第12章 意味をなすこと(Making Sense) その18
ヘイグは「意味は解釈過程の出力だ」という独自の見方を提示し,情報理論との関連を示した.通信(コミュニケーション)についての技術的問題,意味論的問題,影響的問題のうち情報理論は特に技術的な問題にフォーカスを当てているということになる.ここから「選択」と「選好」が問題にされる.
違いの生成とメカニズム
- 選好とはもの(物体やイベント)ではなく,関係性(違いと同じ)の特質だ.誰かがxを選んだということを告げられても,彼が何を拒絶したかも聞かなければ,彼の選好を知ることはできない.私たちが,あるものを別の何かに優先して選ぶとき,私たちは無条件にあるものを選んでいるのではなく,あるものと別のものとの関係性における選好を表明しているのだ.それは,くずの中のましな方を選んでいるのかもしれない.
要するにここでいう「選好:preference」とは相対的な概念だということだろう.
- とのどちらかを選ぶという二者択一選択は, のように表現できる.ここで平均 は「同じ」を は「違い」を表す.
選択が という式になるというのはちょっとわかりにくいが,平均からの差分に注目してそのどちらかを選ぶという解釈なのだろう.
- には,とと同じ情報しかないが,ものの関係を告げられた場合には,何がそこにかかっているのかが明らかになる.私たちは同じもの()の文脈から違い()を選び出すのだ.
- 選択の瞬間,はそこまでの到着点であり,は可能な未来(そして生きるか死ぬか)への分岐なのだ.いったん選択がなされたなら,選ばれた「未来」は直前に選ばれた「過去」になり,選ばれなかった「未来」はそうであったかもしれない「仮定上の過去」になる.「どのようにしてきたのか?(How come?)」はとられた選択肢であり,それはとられなかった理由(理由があるとして)である「どうして別のありようではなかったのか?(Why not?)」の軌跡を保存している.
なかなか難解な言い回しだが,選択するまでは,ともにその潜在可能性があるから状態としてはその平均 になり,選択がなされたら,どちらかに定まり,過去とは だけ異なるということになる.そして(ここで, = であり,このときを選択したとして)選択してきた軌跡には と = が残され,その情報から = を得ることができることになる.