読書中 「Narrow Roads of Geneland Vol.3」第12章

Narrow Roads of Gene Land: The Collected Papers of W.D. Hamilton: Last Words (Narrow Roads of Geneland: The Collected Papers of W.D. Hamil)

Narrow Roads of Gene Land: The Collected Papers of W.D. Hamilton: Last Words (Narrow Roads of Geneland: The Collected Papers of W.D. Hamil)


第12章 Born Slave to the Queen of Life

これも講演録
フランスでのもので,Fyssen国際賞受賞記念講演.(1995年)
これはなかなか傑作だ.
まず進化の理解が何の役に立つのだというつかみから始まる.経済的には引き合わない,自分は人生の95%を進化の理解のために使っていて世間的には全くの役立たずだ.というわけで今回の受賞は大変うれしいと挨拶.進化が世界のために役立つのかということは最後に回して,まず自分の進化学徒としての生い立ちから
母の影響,ダーウィンの影響がまず語られる.次いでフランスの聴衆のためにラマルクに.擬態を考えてもラマルク説は受け入れがたいと語った後,ボールドウィン効果について触れる.ラマルキズムに近い効果だが,自分はデネットに説得されて以来この効果の信奉者だと語る.その次はファーブル.進化には冷淡だったが,その発見は素晴らしい.フランスはもっとファーブルに光を当てるべきだ主張する.
そしてエンジニアだった父から受けた数学的,モデル的な思考の影響.


ここから進化の理解が世界にどのように役に立つか.
よく社会ダーウィニズムやナチズムが引き合いに出されるが,本当に世界に害をなすのは,社会学的な何かの信念が誤っていたときであり,その代表例はむしろマルクス主義だと指摘.正しい進化の理解は有用だと解く.例として,医学,そして精神医学,最後にGAが説明される.
このGAについては今はハミルトン自身は進化の理解のために使用しているが,汎用的なエンジニアリングに使えると力説.いずれ今回の賞金を使い果たして引退したあとは「進化コンサルタント」の看板を掛けて産業用のモデル構築のコンサルタント料をとっていくつもりだと茶目っ気たっぷりに語って終わりとなる.

この最後のジョークは秀逸,英国風のアクセントで読みながら吹き出してしまいました.