読書中 「Genes in Conflict」 第8章 その4

Genes in Conflict: The Biology of Selfish Genetic Elements

Genes in Conflict: The Biology of Selfish Genetic Elements


動原体が染色体の端にあるか,真ん中にあるかでフィーメイルドライブに影響があるため,これにより生物の染色体に形状に影響があるらしい.しかもこれは進化的には短い時間で反転するということのようだ.これが染色体の形状以外にどのような影響を与えるのかについて説明はないが,興味が持たれる.もし何らかの影響があるなら,この影響による淘汰がこの反転に影響を与えるのではないだろうか.本書の面白いグラフから見ると分布はランダムのようであり,そこからみると影響はないのかもしれない.



第8章 フィーメイルドライブ  その4


1. 利己的な動原体とメスの減数分裂


(7) 動原体数の重要性:哺乳類におけるロバートソン的転位


フィーメイルドライブは動原体数にも影響を与える.ロバートソン的転位とは,動原体が端にある2つの染色体が,特に有害な影響なしに融合して真ん中に動原体のある大きな染色体と,遺伝子なしの動原体のみ(これはその後失われる)になる現象をいう.
ヒトでは端に動原体のある染色体が5つあるが,ロバートソン的転位が1世代あたり4*10-4の割合で生じる.もしメスがこれによりヘテロの場合には,減数分裂で短い2つの染色体は大きな染色体と向かい合う.この場合どちらが卵にはいりやすいかのバイアスがある.このバイアスは種によって異なっており,マウスでは新しい大きな染色体はドラッグし40%程度の伝達率になる.ヒトではこれがドライブになり59%程度の伝達率になる.このバイアスはメスの時のみ現れる.ヒトではこれにより大きな融合染色体が有利になることになる.しかしこのようなヘテロは異数染色体の配偶子を作りやすく,当然不利となり,まれにこの異常により苦しむ人が現れることになる.
逆にマウスでは端に動原体がある染色体が有利であり,実際すべての染色体がそうなっている.((私見)逆に大きな染色体が分かれることがあるということか?)
哺乳類において動原体が中央にある染色体の割合を種ごとにプロットすると,ほとんどすべてが端にあるタイプとほとんどすべてが真ん中にあるタイプの両極端に分布が偏る.これは科のレベルでも場合によっては属のレベルでも成立し,短い進化的な時間でどちらが有利になるのかが逆転するようだ.
ドライブやドラッグが生じるメカニズムは動原体の数が関係するようだ.おそらく紡錘体極に強い方と弱い方があり,強い方には動原体が2つある方が引かれやすいのだろう.そして強い方が卵になるか極体になるかは種によって異なるらしい.XO型の雌のマウスでXがドライブすることや,B染色体が端に染色体が多い哺乳類でより頻度が高いというデータはこの仮説と適合している.


(8) 精子に依存したフィーメイルドライブ?


ここまで説明したものと全く異なるメスのみに生じる減数分裂ドライブが,マウスの2つの遺伝子座にあると示唆されている.どちらも受精に使われた精子が野生型の場合のみにドライブが生じると主張されている.もし精子の遺伝子型がドライブ型だとドライブは生じない.マウスにおいては減数分裂の第二期は受精後なのでこれは可能である.
証拠と主張されているものは間接的であり,検証は今後の課題である.