「The Ancestor’s Tale (The Second Edition)」

The Ancestor's Tale: A Pilgrimage to the Dawn of Life (English Edition)

The Ancestor's Tale: A Pilgrimage to the Dawn of Life (English Edition)


本書は2004年に出版されたドーキンスの大著「The Ancestor’s Tale」(邦題:祖先の物語)の第2版である.「The Ancestor’s Tale」はドーキンスがシモニ教授職に就いて教育指導や大学の雑務から解放された機会を活かして書き上げた大著だ.チョーサーのカンタベリー物語をなぞらえて,ヒトから始まって進化の経路をさかのぼって共通祖先までのそれぞれの分岐点(さかのぼっていくので物語では合流点ということになる)を尋ねていく巡礼物語を縦糸に,それぞれの合流点で出会う生物群に関連する進化生物学的なトピックを巡礼仲間の話として横糸にして語られている.初版出版当時は分子系統樹が次々に解析されていった時代であり,系統に関しての最新の知見とそのほかの進化生物学の興味深い話題がうまく組み合わさった大変刺激的な本だった.
そして出版後10年たち,さらに積み重ねられた新しい系統に関しての知見を入れ込んで改訂版が企画されたということになる*1.特に大きな技術的進展としては,個人の全ゲノム情報を用いたヒト集団の人口動態史の再構成技術,ネアンデルタール人などの古代DNAの解析があり,プレゼン方式としてはフラクタル型の系統樹が新たに提示されている.
そして新しい系統解析の結果が各章の内容に反映され,分岐系統樹自体についてもいくつかの改訂がある.また巡礼仲間としてチンパンジーシーラカンス,タヌキモが新たに加わって,様々な進化生物学の新知見についていくつかの話が追加されている.


ここでは改訂部分を中心にレビューしていこう.

序論

冒頭はなぜ分岐をさかのぼっていく形で叙述を行うかを説明する「後知恵の傲慢」,どのようにして過去の歴史を得ていくのかについての「全般的な序論」がおかれている.このあたりは初版通りだ.

合流0

ここからチンパンジーとの合流前のヒトの歴史についての構成を大きく変えている.初版では「旅の始まり」として農耕(家畜や栽培植物の人為淘汰,そしてヒトへも同様の淘汰がかかっている可能性)とクロマニヨン(文化の大躍進を扱う)の話を振り,そこから合流0(すべての現生人類の共通祖先)としてタスマニア(共通祖先とは何かをめぐる数理的な解説*2.分岐と隔離の関係を説明し,共通祖先は世界で最も隔離された集団の近く(タスマニア近辺は有力な候補になる)で数万年前にいただろうとしている)とイブ(共通祖先は遺伝子ごとに異なりうるものであること,ミトコンドリアイブのそのうちの1つであることを説明し,あわせてテンプルトンの人類集団の初期交雑の可能性の主張を好意的に紹介している*3)の話があって,さらに(この物語の例外である)現存しない集団との合流としてネアンデルタール,エルガスター,ハビリス,猿人と進めていた.


第2版では「旅の始まり」を廃して,人類についての話はすべて合流0と扱い.話の順序を,タスマニア,農耕,クロマニヨン,イブとした上で,ここ10年間の知見を,本文中に挿入改訂し,さらにイブの物語が大幅に加筆され,ネアンデルタールの物語がデニソワの物語と改題されて大きく内容が変更されている.
これにより第2版ではまず共通祖先とは何か,人為淘汰と現代も続くヒトの進化,そして共通祖先は遺伝子ごとに異なりうることの話を振ってから合流に話が進むことになる.イブの物語では,1人の人間の全ゲノムデータから多数の合着点を分析でき,それにより祖先集団のサイズ動態が推定できること*4,さらにそれを多くの地域のヒトについて積み重ねると遺伝子の流れの動態がよく見えてくることが解説されている.そしてデニソワの物語でサピエンス集団とネアンデルタールの交雑,そしてデニソワとの交雑の様子を説明し,種分岐の際にはこのような複雑な経緯をたどるのがむしろ一般的であろうことなどが指摘されている.種の分岐が単純なものではないことは初版でも強調されていたが,全ゲノム分析,古代DNA分析で特に人類集団においてその実体がより明らかになり,真の系統樹は遺伝子単位で描かれるべきものであり全体像は複雑であるというその説明も,より説得力を増しているように感じられる.そしてサピエンス集団と過去の絶滅人類集団との合流はそれほど簡単に記述できないとして記述順序の変更がなされているのだろう.

