読書中 「Genes in Conflict」 第9章 その3

Genes in Conflict: The Biology of Selfish Genetic Elements

Genes in Conflict: The Biology of Selfish Genetic Elements



B染色体のドライブの仕組みについての遺伝的な基盤は,マウスやショウジョウバエでこの現象がないこともあって,まだよくわかっていないらしい.とりあえずA染色体上の遺伝子も抑制を図って相互作用しているらしい.


第9章 B染色体  その3


1. ドライブ


(2) B染色体ドライブの遺伝学


Bドライブの遺伝学はほとんど知られていない.B上の遺伝子のBドライブに与える影響についてはライ麦とトウモロコシでしかわかっていない.A上の遺伝子についてもわずかな種でしかわかっていない.
またマウス,ショウジョウバエイースト菌のようなよく調べられた実験用生物種ではBは見つかっていない.

ライ麦では栽培系列によりBの累積速度が異なっていること,トウモロコシではインブリード集団でBが累積しないことがわかっている.これらはA染色体上の遺伝子もBドライブに関わっていることを示唆している.


a. カイガラムシ

A-Bの相互作用はコナカイガラムシで調べられた.この種は父由来のゲノムが消失する.オスは父由来の染色体がヘテロクロマチン(異質染色質)状態で不活性になるため実質的に半数体であり,母由来の染色体のみ精子に入り込む.B染色体は父・母由来を問わずに受け継がれ,ドライブする.父由来のゲノムは無視できるので,同じB染色体が,あるA染色体のセットと別のA染色体のセットでどう振る舞うかを比較することができる.
実際には異なるA染色体セットのもとでBドライブは異なる振る舞いを見せる.2つ以上の遺伝子座でBドライブへの抑制があるらしい.


b. バッタ

2つの集団の交配によりA,Bのドライブへの遺伝分散が測定された.A染色体上の単一遺伝子座に相加的な遺伝分散が認められた.


c. ライ麦

広範囲な交配実験が行われた.オスのBドライブに影響を与える遺伝子群がB染色体上に見つかった.これらの遺伝子群はキアズマ形成に影響するらしい.


d. トウモロコシ

Bドライブに影響を与えるB染色体要因がいくつか見つかっているが,タンパク質コードまではわかっていない.またA染色体上にもドライブに影響を与える遺伝子が発見されている.


(3) よく調べられた種での伝達率


詳しい雌雄別,染色体数別のB染色体の伝達率は15種ほどで知られている.(340ページの表)
主な特徴は以下の通り
ドライブは通常雌雄どちらかの性のみで生じる.
ドライブは1価の時に強く,典型的には0.7-0.9程度である.(1価染色体は対合せずに遊離している染色体のことをいう,ここではBがひとつのみという意味)
ドライブはB染色体の数が増えると弱くなっていく.
通常Bを1個のみ持つ個体がもっとも頻度が高いので,この1価の時の伝達率が最も重要なパラメーターとなる
Bがドラッグを示すときには1価の時にもっとも伝達率が低く,染色体数が増えると伝達率は上昇する.
B染色体が多数になるとメンデル比50%に近づく.