- 作者: Richard Dawkins
- 出版社/メーカー: Houghton Mifflin Harcourt
- 発売日: 2006/10/18
- メディア: ハードカバー
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第2章のつづき,
アメリカの建国の精神についての解説ががなされる.ドーキンスによれば建国の祖は理神論者であり,中には無神論者もいただろうということだ.しかし彼等の信仰とは別に彼等は政治と宗教を分けようとしていた.つまりアメリカはあくまで世俗国家として建国されたのであり,宗教国家として建国されたのではないのだ.しかし現在は,アメリカはキリスト教圏ではもっとも宗教的な国家になっている.
逆に英国は強固な国教会制度を持ちながらキリスト教圏でもっとも世俗的な国家だ.これの説明としてドーキンスは,英国はカトリックとプロテスタントの争いに疲れ,アメリカは移民の国であり,心の平安を(親族ではなく)より教会に依存したのかもしれないと前置きした上で,もっと興味深い仮説として,アメリカの宗教性はその世俗主義から生まれたという説を提示する.政治が世俗的だからこそ宗教活動が自由であり,宗教は自由に競争し,マーケティングテクニックを磨いたというわけだ.個人的にはこの最後の仮説の説得力が高いと思う.実際にアメリカでテレビ伝道師なる存在を見ると結構強烈なマーケティングを感じてしまう.
そして序章でもふれられたアメリカで無神論者が事実上差別されている現状を憂う.アメリカの信心深い田舎での逸話(糖尿病やガン患者から薬を捨てさせて祈りを捧げさせようという運動に反対しようとした人が,脅されたため,保護を警察に頼いだところ,警官からさもうさんくさそうに断られる話)も紹介される.最後にアメリカでは現在無神論者と知られると国会議員として当選できないという現実を建国の祖が知ったらいかに落胆するだろうかとコメントしている.
第2章 神の仮説