ダーウィンとフジツボ展 

ダーウィン展

京都に行く用事ができたので気になっていた「ウサギノネドコ」なる場所で開かれているという「ダーウィンとフジツボ展」をのぞいてきた.
「ウサギノネドコ」は,京都の町屋造りを活かした渋い小さな建物の中にあり,生物標本及び鉱物標本を並べたおしゃれな標本屋さんかインテリアショップかわからないような不思議なスペースである.隣には同じコンセプトのカフェがあり,さらに2階の日本間が1部屋だけ宿泊施設として供されているようだ.場所は西大路御池から少し東に入った御池通り沿いである.



入ってみるとなるほどハイセンスな店舗だ.店内撮影可ということで大変楽しい.期間中には倉谷さんの講演なども企画されていたが,何しろ京都なのでそれは参加かなわず,展示物をみるだけに.



最初の展示物はダーウィンのフジツボ総説本の初版現物である.

「A Monograph of the Cirripedia / Lepadidae(1852), Balanidae(1855)」2巻本が鎮座ましましている.これは解説によると初版発行部数わずか800部で,当時博物学者や専門家以外に流通することはなかった.現在はほとんどは図書館に納められており,2巻そろって現存するのは珍しいそうだ.ありがたやありがたや.


2番目の展示物は世界最大サイズに成長する南米産フジツボ (Austromegabalanus psittacus

解説によると現地ではピコロコと呼ばれ食用にされているそうだ.(日本にも冷凍物が輸入され,イタリア料理屋でフジツボのフリットとして供されることもあるらしい)確かにでかい.ダーウィンファンとしてはそのうち食べてみたいものだ.


3番目は地味なプレパラート標本.
このような観察により19世紀にフジツボが甲殻類であることがはっきりしたということだそうだ.


4番目はクマサカガイに付着したミョウガガイ(Scalpellum stearnsii)(写真左側)

大きな巻き貝の上に有柄フジツボが付着している標本.ミョウガガイはミョウガの形に似ていることからその名が付いたそうだ.そしてダーウィンがフジツボの矮雄を発見したのはまさにこのミョウガガイを解剖していてということだ.なるほど味わい深い.


最後は二枚貝に付着するアカフジツボ(Megabalanus rosa

何とも美しい標本.解説によるとこのような形の標本は江戸時代に珍重され紫陽花介(アジサイガイ)と呼ばれて図譜にも収録されているそうだ.


いろいろ楽しそうな標本も売っている.私はとりあえず倉谷うららさん解説付きのフジツボガチャを2つ購入.狙っていたミョウガガイはゲットできなかったが,ミネフジツボとクロフジツボを入手した.



というわけでこじんまりとした展覧会でありかつ展示物も少ないが,いずれも小粋に厳選された展示物だ.大いに感銘した.この展覧会は5月8日までだ.ダーウィンファンは京都を見逃すことなかれ.


関連書籍


フジツボといえば何といっても倉谷うららさんのこの本.本の作りからしてめちゃくちゃ凝っている.あまりに凝りすぎたためかなおKindle化されていない.私の書評はhttp://d.hatena.ne.jp/shorebird/20090824#1251110455

フジツボ―魅惑の足まねき (岩波科学ライブラリー)

フジツボ―魅惑の足まねき (岩波科学ライブラリー)



そして上のミョウガガイのところにもふれたフジツボの矮雄に関しての最新の数理生物学の本.私の書評はhttp://d.hatena.ne.jp/shorebird/20160202