エルガスター,ハビリス(脳の大きさを論じる前に膨大なアロメトリーの解説がおかれているところが面白い)については大きく変更はないが,猿人については,最新の化石リサーチの成果を受けて「リトルフット」物語が「アルディ」物語に改題されている.二足歩行を扱う内容(ここでドーキンスは二足歩行について性淘汰的な説明に好意的でちょっと面白い)に大きな変更はないが,一部アルディピテクスの話が追加されている.

合流1

初版ではボノボの物語のみ収められていたが,第2版ではチンパンジーの物語として新しい話が挿入されている.そしてよく話題になる「ヒトとチンパンジーのゲノムは何%まで同じなのか」という問題が,その定義によって回答が異なってくる問題であること,突然変異率,サリッチとウィルソンの有名なリサーチ,分子時計,そして分岐年代推定などのテクニカルな解説が収められている.またボノボの物語(ヒトに近いのはチンパンジーボノボかという話題)も大幅に加筆されており,ヒトとの共通祖先以降にチンパンジーボノボが分岐したとしても,様々な系統間交雑があれば必ずしも両者と遺伝的に等距離であるとは限らないこと,遺伝子単位でみれば様々でありうること,実際に遺伝子単位で調べると,ヒトの遺伝子にはチンパンジーに近いもの,ボノボに近いもの,ゴリラに近いものが混じっていて,最新のリサーチではチンパンジーに近い遺伝子の方が多いことなどが解説されている.

合流2〜12

このゴリラとの合流(2)からローラシア獣類との合流(8)までには大きな改訂はない.
ゴリラの物語では発見時の記述から私たちの文化の人種差別傾向に触れ,オランウータンの物語では類人猿と旧世界ザルの分岐と,その後の類人猿の適応放散の中心地はどこかという推測*5がなされ,テナガザルの物語では分岐分類の基礎が解説される*6
新世界ザルとの合流では海を越えた分散と3色視覚の収斂進化,メガネザルとの合流では彼等が眼の中に反射板を進化させられなかったので非常に大きな眼を持っていること,キツネザルとの合流では海に隔てられた大きな島での独自の生物相の形成が扱われている.この中ではテナガザルの系統分析の話が大変充実している.
ツパイとヒヨケザルの物語は初版とほぼ同じで,系統樹推定の不確かさについての物語だが,まさにこの話を裏付けるように最新のリサーチの結果から,初版でヒヨケザルとツパイの両者と第9合流をすることとしていたが,第2版ではヒヨケザルと第9合流,ツパイと第10合流に変更している.
齧歯類とウサギ類の合流(11)でのマウスの物語ではDNA暗号が働く仕組み,ビーバーの物語では「延長された表現型」が取り上げられ,ローラシア獣類との合流(12)ではカバの物語としてクジラの進化,アザラシの物語として性的二型とオスオス競争型性淘汰が解説されている.なおマウスの物語のエピローグとしてエピジェネティックスの話が新たに挿入され,一部の論者の誇大宣伝振りが批判されている.あえて付け加えた背景も考えるとドーキンスの苦り切った顔が浮かんでくるようで楽しい.

合流13

第13合流解説の冒頭で,ここ15年で哺乳類の進化に関する理解が大きく変更されたと宣言されている.具体的には有胎盤哺乳類については4つの大きなスーパーオーダー(上目)を認めることとなる.これは真主齧上目,ローラシア獣上目,異節上目,アフリカ獣上目よりなる.そして前2者(あわせて北方真獣類)と異節類,アフリカ獣類の系統関係はなお決着していない(異なるゲノム領域で異なる結論となるリサーチが出されている)が,最新の証拠に従って系統樹を改訂するとしている.初版では異節類(アリクイ,アルマジロナマケモノなど)が第12合流,アフリカ獣類が第13合流としていたが,第2版では両者あわせて第13合流を形成することになる.ここでアルマジロの物語がナマケモノの物語に改題され,生物地理学と南アメリカの大きな生物相の解説にプレートテクトニクスの解説が追加されている.またアフリカ獣類についての解説は初版とほぼ同じだが,ツチブタについての解説が新しく追加されている.

