Animal Behavior 11th edition Chapter 14 その11

Animal Behavior

Animal Behavior

Amazon
 

第14章 ヒトの行動 その11

 
男性の配偶者選択.まずヒトの男性は短期的配偶戦略だけでなく,長期的配偶戦略もとること,配偶者選好としては繁殖力を示す容姿,体型を好むだろうというところまで解説してきた.
ここから男性は女性の排卵期を見抜くことができるかという問題が各論として取り上げられている.
   

男性の配偶者選択(承前)

 

  • 女性が妊娠できるのは月経周期の中で限られた期間(排卵期)だけだ.だから男性はこの排卵期にある女性の特徴を特に好むことが予測できる.多くの霊長類ではメスはこの期間を赤い性的腫脹により明確に示すが,ヒトではこのような明確なシグナルはない.

 
ここでヒトの特徴である「排卵隠蔽」の問題が登場する.この究極因は非常に興味深く,激しく論争されているテーマだが,ここではスルーされ,「一見排卵は隠蔽されているが実は(無意識的に)見抜けるのではないか」が扱われる.
 

  • かつては,女性も男性もいつ女性が排卵期なのかを知ることはできないと考えられていた.しかしこれを男性も女性も探知できるという証拠が積み重なっている.女性はより魅力的になり,それは顔面,声の高さ,歩き方,そして匂いに現れる.男性はこの時期の女性が来たTシャツの匂いに惹かれ,テストステロンレベルを上昇させる(ミラーとマナー2010).
  • またピルを服用してない排卵期のアルバカーキのラップダンサーはチップを2倍も多く得ることができるというリサーチがある(ミラーほか2007).このような相関関係を真に理解するにはこれを引き起こすメカニズムを解明することが重要だ.これはまだテストされていないが,リサーチャーは,チップを多く得たダンサーとそうでないダンサーではダンスの動きや衣装や会話の状況などに差が無いことを確かめており,おそらく男性客は(無意識のうちに)エストラディールレベルを匂いか何か別の方法で測定しているのではないかと考えられている.

 
ミラーのこのリサーチは最初に聞いたときにはそのアイデアの秀逸さに脱帽した覚えがある.著者たちも同じような印象を持っているようで詳しく紹介されている.
 

  • ピルの服用の有無は,男性からどう評価されるかだけに影響するのではなく,女性自身の配偶者選択にも影響するかもしれない.例えばピルを服用していると遺伝的に似ていない男性への評価を下げるかもしれない.この「女性は排卵期に遺伝的により魅力ある男性を好むようになる」という「排卵期シフト仮説」は50以上の研究のメタアナリシスで頑健に支持されている.女性の好みは月経周期に沿って変化する.排卵期には男性顔,より左右対称な男性を好むようになる.この変化には神経系や内分泌系のメカニズムが関わっているだろう(詳しく議論されている).これらの変化は配偶相手が平均以下の女性が無意識にペア外から「よい遺伝子」あるいは免疫系に有利な「補完的遺伝子」を確保しようとして生じるのだろう.(MHCの多様性の免疫における有利性が説明されている)

 
そして最後に排卵周期の話に関連してもう一度女性の配偶者選択基準に話が戻っている.