読書中 「Narrow Roads of Geneland Vol.3」第6章 第7論文 第8論

Narrow Roads of Gene Land: The Collected Papers of W.D. Hamilton: Last Words (Narrow Roads of Geneland: The Collected Papers of W.D. Hamil)

Narrow Roads of Gene Land: The Collected Papers of W.D. Hamilton: Last Words (Narrow Roads of Geneland: The Collected Papers of W.D. Hamil)

第7論文:More Covert Sex: The Elusive Females of Myrmecoladae (1992)
第8論文:Exotic Pests and Parasites (1995)
第7論文と第8論文(というより記事)はともにアリネジリバエについて
面白い生態の紹介が中心で特に理論的に面白い問題を扱っているわけではない


アリネジリバエは大変面白い寄生者でオスとメスで全く形態が異なり全く違うホストに寄生する.オスは自由生活をしてよく捕獲されて記載されるが,メスはホストの体内で一生を終えるのでほとんど捕獲されず,記載されていない.またオスもホストがわかっている種は少ない.


オスはアリに寄生して,寄生している間はアリの行動を変えて巣内にとどまらせる.寄生されたアリは行動パターンを変えるのみならず不妊になる.アリからでたあとは自由飛行してメスのいるホストを捜す.見つけると,一部対外に露出しているメスの血管内に精子を注入する.オスは成虫時には食事せず,交尾が終わると死ぬ.
メスはコオロギ類のホストの体内で一生を過ごす.葉巻のような体型で体の一部をホストの体外に出している.


このようなオスメスでホストを変える昆虫はカイガラヤドリコバチにも見られる.このグループの中にはいろいろな段階が見られる.基本のホストはカイガラムシ.そこからオスが体外寄生,メスが体内寄生であるもの,オスのホストはカイガラムシに寄生するハチに変わったもの,オスのホストがメスのさなぎになっているものなどが見られる.おそらくこのような段階を踏んでオスメスでホストを変える生態が進化したものと思われる.


この一種 C. fenyesi のオスは北アメリカの侵入種のヒアリに寄生する.メスのホストを見つけて増やせばこのヒアリを抑える天敵として利用可能になると思われる.


読後感;
このような寄生者がいることは全く知らなかったのでファーブルを読むようで興味深い.ただハミルトンの論文集と思って気合いを入れて読んでいるのにちょっと肩すかし論文がつづいている.次は期待.