合流14〜15

ここも大きな改訂はない.有袋類との合流ではフクロモグラの物語として「収斂」を扱い,単孔類との合流ではカモノハシの物語としてそのクチバシにある素晴らしい適応(対潜航空機のレーダーのような電気センサーによる3次元探査)を扱っている.このヒトにはない知覚システム適応の話はさらにホシバナモグラも登場させて詳しく語られていて読んでいて楽しいところだ.またこの直後の哺乳類型爬虫類のまとめ(絶滅動物群なので合流とは扱っていない)も分岐分類や哺乳類とは何かということを詳述していて充実している.

合流16

ここで爬虫類と鳥類(あわせて竜弓類Sauropsidaと呼ぶようだ)に合流する.合流前の竜弓類の系統樹について初版ではカメが最も根元での分岐群と扱われていたが,その後のリサーチの結果を受けて根元からトカゲ,カメ,ワニと鳥類の順序で分岐という形に改められている.あわせてヨウガントカゲの物語が新しく追加されている,これはドーキンスガラパゴスを訪れた際のガーディアン誌に載せたエッセイの収録でサンチアゴ島の溶岩台地の風景とそこを走り回るトカゲの想い出が語られている.
次の3つの物語には大きな改訂はない.ガラパゴスフィンチの物語で種分化(なお最新の遺伝子リサーチの結果が加筆されている),クジャクの物語でメスの選り好み型性淘汰(ヒトの二足歩行や脳の増大化にかかる性淘汰の影響についてかなり入れ込んで記述されていて面白い),ドードーの物語で島環境への適応と環境変化による絶滅が扱われている.いずれも力の入った物語だ.
そしてエピオルニスの物語で大きな改訂がある.初版では走鳥類の(飛べないという祖先形質込みの)ゴンドワナ起源とその分散が語られていたが,その後のリサーチにより,確かに走鳥類は自然分類群だが,飛べない形質は実は独立に何度も進化した収斂形質であることが明らかになったことが語られている.ここは初版でドーキンスがかなりこだわって謎を語っていたところで,それが解決されたという感慨もこもっている.(なお初版にあったエピオルニクスのエピローグとしてのプレートテクトニクスの解説は合流13のナマケモノの物語に移されている)

合流17〜22

両生類との合流(17)では大きな改訂はない.サラマンダーの物語として輪状種とヒトの心にある離散的な認知傾向*7アホロートルの物語でネオテニーの問題を扱っている.肺魚の物語(合流18)は,(初版で両生類の解説とトビハゼの物語で語られていた)陸上への進出への淘汰圧についての物語に差し替えられている.初版ではローマーの「陸上への進出は干上がった沼地で堪え忍んで水に戻るための適応」説があまり支持されていないことに不満を述べていたが,ここではそれを発展させたバルブスの「潮だまりから潮だまりへの移動のための適応」説を好意的に紹介している.そしてシーラカンスの物語(合流19)が追加され,簡単に「生きている化石」の話を振った後に,初版の肺魚の物語にあった分子時計系統樹推定の話が収録されている.
条鰭類との合流(20),軟骨魚類との合流(21)では大きな改訂はない(ただしトビハゼの物語がシーラカンスの物語に吸収されている).リーフィーシードラゴンの物語で多様な形態の進化,カマスの物語で浮袋,シクリッドの物語で種分化と適応放散,洞窟魚の物語でドロの法則の熱力学的な解釈,カレイの物語で同じ淘汰圧への異なる解決が扱われている.この中ではシクリッドの物語に力が入っている.
ヤツメウナギヌタウナギとの合流(22)ではヤツメウナギの物語として遺伝子重複が扱われているが,ここは最新の知見も入れて大幅に加筆されている.

合流23〜24

尾索類(ホヤ),頭索類(ナメクジウオ)との合流順序が初版と逆に改訂され,ホヤを第23合流,ナメクジウオを第24合流としている.尾索類との合流ではガースタングのネオテニー説とダーウィンの成体形態が後に進化した説について,初版では並列に解説されていたが,第2版ではDNA解析による新しい結果は(またも)ダーウィンが正しかったことを裏付けているとコメントしている.

