的に議論を誘導しようとしても,特に政治的な分断があれば,ヒトは理性的な議論に従うのではなく,自分が何者であるか(どの党派に属していて,その忠誠心を示すにはどうするか)に従って行動しがちだ.(ハイトの象と象使いの議論にそって)感情に働きかければよいという議論もなされているが,それもうまくいかないときの方が多いだろう.共通のゴールもうまく設定できないことが多いだろう.最終的に価値観が折り合わないときにどうするかという深刻な問題についても何かコメントがあって欲しかったところだ.
  • 細かいところだが,ヒトの大規模な協力を可能にする要因として,ヒトのパーソナリティの開放性と良心性があげられている.しかしこの開放性と良心性はヒトのパーソナリティの多様性を説明するための次元軸であり,開放性や良心性についてそれが高い人や低い人がいることの説明の道具だ.協力を可能にする要因として扱うには違和感がある.(開放性や良心性が高い人が大規模な協力を可能にしているという趣旨かもしれないが,それならそう書くべきだし,良心性の低い人のただ乗り問題にも触れるべきだろう)

 
 
関連書籍
 
矢原による一般向け入門書.私の書評はhttps://shorebird.hatenablog.com/entry/20170331/1490956286

 

*1:ただしサイズがかなり大きいので注意が必要だ.(PDFそのままなら問題ないが,アンダーラインや複数端末の同期などの事情から)私はepub形式でダウンロードし,mobi形式に変換してKindleで読もうと試みたが,サイズが大きくKindleライブラリーに転送できなかった.いろいろと試みて最終的にはmacOS上の「ブック」アプリでepubのまま読むこととなった.

*2:著者はSDG’sという目標設定はその意味でうまく設計されていると指摘している

*3:たとえば著者は福島第一原発事故における適切な意思決定の欠如の原因をグループ思考バイアスを含む認知バイアスに求めているが,認知バイアスというより,津波対策を提唱するべき立場の人間にとってそれを提唱することが人事評価上ネガティブに扱われるリスクが大きかったということの方が効いているのかもしれない.