Language, Cognition, and Human Nature 第3論文 「ヒトの言語における規則と接続」 その1

Language, Cognition, and Human Nature: Selected Articles

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Rules and Connections in Human Language (with Alan Prince) 1988 Trends in Neurosciences 1(5):195-202.

エッセイ


第3論文は再び言語獲得に関してのものになる.冒頭のエッセイは短く背景説明のみだ.


当時言語獲得については,スキナーの流れをくむ連合学習のみで可能とする考えと,論理的なシンボル操作規則を重視する考えが対立していた.そしてピンカーは言語学者のアラン・プリンスと共著で後者の立場に立って“On Language and Connectionism: Analysis of a Parallel Distributed Processing Model of Language Acquisition.”という大論文を書き上げる.これはピンカーの論文で2番目に引用の多い論文だそうだ.
ただこの論文を本書に掲載すると本書の1/3になるほどの量になるということもあり,その直後に「Trends in Neurosciences」誌の編集者から神経科学者向けに簡略版を書いて欲しいと頼まれて掲載した本論文を収録したということだ.

ピンカーの整理によると上記2つの流れは以下のようになる.

ピンカーは論文を書いた背景をこう回想している.

ヴォイスメールやGoogle翻訳の単語サラダの罠にはまったことがある人ならわかるように,シンボル操作論理の助けを借りない単なる連合学習だけのシステムには限界があるのだ.これらの限界がこの論文のトピックになる

確かにピンカーは「心の仕組み」において,連合学習のみによるニューラルネットワークモデルではヒトの認知が説明できないことをかなり詳しく説明している.この論文はそのうち特に文法獲得における問題を扱っているということになるのだろう.



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心の仕組み 上 (ちくま学芸文庫)

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