読書中 「The Evolution of Animal Communication」第1章 その4

The Evolution Of Animal Communication: Reliability And Deception In Signaling Systems (MONOGRAPHS IN BEHAVIOR AND ECOLOGY)

The Evolution Of Animal Communication: Reliability And Deception In Signaling Systems (MONOGRAPHS IN BEHAVIOR AND ECOLOGY)




第4節は正直な信号に対するハンディキャップモデル以外の説明について.

まず2番目のケースとして,第2節の最後に説明されたジョンストンのモデルの含意として,コストではなく信号の反応にかかる利益と信号強度が,オスの質に関連して同様な構造を持っているならやはり正直な信号がESSになることが説明される.下図は私が本書の図を真似て作ってみたジョンストンのモデル図だ.それぞれの利益の傾きがコストの傾き(ここでは一定と仮定されている)と等しいところが適応度最大の信号強度になる.





ついでにオリジナルのグラフェン型のコスト構造をあらわしたジョンストンモデルの図も入れておこう.質の異なるオスはそれぞれ違う傾きのコスト構造を持ち,信号から得られる利益は共通している.傾きが同じところが最適な信号強度になるのは同じだ.





3番目のケースは利益のコンフリクトがない状況.
双方に利益があれば当然に信号は正直になる.


4番目には個体に向けられる懐疑と称して,受信者が,発信者を個体識別し,誰が嘘をついたかおぼえていて,その後信用しなかったり,積極的に罰を与える状況があれば,嘘の信号は不利益になるので正直な信号は進化する.


5番目はその信号がつくられるメカニズムから正直にならざるを得ないもの.
メイナード=スミスとハーパーはこれを「インデックス」と呼んでいる.
大きな個体しか低い周波数で鳴けないカエルなどの例が挙げられている.
これには注意すべき点がある.まず信号の質とそれを発信する器官に本質的な関連があること,そしてその器官の構造と発信者の特質が結びついていることが仮定されていることだ.


ここでサーシィとノウィッキはこの議論は発達コストとして解釈できることがあると指摘している.カエルでも身体の大きさより相対的な器官の大きさを発達させることができ,そしてそれにコストがかかるなら,それは発達コストと考えることができる.これはまさに私がメイナード=スミスとハーパー2003を読んで感じたことだ!なんか胸のつかえがとれたようですっきりした.しかし何故メイナード=スミスはこの区別にこだわったのだろう.解説が欲しいところだ.



第1章 イントロダクション


(4)正直な信号に関するその他の説明