洋書を読むための電子書籍リーダー,あるいはiPadについて その2

shorebird2010-05-20
前回ファーストインプレッションを書き込んだ(http://d.hatena.ne.jp/shorebird/20100504)が,その後2週間ほど使ってみてわかってきたこともあるので整理してみた.


まず,前回 Kindle for iPadが大きく機能制限されていると書いたが,一部私の勘違いがあったようだ.
iPadではテキストの一部を選択するときにはダブルタップを行うという操作が標準になっている.(ユーザーインターフェースの仕様書を見たわけではないが,Apple純正のアプリでは皆そうなっている)
Kindle for iPadではこの操作でテキストが選択できないため,ハイライトもアノテーションもできないと思っていたが,実は長押しタップで選択できることがわかった.(このあたりは揃えて欲しいものだ)一旦選択できるとハイライトとアノテーションが可能になる.しかし辞書は開かない.
以上を踏まえて現在の私の評価は以下の通りだ.


<ディストリビューションチャネルとしてのiBookstoreとKindle>

  • 品揃えは(前回報告通り)現状Kindleの方が優れている.しかも特段USアカウントがなくとも問題なく購入できる.(現時点でiBookstoreで洋書を購入するにはiTunesのUSアカウントが必要だ.なおiPad日本正式発売以降iBookstoreにおいてUSアカウントなしでも購入できるようになるかどうか現時点ではわからない)
  • Kindleの場合Web(Amazon.com)から購入し,KindleハードやiPadに転送される形になる.iBookstoreではiTunesから購入することはできずに,iPadからのみ購入できる形になる.(微妙な差だが,Kindle方式の方が買い慣れた場所なので安心感があるし,検索なども使いやすい)


<ソフトウェアとしてのiBooksとKindle for iPad>

  • 機能としてiBooksには検索,ブックマーク,ハイライト,辞書が実装され,Kindle for iPadではブックマーク,ハイライト,アノテーションが可能だ.アノテーションは非常に重要な機能だが,日本語母語読者にとっては辞書機能の方がはるかにクリティカルだ.
  • Kindleデータは(ブックマーク,ハイライト,アノテーションを含め)iPad, Kindleハード,PC, Mac, iPhoneなど複数のデバイスで共有できる.(しかもブックマーク,ハイライト,アノテーションはすべてのデバイスで同期される)iBooksはMacやPCから読むことはできない(複数のiPadで共有できるかどうかについては確認していないが,iTunesのアカウントが同じiPad間では共有できても不思議はなさそうだ)
  • ページめくりなどの細部のこだわりはiBooksの方が上だ


<ハードウェアとしてのiPadとKindle>
私はKindleのハードは持っていないので直接の比較はできないが以下のような相違がある

  • 画面はバックライト液晶とeインクの違いになる.カラーの有無,眼精疲労になりやすいか,反射光のあるところ,暗いところでの見やすさが異なってくる.私の場合2時間程度なら特に疲労を感じることもなく,直射日光の下で読書をすることもないのでiPadにデメリットがあるとは感じない.美しいカラー画面のメリットの方を大きく感じる.
  • 操作性,デザイン,機器としての完成度はiPadの圧勝だ.比較にならない.
  • iPadは重い.電車に乗って立って片手で読むには不向きだ.着席していればそれほど問題ではない.
  • 電池の持ちはKindleの方がよい.もっともiPadでも10時間程度持つので,通常の使用で特に不便はない.
  • 当然ながらiPadはその他多くの目的に使うことができる.
  • Kindleのハードウェア版では,検索,辞書,ハイライト,アノテーションというすべての機能が使える.iBookにはアノテーション機能が実装されていないので,現時点でKindleハードウェア版の大きなアドバンテージだろう.もっとも直接タップではなくカーソル移動なので使い勝手ははるかに悪そうだ.


ということで,iBooksとKindle for iPadの差は第一印象時よりは縮まっている,私にとっては今のところキラー機能としてのタップ辞書からiBooksがややリードというところだろう.それにしてもiBooksにアノテーションがなく,Kindle for iPadに辞書がないのはなんともはやもどかしい限りである.しばらくは悩みが続きそうだ.