
Moral Minds: How Nature Designed Our Universal Sense of Right and Wrong
- 作者: Marc Hauser
- 出版社/メーカー: Ecco
- 発売日: 2006/09/01
- メディア: ハードカバー
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第4章は道徳器官と題されている.これまで見てきた道徳能力がどのように獲得され,脳内でどのように働いているかが主題だ.
引き続きハウザーの思惑は言語能力とのアナロジーによりより道徳能力の真実に近づけるだろうと言うところにある.抽象的なルールと学習能力が生得的で,具体的な規範は学習されるのではないかというのがハウザーの仮説だ.そしてまず道徳能力はどこまで生得的なのか,学習はどのような役割を持っているのかを詳しく見ていくことになる.ということで本章は発達心理学が通奏的に語られることになりそうだ.
第1節は善悪の感覚のもとについて.ハウザーは善悪の感覚も最初は期待とそれに対する逸脱から来ているのではないかと述べている.そして期待とは将来の事柄にかかる信念であり,確率と関連していると進む.
つぎに道徳に関する期待についての説明が入る.これは単に将来の成り行きではなく規範的な期待になる.そして規範的な期待は義務,約束,コミットメントに関連している.ここのところ2種の期待の違い,話題の飛躍についてはあまり説明がない.もっとも今後説明されるのかもしれないが.
ハウザーはそして期待が満たされないことに対して否定的な感情が生起し,これが道徳感覚の根幹だと推定している.
そしてまず物理的な世界についての期待がどのように幼児に発達するかを見ていく.ピアジェの実験から,赤ちゃんはかなり早い時期から直感的な物理学も持っていることが示されている.
第2節ではその直感物理学について詳しく説明がある.これはプレマックの仕事が紹介されているものだ.
- 自分で動くものは動物か,その一部だ.
- もしあるものが,別のものか場所に向けて動いているならそれはその目的だ.
- もし物体が環境の変化にあわせて運動のコースを変えるならそれは合理的だ.
- ある物体の反応が,別の物体の動きの後すぐに生じたのなら,それは社会的な反応だ.
- もしある物体が,自律的に動き,目的があり,行動がフレキシブルなら,それは別の心を持つ物体に害を与えたり,助けたりできる.
第4章 道徳器官
(1)巨大な期待
(2)行動のABC
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