読書中 「Breaking the Spell」 第2章 

Breaking the Spell: Religion as a Natural Phenomenon

Breaking the Spell: Religion as a Natural Phenomenon



第2章は自然科学の手法により宗教をリサーチすることについて
デネットの立場は当然ながら宗教は科学でリサーチできるというものだ.最初にちょっとグールドの立場を説明し(宗教と科学はそれぞれ事実と人生の価値という別の領域を扱うもので共存できるとする),どちらの陣営からもあまり賛意を得られていないようだと片付けるところにはちょっとくすっとさせられる.
宗教のこれまでのリサーチは博物学的な事実の集積であり,中立性を保つための方法論(統計,二重盲検など)に乗っ取ったリサーチはまだ少ないし,タブーまであって研究者に人気がないので難しい問題はあるがこれは乗り越えられるとする.確かに研究者,特に自然科学的な訓練を受けた研究者にとってはなかなかキャリア的に難しい選択だろう.

続いてリサーチする意義はあるのだ.世界をよりよくする方向に舵を切れるようになることが望ましいとする.これも当たり前だが,わざわざ一節を費やして説明しなければならないというのが宗教リサーチの取り巻く現実なのだろう.

コストはどうなのだろうか.研究することにより宗教の利益(仮にあったとして)が失われるリスクはあるのだろうか.コストがまったくないとはさすがに断言できないようだ.
まず,音楽のリサーチについて,それが仮に健康にとって悪いという結果になっても,人生においての音楽の価値は無くならないだろうという説明を入れてから,一般論として通常何かを研究して知ることによりその価値が失われることはないとする.
知識は善にとっても悪にとっても力になることから,確かに知識が悪用される可能性はある.しかしすでに宗教は注目を集めてしまっている.無視はできないし,どうせ注目を浴びるのなら感情的な注目でなく科学的な注目の方がよいだろうと議論している.科学の悪用の可能性を否定しきれないのはある意味当然かもしれない.最後に大衆を無知のままにしておくことがよいことかどうかという価値観の問題と,いずれにせよ現代はそういうことをほぼ不可能しているという認識が示される.
最後にハリーポッター伝説を作ろうとする仮想劇とそれに反対する懐疑主義者の話が出てきてにやりとさせられる.



第2章 科学についてのいくつかの疑問


1. 科学は宗教を研究できるのか?


2. 科学は宗教を研究すべきか?


3. 音楽はあなたにとって悪いものか?


4. 無視することが親切か?