合流25〜32

この8つの合流(棘皮動物(25),旧口動物(26),無体腔扁形動物(27),刺胞動物(28),有櫛動物(29),板形動物(センモウヒラムシ)(30),海綿動物(31),襟鞭毛虫(32))においては大きな改訂はない.第26合流の旧口動物は最大の合流になるので物語も多彩だ.ゴカイの物語で旧口動物と新口動物の体制の違い,アルテミアの物語で適応としての姿勢の逆転,ハキリアリの物語で農業,バッタの物語で種内品種の問題,ショウジョウバエの物語でHox遺伝子と発生,ワムシの物語で有性生殖の謎,フジツボの物語で形態の大きな変更,カギムシの物語でカンブリア大爆発を扱っている.この中ではバッタの物語ではどのように扱っても微妙で難しい人種の問題を正面からきちんと解説していて迫力がある.また発生,有性生殖,カンブリア大爆発の解説も力がこもったものだ.カンブリア爆発のところはグールドとの永年の論争の1つの論点にかかるものであり,ドーキンスの最終解答ともいえるところなのだろう.またカギムシの物語にはエピローグもついていて,遺伝子ごとの進化速度の説明に関して太田朋子のほぼ中立説を好意的に紹介している.ここも読みどころだ.
刺胞動物との合流でのサンゴの物語ではダーウィン珊瑚礁の形成に関する説明と生態系について取り扱って充実している.カイメンの物語ではその細胞が次の巡礼である単細胞生物の襟鞭毛虫に類似していることが示され,襟鞭毛虫の物語ではヘッケルの後成動物の襟鞭毛虫起源説と反復説が扱われている.

合流33〜38

ここからの合流(フィラステリア(33),DRIPs(34),菌類(35),不確かなグループ(アプソゾアほか)(36),アメーバ(37),植物とその他のスーパーグループ(38))は真核生物のスーパーグループに関連するところで最近大きく知見が広がっているところだ.本書でも新しい合流グループとその系統樹の解説には大改訂がなされている.様々なスーパーグループの解説は楽しい.またここではこのような根元の部分では系統推定のルーティングが難しいために結果の解釈に幅が出てしまうことにも解説がある.
個別の物語では,カリフラワーの物語で3/4法則(ここでは解説がよりわかりやすくなるように改められている),セコイアの物語で年代決定(年輪の縞模様パターンの合成から同位体比率を用いるものまで),ミクソトリカの物語で繊毛の起源が扱われている.そしてここで生物種によってゲノム量が大幅に異なるのはなぜかという問題がタヌキモの物語として新しく挿入され,非コード領域のゲノムについて調節機能が強調されるきらいがあるが,実際にはその大半がウィルス起源の配列やトランスポゾンなどの利己的な遺伝配列の大きさの問題であることが解説されている.なおこれがタヌキモの物語とされているのはタヌキモのゲノム量が非常に小さいことにちなむものだ.これがなぜなのかについては,おそらくリンの資源量の制限が非常に厳しいという淘汰圧への適応ではないかと説明されている.

歴史的ランデブー,合流39〜40,カンタベリー,ホストの帰還

本書の最後の部分には大きな改訂はない.まず真核生物の起源が「歴史的ランデブー」として解説される.マーギュリスによる葉緑体ミトコンドリア原核生物起源説が解説された後,第2版ではミトコンドリアとの合体により超利己的な遺伝要素が入り込み,それが核の起源になったという仮説,およびやはりミトコンドリアなどのオルガネルと核のコンフリクトが有性生殖の理由の1つであるという仮説についての解説が新しく加筆されている.
古細菌(合流39)真性細菌(合流40)と出会ってすべての巡礼がそろう.これまでその一部分のみを見せていたフラクタル系統樹も最後に全貌が示されて,地球の生物世界の全貌と無根系統樹の意味がわかりやすく伝わる.そして生命の起源がRNAワールド仮説から語られる.最後に「ホストの帰還」と称してもう一度生命の起源とその後の進化が生じれば同じ軌跡をたどるかという問題や進化容易性についてのドーキンスの考えが解説されて本書は大団円を迎える.

こうやってこの大著を最新の改訂とともに読めるのは私にとっては無上の喜びだった.個別の物語はドーキンスが選り抜いて持ってきた興味深い話題ばかりだし,全体の合流物語も見事だ.そしてここ15年の系統樹の知見の深まりも楽しめる.進化に興味のある人にとっては珠玉の一冊になることは間違いないだろう.



系統推定改訂のまとめ

最後に骨格となる系統樹の改訂をまとめておこう.

