- 作者: ドナル・オシア,糸川洋
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2007/06/21
- メディア: 単行本
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NHKでポアンカレ予想の証明に関するドキュメンタリーが放映されたこともあって読んでみた.数学や物理学の最先端を解説する本にはなかなか難しい問題がある.読者に理解してもらうためには最先端に近づけば近づくほど丁寧に解説しなければ読者はついて行けない.しかしどんなに詳しく説明しても最先端に近づけばそこまで到達できる読者は少なくなる.(また売れ行きも落ちるだろう)どこまでは丁寧に解説して,どこかからはある程度割り切って流すかのポリシーが問われる.そして読者にとっては自分のレベルにあっているかも重要だ.本書にかかるポアンカレ予想は位相幾何学に関することなので,どう裁いているかが読みどころである.
結論から言うと本書は位相幾何学の基礎のところは結構丁寧に解説があって,そこから先はやや流している.もう少しチャレンジしてくれた方(特に微分幾何学との連関やリッチフロー方程式について)が面白そうな気がするが,なかなかかねあいは難しいだろう.いずれにせよ2つの球体をその表面で4次元的に貼り合わせると体積有限で境界のない3次元空間が現れることや,ポアンカレ円板モデルあたりの説明はなかなか興味深く楽しめた.
知的な数学の解説と並んで,本書において力が入っているのは,数学理論の発展とその歴史的背景についてだ.古代ギリシアからはじまり,フランス革命とナポレオン戦争後のドイツ,普仏戦争とプロイセンによる統一ドイツの成立,さらに両世界大戦とアメリカの数学の発展,その歴史的背景におけるガウス,クライン,リーマン,ポアンカレの人間模様は詳しく描かれており迫力がある.そして戦後にはサーストン,ハミルトン,最後に真打ちのペレルマンとその業績が語られている.NHKでも紹介されていたが,いかにも世慣れていないペレルマンの人柄とその証明の出現ぶりが劇的な効果を盛り上げている.歴史物としても十分楽しめる仕上がりだ.
これでミレニアムの7つの問題が1つ解決したということらしい.その真価についてなかなか理解できないにしても,フェルマーの予想の解決に並んで同時代に生きていることが少しうれしい気分になれるトピックだ.そしてその気分を大事にするには良い本だと思う.
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これで残るミレニアム問題のうち最大の難問はリーマン予想ということになるだろう.この本は原題の「Prime Obsession」がとてもおしゃれだし,リーマン予想について非常に詳しく解説がされていて,とても興奮して読書ができた思い出がある.
Prime Obsession: Bernhard Riemann and the Greatest Unsolved Problem in Mathematics
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同原書