
大会初日 11月29日 その2
口頭セッション1のあとはポスターセッションが90分.
いろいろバラエティのある発表が並んでいて楽しかった.
その後夕方の口頭セッション2に
口頭セッション2
日本企業の集団儀礼と凝集性:教義的かつ苦痛を伴わない儀礼によるアイデンティティ融合の促進 仁井田英佑
- ヒト社会で行われる儀礼には様々なものがあり,火渡り,入社式の社長訓示,スポーツ選手のルーティーンなどがある.ホブソンは儀礼について,形式的,反復的,象徴的,直接的な意味がないなどの特徴を挙げている.機能についても認知的なもの,社会的なものなど様々な議論がある.ホワイトハウスは宗教的な儀礼について教義的,図象的の二態様論を提唱した.宗教儀礼以外では.小規模集団における個人的な絆形成がよく議論される.
- キムは現代社会における集団儀礼の機能として,活動の意味付与,組織市民行動を挙げている.
- ここではキムの分析が日本企業に当てはまるかを調べた.背景にはWEIRDの問題意識,企業組織文化の日米差がある.日本企業への従業員へのオンラインアンケート調査により,参加者の認知・感情,アイデンティティ融合の側面を調べた.
- 結果は集団儀礼の儀礼性は,仕事の有意未成,組織市民行動の両方と正の相関があった(キムの知見が再現された)
- また,ホワイトヘッドの二態様論に基づいて儀礼の特徴を(苦痛,教義的などに)因子分析してアイデンティティ融合との関係を調べた結果,アイデンティティ融合については苦痛因子が負の,教義的因子が正の相関を示し.苦痛なしの教義的な儀礼によってアイデンティ融合が機能する可能性が示された.
発表者はリクルートのマネジメントソリューション,人事領域ともかかわっているということで,日本企業の具体的な所作について発表であり,いろいろ具体的で面白かった.苦痛とはどのようなものかも例示されていたが,その中で「退屈」というのがあったのにはちょっと笑った.
狩猟採集⺠と食糧生産⺠の関係性の数理モデル:存続性と食餌幅の観点からの考察 河⻄幸子
(SNS言及不可マーク付き)
農耕牧畜民登場後の狩猟採集民の存続条件をモデル的に検討したもの
日常で耳にする音の言語化:発達における表現方略の変容 服部楓
子供が母語の音韻体系にどのように適応していくかを調べたもの,どちらかというと言語発達的な内容.
- 子供の言語発達において,子供は1年程度をかけて母語の音韻体系に適応していく.この全体像は関与する要因が多く分析が難しい.ここでは模倣音(ワンワン,グーなど)に絞って探索的に調べた.
- 方法的には「聞いた音を言葉で真似っこしてね」と頼んで*1,様々な刺激音を聞かせて,発話を録音し,スペクトラムを機械学習を利用して図示した.(いろいろな刺激音に対してどのような発話が現れるかが図示説明される)
- 結果:1歳ごろまでに音韻体系化が進む,それ以降は成人との差がなくなる,どの表現にカテゴライズするかについては差が出るということが示された.
進化力学系ゲームにおける制度の自己組織化 板尾健司
共有地の悲劇を防ぐ制度の創設を進化力学系ゲームにより分析したもの
- 共有地の悲劇の解決の1つは制度やルールになる.実際にはそれぞれの状況によりいろいろなルールが現れる.(たとえば3日ごとに利用,順番に利用,資源量に応じた調整など)
- この問題についてのこれまでの分析は,ゲーム理論に基づいていた.そしてあらかじめ協力と裏切りの選択肢があって,それぞれの利得が決められて分析されていた.しかしこのような分析では制度の安定性は分析できない.そこでこの枠組みを力学的に拡張し,プレーヤーの行動により環境状態が変化し,利得も変化するという形の進化力学系ゲームで分析した.(具体的には資源量x,各プレーヤーの豊かさyを環境条件とし,それが時間依存してx(t), y1(t), y2(t)という関数で表される.ここで戦略を決める重みづけパラメータをs, oとし,手の選択をx, sy1, oy2, に依存するとして,その戦略パラメータs, oの進化を考えるモデルになる.tは離散時間で,各プレーターはあるタイミングごとに資源を収穫するか見送るかを決めるイメージになる.利得は当初資源量と各プレーヤーの収穫により決まる.進化は集団の中に複数のサイトがあり,その中でランダムマッチングした相手と繰り返しゲーム対戦し,より豊かになった方が有利になる形で生じる)
- 結果,双方全期間利用だと利得が少なくなるので,まず何回かごとに利用する形が現れ,そこで(繰り返し囚人ジレンマで現れるような)搾取と罰の進化ゲームが生じる.世代が進むと何回かごとの利用が揃う同期状態となり,最終的に利用フェーズがずれる分業状態(双方の利得が最大になる)になる(進化動態の詳しい状況,進化的頑健性,効率性と認知負荷のトレードオフなどが説明される)
- この分析によりボトムアップ的な制度の自己組織化が説明された.
なかなか力の入ったシミュレーションで興味深かった.
以上で大会初日は終了だ.

*1:と,発表されていたと思うが,あとで考えると1歳でこの教示に答えられるのかはなかなか難しいようにも思う.私が何か聞き逃していたのかもしれない