  • ヒヨケザルとツパイ:初版ではヒヨケザルとツパイの両者と第9合流をすることとしていたが,第2版ではヒヨケザルと第9合流,ツパイと第10合流(ただし2つのリサーチが別の結論を示していて確かではないとの保留付き)としている.
  • 異節類とアフリカ獣類:初版では異節類が第12合流,アフリカ獣類が第13合流としていたが,第2版では両者あわせて第13合流を形成するとしている.
  • 尾索類と頭索類:初版では頭索類(ナメクジウオ)が第23合流,尾索類(ホヤ)が第24合流としていたが,第2版では逆にホヤが第23合流,ナメクジウオが第24合流としている.
  • その他真核生物の根元の分岐:初版では第33合流から順番にドリップス(33),菌類(34),アメーバ(35),植物(36),植物以外の真核生物(37:不確かな合流として記述)としていたが,第2版ではフィスラテリア(33),ドリップス(34),菌類(35),アプソゾアほか(36:不確かな合流として記述),アメーバ(37),植物とその他スーパーグループ(38)としている.

またここで長谷川政美の「系統樹をさかのぼって見えてくる進化の歴史」(2014)で記述されているヒトからのさかのぼり分岐との違いも示しておこう.さすがに最近の本なので違いは少ない.

  • 頭索類,尾索類,棘皮動物:本書では合流の順序が尾索類(ホヤ),頭索類(ナメクジウオ),棘皮動物の3合流としているが,長谷川本では尾索類,頭索類と棘皮動物の2合流としている.
  • 刺胞動物(クラゲ),有櫛動物(クシクラゲ),海綿動物の位置関係:本書では刺胞動物,有櫛動物,海綿動物としているが,長谷川本では刺胞動物,海綿動物,有櫛動物の順序としている.
  • 長谷川本では無腸動物,センモウヒラムシ,襟鞭毛虫,フィラステリア,ドリップス,アプソゾアなどの分岐の根元にある小さなグループを省略している.またバクテリア(本書では古細菌(39)真正細菌(40))については,分岐としては扱っていない.


関連書籍



「The Ancestor’s Tale」は私の最も好きな本のひとつだ.最初に読んだのは米国版(上段左).米国版にカラー図版が省略されていることを知って追加購入した英国版(上段右),邦訳本上下(下段中央,左).いずれも大きくて重いハードカバーだ.なお私の初版の書評はhttp://d.hatena.ne.jp/shorebird/20060801
今回の第2版はKindle版.検索可能で画面内でそのまま辞書が開くのみならず,出てくる生物名をその場でググることができる(読書中においては解説だけでなく特に画像検索が重宝だ)のは本当に素晴らしい.


米国版

Ancestor's Tale: A Pilgrimage to the Dawn of Evolution

Ancestor's Tale: A Pilgrimage to the Dawn of Evolution


邦訳

祖先の物語 ~ドーキンスの生命史~ 上

祖先の物語 ~ドーキンスの生命史~ 上

祖先の物語 ~ドーキンスの生命史~ 下

祖先の物語 ~ドーキンスの生命史~ 下


同じくヒトから分岐をさかのぼって系統樹の歴史を語っている本.私の書評はhttp://d.hatena.ne.jp/shorebird/20150308

系統樹をさかのぼって見えてくる進化の歴史 (BERET SCIENCE)

系統樹をさかのぼって見えてくる進化の歴史 (BERET SCIENCE)

*1:なお初版の際にリサーチアシスタントとして膨大な分子系統の知見を整理したヤン・ウォンは,いくつかの章の共著者扱いだったが,今回の改訂に多大な貢献があったこともあり,本書の正式な共著者に格上げされている.

*2:最も現代に近い共通祖先がいる時点とその集団の誰もが共通祖先であるか現代に子孫を残していないかどちらかである時点とは異なるあたりの解説は深い.集団規模が一定でランダム交配を前提にするとこの2時点は1.77倍ほど異なる.

*3:これは初版出版当時はぁなり大胆な仮説だったが,その後明らかになったネアンデルタールやデニソワとの交雑の事実を考えると,ドーキンスの先見の明ともいえるだろう

*4:ドーキンス自身のDNAデータの分析により,実際に6万年前頃にボトルネックがあることが示されたことが紹介されている

*5:それはユーラシアであると推測できる.そして最節約原理が常に正しいとは限らないとコメントされている

*6:なおテナガザルの分岐図は最新のリサーチのものに差し替えられ,さらに新しく遺伝子ごとに異なる系統樹になることも示されている

*7:学生の成績をランク付けする話まで盛り込まれている